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そろそろ桜も 〜現代フォーマル着物考その2〜「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」第十夜

そろそろ桜も 〜現代フォーマル着物考その2〜「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」第十夜

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無地感覚の「付下げ」や「訪問着」に祈りを込めた帯を合わせた装いなら、ゴージャス過ぎず、大多数の人から“きちんとしている”と認識されやすい適度なフォーマル感もある。スーツやワンピースで出席するクラスの現代のフォーマルシーンには、ほぼ対応すると思います。

ちょっと、きちんと

洋服が主流の現代において、ワンピースやスーツのような感覚で、“ちょっと気を張る席にきちんとしたイメージ”で違和感なく着こなせる着物。今求められているのは、そんな着物ではないでしょうか。

適度なフォーマル感

前回に引き続き、現代において使い勝手の良いフォーマルについて考えてみたいと思います。特にこの季節、卒業式や入学式などに、お着物を着たいと考えていらっしゃる方も多いでしょうから。

前回の第九夜で、「無地感覚で着回しが効き、アップダウンできる着物」がおすすめ、とご紹介しました。いくつか挙げた中でどれを選ぶかは、その方のライフスタイルによる、とも。

例えば、着用の機会が、卒業式・入学式・七五三などお子さま関係のお祝いごとや結婚式への参列など、“そこまで格調や重厚さは求められないけれど、そこそこきちんとして出席したい”レベルのフォーマルな席がメイン、という方は、前回いくつか挙げた中でも「付下げ」あたりがいちばん便利なのではないかなと思います。

周りから浮くほどゴージャス過ぎず、大多数の人から“きちんとしている”と認識されやすい適度なフォーマル感を備えている「付下げ」は、スーツやワンピースで出席するクラスの現代のフォーマルシーンならほぼ対応できますし、柄によってはカジュアルダウンすることもできる便利なアイテムです。

あまり機会がないであろう、特別なしきたりやふさわしい格調を求められる場合(例えば宮中での式典など)は個別に考えれば良い話ですし、シンプルなスーツを一着持っていると便利、という感覚に近いでしょうか。

今持つべき付下げ

自分の着物が一着ほしいけど、何を選べば良いかわからないという人にこそおすすめしたいのが「付け下げ」です。付け下げは幅広いシーンで着用でき、帯や小物とのコーディネートも楽しむことができるオールマイティな着物。今回は、着物を一枚持つなら付け下げを選ぶべき5つの理由をご紹介します。

「訪問着」と「付下げ」の違い

そこで、よく聞かれるのが「付下げ」と「訪問着」はどう違うの?という質問。

一般的な説明としては、

縫い目で柄がつながる  → 「訪問着」
縫い目で柄がつながらず簡略化された柄 → 「付下げ」

…と言われますね。

例えば、こちらなどはとてもわかりやすいタイプ。
着物のマニュアル本などでも、説明によく使われるイメージです。

訪問着

京友禅訪問着 「琳派草花流水文」
京友禅訪問着 「琳派草花流水文」

もともと、洋装のドレスコードである「ビジティングドレス」を和訳したと言われる「訪問着」は、公式な社交着という立ち位置。

三つ紋をつけて着られることが多かったということでもわかるように、かなり格式の高い位置付けでした(アンティークの訪問着には、三つ紋入りのものがよく見られます。現代では、三つ紋まで入れてしまうと仰々しくなりすぎるので、入れても一つ紋くらいが一般的。紋を入れずに着られることも多いです)。

白生地を、着物の形の仮仕立て(仮絵羽)にしてから柄付けをする訪問着は、開くと一枚の絵のように縫い目で柄がつながります。

様々な訪問着

幅広い場面で着用することができる訪問着ですが、マナーやルールを守って美しく着こなすことが大切です。今回は訪問着を着るときにみなさまが悩まれる疑問点を解決いたします。そもそも訪問着ってどんな着物?色留袖や付け下げとの違いは?帯の合わせ方やコーディネートは?など、はじめて訪問着を着る方から上級者にも役立つ情報をお届けします。

