【 仕入れ担当 中村より 】
時代は変われど、この作品の人気は衰えることを知りません。
お探しの方もいらっしゃることでしょう…
滅多と出会えない名品、平蔵氏の威毛錦。
数ある氏の作品の中でも昭和の初期に初めて発表され、
昭和13年ベルリン手工芸展にて金賞を受賞し、
現在に至るまで平蔵の代表作として知られております。
中でも逸品お振袖に合わせていただきたいお品を
現品限りの訳あり価格にて仕入れて参りました!
豊かな創作性、ぜひお手元でご堪能くださいませ。
【 色柄 】
鮮やかな橙色の錦地。
程よい重厚感とその締めやすさは、もはやご説明は不要でしょう。
お柄には龍村独特のお色使いで、
大胆な「威毛錦(おどしげにしき)」の意匠があらわされました。
戦国武将が陣中で使用した威毛。
鎧の主体部は小札と呼ばれる革製の小さな板で構成され、表面には漆が塗られております。
この小札を連結させ板状にし、幾段にも繋ぎ合わせる事を「威す(おどす)」と呼びます。
緒通すがその語源とされ、沢山並ぶ様子が鳥の羽根に似ているところから「威毛(おどしげ)」と呼ばれるようです。
絶妙の箔使いといろどりのコントラスト。
界切線ひとつをとっても組紐のような凝った技法。
そして、裏太鼓とよばれる、お太鼓の裏にあたる箇所、
二重太鼓をお締めいただいた際にかくれる部分にもお柄が
つけられた贅沢な仕上がりとなっております。
細部までの美へのこだわりはさすが龍村という仕上がりです。
悠久の美をもって末代までお譲りいただける美術工芸品的なひと品です。
【 商品の状態 】
中古品として仕入れて参りましたが概ね美品でございます。
うっすらと締め跡がございますのでお届け前にプレス加工をサービスいたします。
【 龍村平蔵について 】
平蔵氏は「織物は数学である」の名言とともに、新技法の探求に「気狂い龍」と呼ばれるほど没頭し、30代で高浪織、纐纈織など多くの織を生み出した傑物です。
経糸と緯糸に着目することでどんな複雑な織も立体の造形として捕らえられる、
これが龍村平蔵氏の信念であり、かの有名な芥川龍之介氏も、龍村平蔵氏の
帯について、
「私の感服したのは、単にそれらの芸術品を模し得た面白さばかりではない。
(中略)龍村さんの帯地の中には、それらの芸術品の特色を巧に捉え得たが為に、
織物本来の特色がより豊富な調和を得た、殆ど甚深微妙とも形容したい、
恐るべき芸術的完成があった。私は何よりもこの芸術的完成の為に、
頭を下げざるを得なかったのである。遠慮なく云えば、鉅万(きょまん)の
市価を得た足利時代の能衣裳の前よりも、この前には更に潔く、
頭を下げざるを得なかったのである」(一部現代仮名使いに変更)
と述懐し、大賞賛しております。
現代に至る龍村美術織物、龍村織物、龍村光峯の現在の3つの「たつむら」はすべて、
染色工芸に対する功績により、美術院恩賜賞を受けた初代龍村平蔵の創業に始まります。