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テーマは”正直と笑い”。  俳優・片岡礼子さん(インタビュー前編) 「きもの、着てみませんか?」 vol.2-2

映画、ドラマ、舞台と活躍される俳優・片岡礼子さん。スタイリング編では、その静かな迫力を際立たせる大島紬の装いが好評でした。インタビュー前編では、大きな病を乗り越えた経験をもつ片岡さんが、今大切にしていることについて伺います。”ビル群”を背景にした秋空のもと前回とはまた異なる表情をみせる、薬真寺 香さんの着物スタイリングも必見です。

俳優・片岡礼子さんのリラックス感溢れる大人の着こなし。

着物スタイリスト・薬真寺 香さんのスタイリング連載第二弾。映画やドラマで活躍されている俳優・片岡礼子さんをお招きし、秋の着物コーディネートを提案しました。光と影に戯れる自由闊達な片岡さんの表情とともに、しっとりと大人な着物姿をご覧ください。

前回、秋の始まりを感じさせる氷川神社でしっとりとした大人の着物姿を披露してくださった、俳優・片岡礼子さん。

ご家庭を持たれながら、数多くの映画、ドラマ、ラジオドラマ、舞台で俳優としてお忙しく活動されている片岡さんは、そのバランスをとる上でどんなことを大切にされているのでしょうか。片岡さんの思い出の地でもある氷川神社でお話を伺いました。

視線が美しい

さらに今回は、片岡さんご本人原案のクレイアニメーション『オイラはビル群』(2021年〜WOWWOWオンデマンドにて配信中)にちなんで、背景にビルがそびえるロケーションでも撮影。
こちらの作品は、俳優の斎藤工さんが企画・プロデュースを行い、秦俊子さんが監督として手掛けられました。

クレイアニメ『オイラはビル群』では原案者として製作に携わった片岡礼子さん。
草履提供:襟の衿秀

「舞台の上で死ねたら本望」と信じていた頃

俳優という仕事は「舞台の上で死ねたら本望」というように、若い頃は家庭を持たず役者一筋でいないといけないものだと思っていたという片岡さん。

「夜通し映画を見たり、痩せるために水分を取らなかったり、随分と不摂生をしていました。20代後半で家庭を持つことになり、子どもを生んでからも昼間は家族のために家事をして、みんなが寝静まった後に台詞を覚えて、朝になったら保育園に送ってとほとんど睡眠をとらない生活を送っていて……不健康でも、自分の仕事の目的を果たすことの方が大事だと思っていたんです」

都市の風景とともに着こなす大島紬

「その頃の作品を見ると、自分でも鬼気迫る怖い顔しているなと思います。若い頃には若い頃の良さがあると思うのですが。その時必死で生きているものをそのまま撮ってもらったドキュメントですよね」

脳出血に襲われてから、生活を取り戻すまで

泥染の大島紬に更紗柄の洒落袋帯をあわせて

このように多忙な生活を送っているうち、2002年に片岡さんは脳出血に襲われます。

「子どもが小さいうちは睡眠不足で当たり前。家庭を持たずに頑張っている方々もいる中で、自分は寝ないで頑張らないといけない。段々と頭痛が酷くなっても、そうでなければいけないと無理な生活を続けていました。すると、意気込んで臨んだ舞台の稽古場で倒れてしまって」

片岡礼子さんが着こなす大島紬。

片岡さんはその後しばらく東京を離れ、四国の島で療養生活を送られます。

「島で暮らした間は農作業をしたりして過ごしていたのですが、朝が早いんですよね。朝焼けとともに外に出ると、あたりいっぱいにみかんの花が咲いた香りがして、こんなに素敵なことが世の中にあるんだと初めて知りました。こうして生活を取り戻していくうちに、幸いなことに身体と心が癒されていきました」

「若い時は、俳優はこうあらねばならないとか、どうせ色々下手やしという思い込みに縛られて、とても孤独に仕事をしているような気がしていました。けれど、病気を通して家族、友人たち、仕事で出会った人たち……周りの人たちが私のことを気にしてくれていることがわかってきました。

