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カジュアルな装いで浅草へ 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.22

カジュアルな装いで浅草へ 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.22

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平成中村座は、歌舞伎座のような劇場とは異なり、座席も平場や長椅子とのこと。芝居小屋のような雰囲気には、いつもよりカジュアルな装いが似合います。でもどうしたら〝カジュアル感〟を出せるかしら?と思う方もいらっしゃることでしょう。

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2022.08.22

よみもの

歌舞伎と俳諧の深い関係 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.21

浅草で楽しむ平成中村座

夜は虫の声が聞こえるようになり、暑い日はあっても、季節が確かに進んでいるのを感じます。

この秋は、平成中村座が4年ぶりに浅草へ帰ってきます。『平成中村座十月大歌舞伎』(10月5日~27日、11・20日は休演)です。

浅草寺境内の仮設劇場で、10月、11月(演目は一部異なります)の2カ月間、公演が行われます。

平成中村座は、十八世中村勘三郎が2000年に旗揚げした仮設の劇場。江戸時代の芝居小屋にタイムスリップしたような気分が味わえます。

今年は、中村座が天保13(1842)年に浅草聖天町(猿若町)に開場して180年の節目の年。市村座・河原崎座(のち森田座)とともに猿若三座といわれ、明治のはじめまでともに繁栄したそうです。

落語『唐茄子屋政談』と『不思議の国のアリス』

第二部では宮藤官九郎による新作『唐茄子屋(とうなすや)~不思議国之若旦那~』が上演されます。

唐茄子とはカボチャのこと。落語の『唐茄子屋政談』を元にした人情喜劇だそうです。

落語では、道楽が過ぎて勘当された若旦那が、身投げしようとしたところを止められ、天秤棒を担いでカボチャを売り歩きます。

ある長屋で貧しい母子にカボチャを売ったのですが…

染め名古屋帯「菜果ーれんこん・なんきん」

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素描き染め名古屋帯「お野菜」

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十日町友禅染め名古屋帯「かぼちゃ 飴色」

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さらに、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』のエッセンスも織り込まれているとか。

『不思議の国のアリス』は、白うさぎを追って穴に落ちたアリスが、大きくなったり小さくなったりしながら、不思議な動物やハートの女王などと出会います。

言葉遊びに満ちた物語なので、きっとウイットに富んだセリフが飛び出すことでしょう。どんなお話になるのか、とても楽しみです。

出演は中村勘九郎・七之助兄弟に、中村獅童、中村扇雀ほか。

成瀬優作 染め名古屋帯「吹き寄せアリス」

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佐藤百恵作 型絵染名古屋帯「不思議の国のアリス」

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素描き染め名古屋帯「不思議の国」

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モチーフの宝庫

新作を待つワクワク感を、装いに取り入れてみませんか。落語にも「アリス」にも、モチーフになりそうなものがあふれています。

まずは落語から唐茄子。カボチャの柄は近年とても増えてきたように思います。

ハロウィンの影響でしょうか。ちょうど10月の終わりはハロウィンの季節。カボチャ柄の帯や半衿、帯揚げ、帯留めなど、遊び心あふれるポップな小物もたくさんあります。

染め名古屋帯「ハロウィン(ジャック・オー・ランタン)」

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染め京袋帯「おばけかぼちゃ」

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西陣織九寸名古屋帯「かぼちゃと黒猫」

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アリスからは、うさぎやトランプ、なかでもハートの女王にちなんだハート柄、ティーパーティ、庭園に咲くバラなどはどうでしょう。

どれも洋風な香りがしますが、うさぎの文様ならお持ちの方も多いのではないかしら。古くから縁起のいい柄として人気で、月や波、秋草などとの組み合わせがあります。

うさぎ柄そのものは季節を選びませんが、秋ならではの取り合わせを楽しむのもいいでしょう。

また、「花兎金襴(はなうさぎきんらん)」のようなかわいらしい名物裂(めいぶつぎれ)もあり、うさぎの文様が愛されてきたことがうかがわれます。

『不思議の国のアリス』の続編『鏡の国のアリス』にまで世界を広げれば、チェス盤を模した白と黒の市松模様や黒猫の柄、赤と白の女王や卵のハンプティダンプティにちなんだ色や形なども。

人気の物語だけあって、コーディネートでアリスの世界を楽しむ若い方も多いようです。トランプ柄を織り出したきものやチョッキを着たうさぎの半幅帯など、アリスそのものという品々も見かけました。

これらの多くは伝統的な和の文様とは異なる輝きを持っています。ほんの少しでもカジュアルでポップな気分を取り入れて、軽やかに浅草へ参りましょう。

カジュアル感のポイントは履物にあり

さらに、平成中村座は、歌舞伎座のような劇場とは異なり、座席も平場や長椅子とのこと。芝居小屋のような雰囲気には、いつもよりカジュアルな装いが似合います。

でもどうしたら〝カジュアル感〟を出せるかしら?と思う方もいらっしゃることでしょう。

白の半衿にお太鼓を結んで…というオーソドックスなスタイルが定番になっていると、なかなか冒険をしづらいものです。

【京紫野大原商店】彫型桐下駄「相三味右近形」

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そんなときは、足元を草履から下駄に替えてみましょう。履物を替えるだけで気分が変わります。

二枚歯の下駄は滑りやすく歩きづらいこともあるので、右近下駄や草履のような形の舟形下駄が安心です。紬はもちろん、やわらかものでも小紋なら下駄に似合います。

足元が下駄なら、バッグもカジュアルに。自然素材で編んだ籠などがぴったりです。

また半衿もスタンダードな白でなく、色や柄ものにチャレンジするのもいいかもしれません。お気に入りの端布などで手作りすることもできます。

芝居の前後に浅草散歩を

劇場のある浅草は古くからの繁華街。観劇の前後に町歩きはいかがかしら。浅草は和のものを商うお店が集中しています。きものや帯だけでなく、履物、バッグ、着つけ道具、小物、下着類となんでもあります。

さらに扇や櫛(くし)などの工芸品、手ぬぐいや組紐、カツラや髪飾りなどのヘア関係など上から下まで一式揃う充実ぶり。小さなエリアに多種多様の専門店が並ぶ町は浅草だけ。しかも懐にやさしく、江戸好み、通好みの品揃えです。

浅草には歴史だけでなく積み重ねてきたさまざまなものがあり、人々は誇り高く、どのお店もしっかりした商売をしています。

浅草ならではの雰囲気を楽しみ、お好みの品を探すひとときを過ごせば、素敵な一日になることでしょう。

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