付下げ

京友禅付下げ着尺 「麗華文」
京友禅付下げ着尺 「麗華文」

そしてその簡略版として、贅沢品が禁じられた戦時下において考案されたと言われるのが「付下げ」。

縫い目にかからないように柄を小さく簡素化し、金銀を使用せず華美さを抑えるなど、当初は検閲などの目を逃れるためにかなり控えめなものが作られていたようですが、それが、もともと華やかな社交服などを着る機会があまりない庶民にとっては、普段着ではない、ちょっと良い着物、ちょっと華やかな着物、というところでちょうど良かったのでしょう。人気が出て「付下げ」というアイテムとして定着しました。

そうすると、今度はだんだん柄付けに工夫がされてきて、仮絵羽にしなくても柄が繋がって訪問着と大差ない華やかさのものも作られるようになり…(本末転倒と言うか一周回ってと言うか… 笑)。そんな、なかなか面白い変遷を辿って現在に至ります。

「訪問着」と「付下げ」の見分け方

「訪問着」「付下げ」を見分けるポイントとしては、下記の4点。

①縫い目で柄がつながっているかどうか
 
②柄の分量や豪華さ

③共八掛かどうか(表地と共生地、もしくは共生地でなくても表地と同色や関連する柄が描かれているなど)
 
④販売時、仮絵羽か反物か

こちらを踏まえつつ、「訪問着」と「付下げ」を見比べてみると…

どちらも、濃地に繊細な友禅で御所解文様などのクラシカルな意匠が描かれたものですが、ぱっと見た感じだけでは、どちらが「訪問着」でどちらが「付下げ」か、ほとんど区別がつきません。

多少の量の差はあれど、どちらも縫い目で柄がつながっている(見分けポイント①)し、柄の分量(見分けポイント②)も大差はない。共八掛も付いている(見分けポイント③)。

違いは④(見分けポイント:販売時、仮絵羽か反物か)のみなので、もしこれが実際に仕立て上がってお召しになっている姿を見たとしたら、私もたぶんわかりません(笑)。どちらも、普通に良い染めの訪問着だなぁと思うでしょうね。

このクラスになると、「訪問着」か「付下げ」か、という区別はあまり関係なくなります。

そして、こちら。
飛び柄の刺繍があしらわれた「訪問着」と「付下げ」です。

これは縫い目は関係ないタイプの柄付けですから、そこは判断基準にはなりません(見分けポイント①)。柄も同じくらい(見分けポイント②)。

簡略化されたものが付下げ…というのなら、訪問着より付下げの方が安いの?というと、そういうわけでもない。こんなふうに、訪問着でもお手頃なお値段という場合もあります(加工の手間やクオリティにもよりますので、単純比較はできませんが)。

この場合の判断基準は③④ですが、この付下げの方を仕立てる際に、一般的によく使われるぼかしではなく共色で八掛を染めて付けたら、もう見た目での判別はほぼ不可能。

「訪問着」として売られているものの中でも、こういった「無地感覚のあっさりした柄行きの訪問着」は染め帯を合わせてカジュアルダウンして楽しんだりもできるので、「付下げ」と区別することがあまり意味がないとも言えます。

…ということで、あらためて。

①縫い目で柄がつながっているかどうか
 → 訪問着でも、デザインによっては柄がつながっていないものもある。
 → 付下げでも、柄がつながるように染めてあるものもある。

②柄の分量、豪華さ
 → 訪問着でも、裾模様や飛び柄など柄が少ないものもある。
 → 付下げでも、びっしりと柄が染められてゴージャスなものもある(これを「付下げ訪問着」という、とする説もありますがますますややこしいですよね…)。

③共八掛かどうか
 → 訪問着でも、共八掛が付いていないものもある。
 → 付下げでも、共八掛が付いたものもある。
 
④販売時、仮絵羽か反物か
 → 訪問着は「仮絵羽」、付下げは「反物」で販売されていることが多い。
 → 付下げでも、着用イメージをわかりやすくするため「仮絵羽」にしてあるものもある。