怪我の功名ではないですが、私は人の輪を通して、自分のことを大事にできるようになってきたと思います。そういう人たちの存在が重力となって、今も私を現実の生活に繋ぎ止めてくれています。それが今の演技にも繋がっていると思います」

そびえ立つビルを背にした俳優・片岡礼子さん。
扇子は「浅草文扇堂」の手描き網目模様

辛かったはずの病気の思い出もユーモラスな語り口で明るく語ってくれる片岡さん。人とのコミュニケーションでどんなことを意識されているのかを伺ってみると、

「”正直と笑い”は私のテーマです。もともとは何事も穏便に済ませようと、場の空気を読みがちなタイプだったんですが、気を使ったつもりで言ったひと言が思わぬ方向に動いてしまうこともある。そういうことが、だんだんとしんどいなと思うようになってきて、正直になろうと決めたんです」

俳優・片岡礼子さんの目線の先には

「ところが、正直にこだわってズバッと物を言い始めたら、相手を不用意に傷つけてしまうこともありました。ただはっきり言うだけではだめだなと思ったものの、元の自分に戻りたいわけじゃない、正直ではありたい。

じゃあ、同じことでも笑いを加えて伝えようって思いました。”正直”に”ユーモア”をプラスするだけで、人との関わりはずっと良いものにできるなって。家庭でも、仕事の現場でも、笑いを取ることには貪欲です。家に帰るたびにどうやって子どもたちを笑わせようかということを7〜8年続けているんです。お笑い芸人さんからも勉強させてもらっています」

ご縁が叶えてくれた夢

周りの人を大切にされている片岡さんならではのコミュニケーション術。そういった、人を大切にする姿勢からか、今回撮影を行った氷川神社での出来事から夢のプロジェクトも生まれました。

「この氷川神社で行った斎藤工さんとの撮影*でお話したことをきっかけに、私が原案を担当したクレイアニメーション作品『オイラはビル群』をWOWOWで制作していただくことができました。
私はクレイアニメーションを撮ってみたいと以前から野望があったんです。でも簡単なことではない、夢の話だなと思っていて。」

*雑誌『FIGARO japon』での斎藤工さんの連載『齊藤工 活動寫眞館』

建設中のビルをと高速道路を背に。俳優・片岡礼子さん
泥染大島紬。八掛の紫は片岡さんのお気に入りの色のひとつ

「一方斎藤さんは、アフリカや南米など発展途上国の子どもたちに映画を届ける活動をされていました。そこで立ちはだかる権利の問題をクリアするために、権利フリーのクレイアニメを制作されていました」

「私の野望を語ったら、斎藤さんはとてもびっくりされて。コンセプトに共感してくださって、ぜひやろうということになりました。叶えたい夢が重なって、紆余曲折ありながらも2021年ついに実現することができたんです。頑張っていたら、こんなご褒美みたいな奇跡が起きるんだなと、周りの方々に感謝でいっぱいです」

俳優・片岡礼子さんの粋でスタイリッシュなきもの姿

~ インタビュー後編(近日公開予定)につづく ~

作品情報

オイラはビル群

クレイアニメーション『オイラはビル群』
https://wod.wowow.co.jp/series/47749

かんざし、帯留、リング
『Classic Ko / クラシックコー』
時代を経て受け継がれてきた装飾技術「蒔絵・漆」の手技を駆使しながらも、現代の感性によって継がれる独自のミックス感覚を持った「美しさ」を築いているアクセサリーブランド。
Classic Ko web http://www.classic-ko.jp
instagram classicko.jp
online-shop http://www.classic-ko.net

草履
『襟の衿秀』
http://www.erihide.jp/

※半衿、帯揚げ、帯締めはスタイリスト私物

構成・文/青葉鈴 greenery_aoba
撮影/坂本陽 minami.camera 
取材協力/ 上目黒氷川神社 

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