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着物を纏うことで役と出会う― 俳優・片岡礼子さん(インタビュー後編) 「きもの、着てみませんか?」 vol.2-3

着物を纏うことで役と出会う― 俳優・片岡礼子さん(インタビュー後編) 「きもの、着てみませんか?」 vol.2-3

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映画、ドラマ、舞台と活躍される俳優・片岡礼子さん。インタビュー前編では、人との関わりの中で病から復帰し夢を叶えてきたことを語ってくださいました。後編では、これまでの印象的な着物との関わりについて。引き続き、薬真寺 香さんスタイリングの印象的な着物姿にてご登場いただきます。

ビルを背にたたずむ俳優・片岡礼子さん

映画、ドラマ、舞台と活躍される俳優・片岡礼子さん。vol.2-1での、薬真寺香さんスタイリングによる着物姿も好評でした。今回は、大きな病を乗り越えた経験をもつ片岡さんが大切にされていることについて、晴れやかな秋空のもとじっくりとお話を伺いました。

俳優・片岡礼子さんをお迎えしてのインタビュー後編。
今回着物スタイリスト薬真寺 香さんが新たにセレクトしたのは、ボリュームのあるヘッドドレスに、トルコ産のストール。

都会の庭園に太陽と戯れる…幻想的な着物姿とともにお届けいたします。

ヘッドドレスとトルコ産のストール。

こちらのコーディネートが生まれるまでの経緯について、薬真寺さんにお聞きしました。

「このヘッドドレスは、ヴィヴィアン佐藤さん*が主催されているワークショップに参加し、私が自作したものです。そして実は…なんとそのワークショップに、今回のゲストである片岡礼子さんも参加されていたんです」

*ヴィヴィアン佐藤:美術家であり建築家。映画批評などの文筆も多数手掛ける。ヘッドドレスのワークショップを不定期で開催。

大島紬にヘッドドレスを合わせたスタイル。

「片岡さんの作品を初めて拝見したのは15年ほど前、橋口亮輔監督の映画『ハッシュ!』だったのですが、以来何度も観返しているほど大好きな作品なんです。それ以降、いろんな作品で片岡さんの姿を見つけるたび心が波打つように。

そんな雲の上の存在だった方とたまたまご一緒したわけなんですが、片岡さんは信じられないくらい気さくに、優しく接して下さって。人間的な魅力と、世間話の流れから片岡さんが話して下さった着物にまつわるエピソードがとても印象的で、ずっと心に残っていました」

緑と光に包まれた幻想的な俳優・片岡礼子さん。

そうしたきっかけから生まれた今回の撮影。インタビュー後編では、片岡さんにとっての着物にまつわる過去・現在・未来を伺いました。

着物との出会いは、感謝のしるし“成人式の写真”

更紗柄の帯と大島紬に合わせたヘッドドレス。

着物との出会いは、20歳の成人式の時という片岡さん。

「私は愛媛県の出身なんですが、大学に入る際に上京していたので、東京で成人式を迎えました。成人式の当日、着物を借りて着付けてもらい、写真館で撮った写真を田舎の両親に送って。今までの恩返しに、成人した私を見て喜んで欲しいなと思ったんです」