①〜③は結局、どちらもありうるので判断基準にならないし、④にしたって、仕立て上がってしまったらはっきり言ってわからない。

また、単純に「訪問着>付下げ」というわけでもなく、柄行きや紋の有無によっても格が変わります。

例えば上で挙げた刺繍の「付下げ」に共八掛を付け、背に一つ紋を入れたとしたら、ただ柄が繋がっているというだけの紋のない訪問着より、きちんとした格のある着こなしができます。

要するに、その境界線はかなり曖昧、ということ。

もともとの“格調高く豪華”が基本である「訪問着」に対して、より控えめなものとして生まれたはずの「付下げ」が、そのカテゴリーの中で多種多様な進歩を遂げてしまったがために、見た目の豪華さにおいて「訪問着」との区別が曖昧になってきた。

また「訪問着」は「訪問着」で、洋服ベースの現代的な好みの多様化の中でシンプルやシック、モダンなものも多く作られるようになって、ますます「付下げ」との境界線が曖昧になり…

結果として、その混沌と混じり合ったあたりのものが意外と現代のフォーマルシーンにとってちょうど良かったりするという、ある意味結果オーライな(でもちょっと説明しづらい)状況になっている、というのが現状だったりします。

ベースはシンプル、帯に祈りを

「付下げ」というアイテムが、ちょっと紛らわしい存在になっている現状があるため、あえてややこしい説明を長々といたしましたが、現代のフォーマルシーンは絶対「付下げ」でなくてはならない、ということではありません。

「訪問着」の中にも、あえて柄を抑えたデザインのものや胸に柄のない裾模様なども多くありますし、要するに「付下げ」であれ「訪問着」であれ、“無地感覚で着回しが効き、アップダウンできる”ものはおすすめ、ということ。

季節を選ばず帯で着回しが効く、そんなお役立ちな「訪問着」や「付下げ」を少しご紹介してみたいと思います。

ぼかし訪問着

暈し染め訪問着「色ぼかし」
暈し染め訪問着「色ぼかし」

色無地感覚で使えるぼかしの訪問着。
季節の染め帯や刺繍半衿などで、カジュアルダウンした着こなしも楽しめそうです。

竹丸刺繍訪問着

刺繍訪問着 「丸竹」
刺繍訪問着 「丸竹」

透明感のある綺麗な地色は、それだけで場を華やかに。
松竹梅の一つ、竹は吉祥文様でもありフォーマルにふさわしい一枚。

霞付下げ クラシック系

京友禅付下げ「雲海/練色」
京友禅付下げ「雲海/練色」

柔らかな多色のぼかしが、クラシックな印象。
裾にたくさんの色が入っているので、さまざまな帯や小物合わせで表情を変えて着こなせそうです。

霞付下げ モダン系

【雅染匠】京友禅付下げ「箔霞文」
【雅染匠】京友禅付下げ「箔霞文」

同じ霞でもシャープでモダンな印象。
すっきりと洗練されたワントーンの帯合わせも、インパクトのある帯で大胆な着こなしも素敵。

小さめの古典柄

【染匠市川】京友禅付下げ「御所解」
【染匠市川】京友禅付下げ「御所解」

控えめさときちんと感、適度な華やかさがありつつ優しく可愛らしい印象もある、王道の御所解文様。
地色によって印象がずいぶん違うので、ご自分の肌色に合う地色を探してみては。

染匠市川 市川昌史さん

すらりとした高身長に、ぱりっとした白シャツが目を引く市川昌史さん。京都で三代続く染め元の、今に息づくものづくりを受け継ぎます。当初、個人へのインタビューは…と固辞されておられたところをお願いし、京都御苑の紅白梅を背景にお話を伺いました。

色留袖を訪問着に

【松尾光琳】色留袖「琳派花鳥短冊図」
【松尾光琳】色留袖「琳派花鳥短冊図」

ちょっと上級者編になりますが、こんな使い方も。
胸元に柄がない方がすっきりしていて好み、という方は、色留袖から選ぶという選択肢も。
比翼仕立てではなく訪問着仕立てにして、一つ紋もしくは紋なしにしておきます。

そして、帯。

とりあえずフォーマルに使える帯は1本あれば良いかな…という方には、合わせやすい白か黒の地色で、綺麗な色が配されたものや、お祝いの気持ちを込められる吉祥紋が織り出されたものを選んでおくと汎用性が高いと思います。

