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沖縄本島の北部・大宜味村で、実芭蕉(バナナ)の仲間である糸芭蕉の繊維を糸にして作られる織物です。薄く作られた生地は張りがあり、涼やかな地風が特徴です。糸芭蕉は繊維が苧麻よりも固いため、一層サラリとした肌触りです。縞、格子、無地、沖縄独特の絣模様や花織が織り出されたものなどがあり、染色はすべて琉球藍などの草木染です。
芭蕉布を作るためには、糸芭蕉を育てるための畑仕事から、大変手間のかかる糸績みもあり、非常に手間がかかります。芭蕉布の反物ができるまでは、約20の工程があります。
糸芭蕉は手入れをして3年かけて生長させたものを使います。秋から冬の期間に切り倒し、幹の層を剥いで4種類に分けた原皮を灰汁で煮ます。原皮を竹鋏でしごいて、不純物を取り除いたら、柔らかいものは緯糸用に、硬いものは経糸用に仕分けします。
最も手間のかかるのが、糸を作る「糸績み」です。繊維を爪先で根元から裂き、「機結び」でつないで糸にします。毛羽立ちを防ぎ、糸を丈夫にするため糸に撚りを掛けます。絣糸は手括りで作ります。染め残したい部分に原皮の裏皮を撒いて、その上をビニールで縛って防染したら、植物染料で染めます。絶えず湿気を与えながら高機で織り上げます。
歴史
芭蕉布は、沖縄の染織品の中で古くから織られていたといわれます。高温多湿な沖縄の風土に適した涼やかな生地が好まれて、琉球王国時代は年間を通して一般庶民が着用し、王族・士族の官服としても欠かせない衣類でした。糸芭蕉は沖縄の気候に適するため、沖縄各地で栽培され、織物の糸として利用されてきました。12~13世紀頃から芭蕉布は作られ、16世紀には現在の糸作りとほぼ同様の技術があったといわれています。1648年に琉球王府は芭蕉布の生産振興のため「芭蕉当職」という役職を設けて、王府専用の芭蕉園を管理していました。16~17世紀には中国・朝鮮への献上品として芭蕉布が利用され、貢納布として薩摩藩へ納められた芭蕉布は江戸や大阪・京都などで販売されました。
琉球王国が廃止され沖縄県となってからも、芭蕉布は沖縄各地で自家用や商品用に生産が行われていました。かつては今帰仁が大きな産地で、喜如嘉は後発産地だったといいます。ところが太平洋戦争により多くの地域で衰退してしまいます。喜如嘉では、平良敏子氏の尽力により奇跡的に復興し、1974年に「喜如嘉の芭蕉布」の伝統技術が国の重要無形文化財に指定され、「喜如嘉の芭蕉布保存協会」がその保持団体に認定されました。1988年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定。2002年に平良敏子氏が「芭蕉布」技術保持者として重要無形文化財(人間国宝)に認定されました。
喜如嘉の芭蕉布は、もともとは琉球時代の民族衣装で沖縄の伝統衣装である「琉装」で着られていました。和装品としては、着物と帯があり、八寸名古屋帯、九寸名古屋帯があります。稀少な高級織物ですから、盛夏のとっておきのお洒落をしたいときにおすすめです。パーティ、食事会、観劇、個性的に装いたいシーン、各種のお出掛けのときなどにご着用ください。沖縄らしい絣模様や、美しさの中に薫る野趣を生かして自由な装いを楽しみましょう。
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