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新年を寿ぐ装い 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」 vol.13

新年を寿ぐ装い 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」 vol.13

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新しい年のはじめには、歌舞伎座の『壽 初春大歌舞伎』へ参りましょう。新春を前に、ハレの衣裳をととのえる。小物を買い替えたり、新しい半衿を付けたり。そんな時間を持てれば、慌ただしい年の瀬も心豊かに過ごせそうです。きたる年がよい一年になりますように。

羽織のお洒落のポイントは

はやいもので、歌舞伎座の公演も一年の締めくくり、『十二月大歌舞伎』を迎えます。ようやく少しずつ日常が戻りつつありますが、まだまだ気軽にお出かけというわけにもいきません。せめて12月は楽しい舞台を見て、大変だった一年を乗り切ったご褒美にいたしましょう。

歌舞伎座で〝観劇はじめ〟

今年も残すところわずかとなりました。

新しい年のはじめには、歌舞伎座の『壽 初春大歌舞伎』(2022年1月2~27日、11・19日は休演)へ参りましょう。
歌舞伎座は1月から、間隔を開けた2席並びを原則とする座席配置となるので、お友達同士での観劇の楽しみも増すことでしょう。

今回は第一部のご紹介です。
『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』は平家全盛の世が舞台。

平治の乱で敗れた源義朝の愛妾であった常盤御前(中村扇雀)は現在、一條大蔵長成(中村勘九郎)と結婚しています。

長成は能狂言にうつつを抜かし、〝阿呆(あほう)〟と噂されていました。
常盤も、楊弓に興じる有り様。

しかし、長成は〝阿呆〟のふりをしていたのです。
平家とつながる家臣から家を守るためでした。常盤も平家憎し、の心を秘めています。やがて、源氏再興を願う忠臣・吉岡鬼次郎(中村獅童)、お京(中村七之助)夫婦は、彼らの真意を知ることに。

そして、それを伝えるため、東国にいる常盤の子、牛若丸(のちの義経)のもとへと旅立ちます。長成は、〝阿呆〟と見せかけているだけ、という難しい役だそうですが、その〝阿呆〟ぶりが笑いを誘います。

このほか第一部には『祝春元禄花見踊(いわうはるげんろくはなみおどり)』が上演されます。

獅童の長男で、初お目見得となる小川陽喜の出演も話題です。

「松」で新年を寿ぐ

1月の歌舞伎座は、一年で最も華やぎます。いつもより少しドレッシーな装いで、劇場の雰囲気を楽しみましょう。

そんな時には、付け下げがぴったり。四君子(梅・菊・竹・蘭)の柄などを選べば、帯でいかようにもお召しになれ、便利なことこの上なし、重宝な一枚になります。

染匠市川 ・下げ着尺 「ヱ霞に松」

そして、お正月らしく、おめでたい柄を選びたいものです。

おめでたいといえば「松」。
松は「常磐木(ときわぎ)」とも呼ばれ、一年を通して色が変わらない、日本人にはなじみの深い植物。常に青々としている→清浄である→おめでたい、と変化して、吉祥文様になっていったのだとか。

松は、古くから絵画や工芸意匠のモチーフでした。

有職文様では、菱や立涌などとの組み合わせが見られます。

梅や竹、藤など他の植物や、鶴、亀などの動物とともに描かれることも多く、お正月に限らず、おめでたい席にふさわしい柄です。

老松、若松、笠松、唐松、根引き松、枝松、松葉、三階松、光琳松…、写実的だったり、幾何学模様のようだったりと種類もさまざま。

主役でよし、取り合わせてよし、です。

お正月の柄あれこれ

鶴亀、宝尽くし、熨斗など縁起のいい文様、南天や鱗、麻の葉など厄除けになる文様、梅や水仙など季節の花々も、お正月に取り入れたいものです。

羽子板や独楽、凧などの玩具、宝船、初夢(一富士二鷹…)、干支、餅花などの正月飾り、と正月ならではの具象柄も挙げればきりがありません。

干支の柄を、それと分からないよう、さりげなく意匠に組み込んだものもあります。

また、歌会始のお題の図柄を誂えるという贅沢な時代もあったようです。

ちなみに、来年のお題は「窓」。
窓といえば、東京国立博物館の特別展「きもの」(2020年開催)に出品された、豪華な宮殿模様の振袖が思い出されます。窓の装飾的な鉄枠が大きな格子模様のようで印象的でした。

西洋風の窓を描いた帯や、ステンドグラス柄のきものなどを見かけることもあります。

季節感がない「窓」も、ひと味違う来年だけの正月の柄といえそうです。

新しいもので気分も一新

お正月は、新しいものを身につけるとよいといわれます。

きものや帯のような大きなものでなくても構いません。
肌襦袢や足袋、半衿、着つけ用の紐など、何かひとつでも、新年を〝替え時〟と考え、新調してみませんか。きっと、すがすがしい気分になれることでしょう。

刺繍半衿

新春を前に、ハレの衣裳をととのえる。小物を買い替えたり、新しい半衿を付けたり。
そんな時間を持てれば、慌ただしい年の瀬も心豊かに過ごせそうです。

きたる年がよい一年になりますように。
よいお年をお迎えください。

監修:大久保信子
文:時田綾子

サムシングニュー

下着の他にもうひとつ、わたしには「サムシング・ニュー」があります。それは自分へのお年玉。誰もわたしにお年玉はくれませんから、自分で自分にお年玉を、ということにして、毎年なにか小物をひとつ新調するようにしているのです。

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