身に付けるものに意味を込められるというのは、着物ならではの特権ですから、ベースになる着物をシンプルな無地感覚にして、帯の柄に思いを託すというのも素敵ではないでしょうか。

白地の帯 〜カラフル〜

西陣袋帯「格天井華文」
西陣袋帯「格天井華文」

格天井文という格調のある柄でありながら、白地に綺麗な色が小さく散りばめられていて、透明感のある華やかさがあります。
小物に選ぶ色で、さまざまなコーディネートが楽しめそうです。

白地の帯 〜吉祥紋〜

両面織袋帯「吉祥宝尽くし文様」
両面織袋帯「吉祥宝尽くし文様」

“珍しく貴重なもの”を集めた「宝尽くし文様」。
門出の席に、人生の宝物をたくさん手に入れられますように…と祝意を込めて。
器物文様なので、無地感覚の着物だけでなく御所解のような草花が描かれた着物にも似合います。

黒地の帯 〜カラフル〜

【西陣・都】袋帯「若松文」
【西陣・都】袋帯「若松文」

吉祥文様でもある松が織り出された袋帯。
ベースの黒地部分が少なめなので、装いを引き締めつつ重くなり過ぎない着こなしに。
例えば上で挙げた竹の刺繍訪問着に合わせて、小物で梅を加え、松竹梅の組み合わせにしても。

黒地の帯 〜吉祥紋〜

綴れ地袋帯「破魔矢源氏鎧太刀紋」
綴れ地袋帯「破魔矢源氏鎧太刀紋」

黒地に武具や破魔矢が織り出された袋帯。
例えば七五三や入学式なら、お子さまの心身が災厄から守られますようにと祈りを込めて。

シックな印象の着物にはもちろん、少し甘いかな…?と思うような着物をシャープに仕上げたいときにも。

帯や小物で変化を付けられるシンプルな着物は、飽きずに長く活用できるという利点も。

かつてのように、結婚の際にひと揃い、という準備の仕方だと、せっかくの着物もあまり愛着も持てずしまったままだったり、着ないまま歳を重ね、いざ着ようとしたら若過ぎて着られなくなってしまったり…なんてこともありますが、こういった記念の折に顔映りの良い地色で自分が気に入った質感のものを手に入れて、その時々の思いを込めながらコーディネートを工夫したりしつつ、大切に長く楽しむというのも素敵ではないかと思います。

桜はいつ着る?

桜、さくら、サクラ。
今回の冒頭でご紹介したのは、さまざまなテイストで表現された桜モチーフ。

最近は桜の開花がやたらと早かったり、一瞬にして見頃が過ぎてしまったりするのでなかなかタイミングが難しいですよね。
地域によっても違いますから、○月○日まで、なんて決められませんし。

桜だけでなく季節の植物を描いたものは、先取りが粋、自然と張り合うのは野暮とも言われますが、これは着る人の好みで判断して良いのではないかと思います。

自然との競演ではなく共演、という考え方もありでしょうし、このモチーフが好きだから一年中着る!も、もちろんあり。

私自身は、先取りで次の季節を待ち望む思いを表現できるのがいいなと思うので、実際に咲く前に先取りで着たいなと思うのですが、そうするとタイミングを逃すことが多くなる…(笑)。

桜に関して言えば、私は花そのものより花びらが散っている柄の方が好き(単純に好みの問題)なので、桜が咲いてしまってからも着るチャンスがある。
毎年、藤の帯よりはタイミングを逃さずに済んでいるかもしれません。

桜のコーデ

写実的に描かれた桜は、リアルタイムに先駆けて、と言われます。

それに準じるのなら、枝垂れ桜の袋帯(左上)は3月上旬〜開花まで、右端の葉桜の名古屋帯は3月上旬〜葉桜になるまで、といったところでしょうか。

右上のように花びらのみのものや、左下の文様化された花と散る花びらの組み合わせならば、咲く前から実際に散ってしまうまで存分に楽しめますね。春以外の季節に着るならば、雪や月のモチーフと合わせて「雪月花」の組み合わせにしても良いかもしれません。

