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キラキラした未来を見据える瞳 柔道金メダリスト・パリ五輪代表 阿部詩さん(インタビュー前編)「きもの、着てみませんか?」 vol.6-2

キラキラした未来を見据える瞳 柔道金メダリスト・パリ五輪代表 阿部詩さん(インタビュー前編)「きもの、着てみませんか?」 vol.6-2

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東京2020オリンピックで日本人初となる柔道女子52キロ級で金メダルを獲得し、すでに次回パリ2024オリンピックにも内定されている柔道家・阿部詩さん(パーク24所属)。薬真寺 香さんによるスタイリング編では、凛々しく華やかな振袖姿をみせてくださいました。今回は、着物にまつわる思い出やファッションについての考えを伺いました。

2024.01.04

よみもの

パリ五輪へと架ける和製トリコロールの振袖 feat.阿部詩「きもの、着てみませんか?」 vol.6-1

凛々しく、柔らかくー振袖への想い

阿部詩さんが纏う、職人技が光る振袖

2024年のスタートにふさわしい、日本の伝統技術の美しさを存分に感じさせる華やかな装い。

柔道家・阿部詩さんをゲストにお迎えし、前回記事では、スタイリスト薬真寺さんにコーディネートやヘアメイクのポイントについてご紹介いただきました。

ここからは、撮影後のインタビューの様子をお届けいたします。

右:柔道家・阿部詩さん、左:着物スタイリスト・薬真寺香さん

左:薬真寺香さん 右:阿部詩さん

薬真寺 香(以下、薬真寺):撮影お疲れ様でした。お着物、いかがでしたか?

阿部詩さん(以下、阿部さん):こういう色ははじめて着ましたが、素敵ですね!パリ五輪にちなんで青・白・赤のトリコロールを意識してくださったとは驚きました。肌触りがいいというか……柔らかくて着心地もよかったです。こんな振袖もあるんですね。

薬真寺:すごくお似合いでした。振袖の素材の柔らかさや落ち感、髪飾りの光沢など細かい部分も伝わるような動きや表情をしてくださり、詩さんの表現力によって魅力が倍増したと思います。

阿部詩さんが纏う、職人技が光る振袖

卒業式の袴・大切な詩との想い出

阿部詩さんが纏う、職人技が光る振袖

薬真寺:和装はいつ以来でしたか?

阿部さん:最後に着たのは去年三月ですね。大学の卒業式に袴で出席しました

薬真寺:SNSで拝見しましたが、淡い緑色の袴とクリーム色のお着物との組み合わせが爽やかで素敵でした。どちらかというと珍しい色味の袴ですよね。ご自身で選ばれたのでしょうか。

阿部さん:最終的には自分で決めたんですが、母と一緒に選びに行きました。母からはもうちょっと渋い色の着物を勧められたんですが、意見が合わなくて(笑)。私はあの袴に一目ぼれしたので、それに合うよう柔らかく明るい色の着物を選びました

薬真寺:卒業式では、代表あいさつで武者小路実篤の『もう一息』という詩を読まれていましたよね

阿部詩さんが纏う、職人技が光る振袖

もう一息 武者小路実篤

もう一息という処でくたばっては
何事もものにならない

もう一息
それにうちかってもう一息
それにも打ち克って
もう一息

もう一息
もうだめだ
それをもう一息
勝利は大変だ
だがもう一息

阿部さん:あの詩は小さい時に通っていた道場で、毎日みなで復唱していたものなんです。先生がお好きだったんだと思うんですが、その後も競技生活でずっと支えにしてきた言葉です

薬真寺:長く親しんで来られた詩だったんですね。幼いころの詩さんがあの詩を励みに練習に打ち込まれていたかと思うと、胸が熱くなります。

薬真寺:昨年は大学卒業そして社会人としてのスタートの年でもありましたが、何か変化というか、心持ちの違いなどはありますか?

阿部詩さんの黒帯

阿部さん:「競技中心の生活」というのは同じなので大きく変わった訳ではないんですが、仕事として柔道をやっていることになるので、責任が重くなったなという気持ちの変化はありますね

阿部詩さんが纏う、職人技が光る振袖

柔道着が、着物への親近感の源?