着物で襟を正し、役と出会う

伝統的な大島紬の魅力を引き立てる斬新なコーディネート。

お芝居の役柄によっては着物を着る機会もあるという片岡さんですが、ご自身で初めて着物を買った時のことも印象深く覚えていらっしゃるそう。

「初めて自分で着物を買ったのは、病気療養からの復帰後すぐのラジオドラマ作品の中で、鈴木しづ子さん*という実在の方を演じることになった時のことです」

*鈴木しづ子:戦後に活躍した女流俳人。代表作に『夏みかん酸つぱしいまさら純潔など』等。

スタイリッシュなムードが増した、大島紬のコーディネート。

「しづ子さんは戦後まもない頃に黒人の米兵と恋に落ちた女性。時代が時代だけにひどい中傷にも遭ったようなのですが、運命の恋だったんでしょうね。愛に生きた女性だった」

花と光に包まれた着物コーディネート。

「ほどなくして彼が朝鮮戦争への出兵で離れ離れになった挙句、彼は母国で亡くなってしまい、彼女はその死を彼の母からの知らせで知ったそうです。

しづ子さんはその後、消息がわからない。もしかしたらまだ生きていらっしゃるのかもしれません」

「そんな実在の女性を演じるのに、普通の洋服ではだめだと直感的に思ったんです。着物を着て、襟を正さないと臨めないな、と」

アンニュイな表情が秋の光と緑によく映える。
ロマンチックな彩りを重ねた着物コーディネート。

「中古の着物屋さんに飛び込んで事情を話したところ、こんなイレギュラーなお願いにも応えてくれ、着物一式を選んでいただきました。着付けてもらって、そのまま本読みに向かったら、みなびっくりしていましたね。

でも、しづ子さんが纏っていたんじゃないかと思えるような趣のある着物を着て、帯を締めた時に、私はやっとしづ子さんと出会えた気がしたんです。着物を着たことで歯車が合いはじめた感覚がありました」

木綿の着物をさらっと着こなして、美術館へ行きたい

片岡さんに撮影の感想を伺ってみると、

「今日は着物を着せてもらってすっごく楽しかったです。着物でこんなに遊べるなんて知りませんでした。また一つ夢を叶えてもらえました」

斬新で大人っぽい、大島紬のコーディネート。

仕事の場面以外ではなかなか着物を着ることがないとおっしゃる片岡さんですが、着物を着て出かけたい場所はあるのでしょうか。

「自分でさっと着付けられるようになって、美術館や近所へお買い物に足を運べたらいいですよね」

秋の午後の光に包まれた、ヘッドドレスを纏った片岡礼子さん。
異国情緒漂う更紗の帯とヘッドドレスで魅せる大島紬のコーディネート。

「以前、大好きなサントリー美術館を訪れた際に着物をお召しの方と入口ですれ違ったのですが、その気負わない着こなしがあまりに魅力的だったので、思わず声をかけてしまいました。
その方は「木綿の着物なんです、こんな普段着でお恥ずかしい」とおっしゃっていましたが、とっても素敵だったんです」

「憧れはありつつも、自分で着付けられるようになるにはなかなか実行に移せませんでした。ですが、娘が大きくなってきて着物に興味を持ちはじめてくれて、数年前から一緒に着付け教室に通っています。今では娘の方が早く着付けができるくらいですよ。

今は仕事と子育てで精一杯ですが、おばあちゃんになったら毎日着物を着て過ごすのもいいなと思います。さらっと普段着感覚で着られる木綿の着物で、美術館に行くのがもう一つの夢ですね。」

舞姫のようにストールを翻す。
草履提供:襟の衿秀

片岡礼子さん出演情報

映画『空白』公式サイト
https://kuhaku-movie.com

コントと音楽

コントと音楽 vol.3「くたばるものかよ」
conte-to-ongaku3

片岡礼子のシトラスレター

片岡礼子のシトラスレター

毎週月曜日11時45分~11時55分
南海放送ラジオ ※radikoでも視聴可
https://www.rnb.co.jp/radio/citrus-letter/

帯留、リング
『Classic Ko / クラシックコー』
時代を経て受け継がれてきた装飾技術「蒔絵・漆」の手技を駆使しながらも、現代の感性によって継がれる独自のミックス感覚を持った「美しさ」を築いているアクセサリーブランド。
http://www.classic-ko.jp
instagram classicko.jp
online-shop http://www.classic-ko.net

草履
『襟の衿秀』
http://www.erihide.jp/

※ヘッドドレス、花柄のストール、半衿、帯揚げ、帯締めはスタイリスト私物

構成・文/青葉鈴 greenery_aoba
撮影/坂本陽 minami.camera 
取材協力/ 上目黒氷川神社 

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