白地の大島のように、桜モチーフではあってもパターンとしてデザイン化されているものは、季節を限定せずに使えます。桜の季節には淡いピンクの帯や小物で桜感を強め、それ以外の季節にはモダンな花モチーフの着物としてコーディネートを楽しむと良さそうです。

とはいえ、仮に写実的に描かれたものでも、例えば『義経千本桜』『娘道成寺』『桜姫東文章』など、桜が印象的な演目を観に行く際に身につけるというのも素敵。

その季節以外にも、楽しむチャンスがあります。

柄と柄の力学

柄 on 柄の組み合わせは、バランスが大事。引き算というより、力の拮抗加減ーベクトルーで考えると、意外な面白さが発見できるかもしれません。

季節のコーディネート

〜花筏〜

桜花散らし

上半身から裾にかけて舞い散る桜が染められた牛首紬に、モダンにアレンジされた流水の袋帯を合わせて、花筏をイメージ。

モダンな華やかさのある立ち姿も印象的な着物ですので、立食パーティーなどにも素敵です。

桜花散らし3

帯にさりげなく織り込まれた金糸が、動きや光に呼応して煌めき存在感を放ちます。
モノトーンの組み合わせなので、長襦袢を灰桜色にして袂や袖口にちらりとのぞかせても。

〜春の色〜

桜色の無地結城紬
結城紬「桜色」+ 西陣織袋帯「萌黄間道」

雛祭りの菱餅や花見団子の三色。

「魔除けの赤(ピンク)、清浄の白、邪を払う緑」という説、「桃の花、雪、若草」で春の生命力を表すという説、「蕾のピンク、花の白、葉桜の緑」で桜の移り変わりをあらわすという説…さまざまありますが、いずれにせよ一目で春を連想させる色であることには間違いありません。

桜色の無地結城紬に、繊細なグラデーションが美しい紙布織の帯を合わせて。

小物遣いも春の三色で揃え、胸元にさりげなく花びらを忍ばせて。

無地感覚同士の組み合わせは、素材感が大事。
帯の質感やグラデーション、帯締めの白いラインが適度な抜けになり、平坦な印象にならず奥行きを感じさせます。

〜春の夜の〜

桜色の横段小紋

ほんわり優しい印象の小紋をきりっと引き締める黒の染め帯に描かれたのは、瓢(ひさご)と、桜をアレンジした桜唐草。
単独ではそこまで桜の印象は強くないのに、淡い桜色の横段の小紋に合わせると、響き合って桜のイメージがぐっと強まります。

春の宵、花を愛でつつ一献…という気分になる組み合わせ。

瓢の中に着物の花唐草の中から一部取り出したような唐草がのぞき、そのさりげないリンクが双方の印象をより際立たせます。

着物も帯も、それぞれ春以外にも楽しめる季節を限定しない柄ですが、組み合わせると色の印象とも相まって桜の風情を醸し出します。

〜花の音〜

繊細な友禅の訪問着

繊細な友禅で龍笛が描かれた訪問着は、和菓子を思わせるような配色が印象的です。
抹茶色の地に花びらが散る染め帯を合わせて、雅な雰囲気の漂うコーディネートに。

桜を愛でる春のお茶会や、少しあらたまったお食事の席やパーティーなどにも。

春霞のような段ぼかしの帯揚げに、糸月に花びらが舞う帯留と鼓の根付け。
例えば観劇なら、より世界観を深める小物を添えて。

ついこの間年が明けたと思っていたのに、もう桜が目の前。

でもここ数年の状況を考えると、桜の帯、いつ締めようかな…と楽しみにできるだけ幸せなんだなと思います。着物を着て出かけることすら憚られる春もありましたから。

そして撮影関係では、そろそろ浴衣の話もちらほら…

うかうかしていると飛ぶように過ぎていく季節、なるべく取りこぼさずに味わっていきたいものです。

さて、次回の第十一夜は…

4〜5月は、行ったり来たりの衣更(ころもがえ)期間。
夏と言っても良いような陽気の日もありますから、暑さ対策は臨機応変に。

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