阿部詩さんが纏う、職人技が光る振袖

阿部さん:着物が好きなので、この撮影の依頼をいただいた時はすごくうれしかったです!こういう機会でもないと、なかなか着られないので。

薬真寺:わ!それはこちらもうれしいです。着物の、どんなところがお好きですか?

阿部さん:着るとビシッとするところでしょうか。帯を締めるとビシッとする感じとか、ちょっと柔道着と似ているなと思うところもあって。それで親近感を感じるのかもしれません。

阿部詩さんが纏う、職人技が光る振袖

薬真寺:はじめて着物を着たのは?

阿部さん:七五三ですね。3歳の時、兄と一緒に着物を着たのが最初です。7歳の時は写真スタジオで着物やドレスの写真を撮ってもらいました。すでに柔道をはじめていて髪が短かったんですけど、写真館で付け毛をつけてもらって。女の子らしく変身したことがうれしかったのを覚えています。でも、写真を撮られるのは恥ずかしかったですね。

薬真寺:皇居での国民祭典や、さまざまな授賞式、成人式など、メディアにてたびたびお着物姿を拝見していました。

阿部さん:大きくなってからは国民祭典の時に着せていただいたのが最初でした。初めての振袖で7〜8時間着っぱなしだったので、ちょっと大変でしたが、その分脱いだ時の開放感がすごかったです(笑)。

阿部詩さんが纏う、職人技が光る振袖

自分がキラキラすることで、柔道に夢をもってもらいたい

阿部詩さんが纏う、職人技が光る振袖

薬真寺:詩さんは着物に限らず、ファッション誌やテレビ等へのご出演も積極的にされている印象があります

阿部さん:もともとはおしゃれに興味もなかったし、メイクも大学生になるまでしたことがなかったんです。ファッションは縁遠い存在でした。でも、メディア出演の際にメイクしてもらったり、普段自分では着ない衣装を着せてもらったりするなかで「こんな自分もいるんだ」と気づかせてもらいました。それによってだんだん自分が豊かになっていくのも感じて。

それで徐々に、自分はアスリートだけど、そうじゃない一面も持っていたいなと思うようになってきました。普段は稽古にトレーニングにと、1日ジャージで過ごすことも多いですが、休みの日はおしゃれして買い物に出かけたりして楽しんでます。

阿部さん:(メディアに)出ることに批判的な方もいらっしゃいますし、出るからには成績もちゃんと残さなければいけないっていうプレッシャーもあるんですが、例えばサッカーや野球は選手がキラキラしているイメージを持っている方も多いですよね。柔道は戦っているところを見ていると、どうしても怖いイメージを持たれがちです。柔道人口も減っているなかで、おしゃれもできないならやりたくないな、嫌だなと思う子もいると思います。

ファッション撮影などで、プロの方々のお力を借りてキラキラにしていただいた私の姿を見て、子どもたちに「こんな世界もあるんだ」と憧れや夢をもってもらうことに繋がるんじゃないか、そうしたら柔道を始める子どもたちがもっと増えるんじゃないか……と期待している部分もあります。

薬真寺:柔道という競技全体の未来のことを考えてらっしゃるところが素敵だなと感じます。選手として闘う姿も、信念を持ってメディアに出てらっしゃる姿も、どちらもキラキラしててかっこいいです!

阿部詩さんが纏う、職人技が光る振袖

インタビュー後編もお楽しみに

次回は、インタビュー後編を近日公開予定。

主催された『ABE CUP 2023 -JUDO School&Friendly Match-』への想いや、ご自身の未来について伺います。お楽しみに。

振袖

NISHIOKA PENCIL / 制作:EMON / 染め:あけ田
https://www.instagram.com/nishiokapencil_official/

刺繍アクセサリー

刺繍作家・高澤恵美
https://www.instagram.com/emi.takazawa/
http://emitakazawa.com/

構成・文/青葉鈴 greenery_aoba
撮影/坂本陽 minami.camera
ディレクション・スタイリング・着付け・ヘアメイク/薬真寺 香 ___mameka_

※半衿、帯締め、帯揚げはスタイリスト私物

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