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純喫茶ときもの feat. 小谷実由 「きもの、着てみませんか?」vol.8-1

純喫茶ときもの feat. 小谷実由 「きもの、着てみませんか?」vol.8-1

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着物スタイリスト・薬真寺香さんによるスタイリング連載の第8弾。今回は、ファッションモデルであり、エッセイの執筆なども行う小谷実由さんをお招きし、お気に入りの喫茶店へおでかけする気軽な着物コーディネートを提案しました。

大好きな純喫茶「ローヤル」をイメージしたコーディネート

和物や着物以外の分野で活躍中のゲストが、着物スタイリスト・薬真寺 香さんの手で着物との新たな出会いを果たす本連載。

結城紬でおもてなし feat.和田明日香』に続いて登場いただいたのは、「おみゆ」の愛称でファッションモデルとして活躍しつつ、エッセイ『隙間時間』(ループ舎)の執筆や、J-WAVE original Podcast 番組「おみゆの好き蒐集倶楽部」のナビゲーターを務めるなど、マルチな活躍を広げる小谷実由さんです。

14歳からモデルとしての活動を始めた小谷さん。

自分の好きなものを発信することが誰かの日々の小さなきっかけになることを願いながら、エッセイの執筆、ブランドとのコラボレーションなどにも取り組んでいます。

特に純喫茶と猫が好きなのだとか。

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

今回は、散歩の延長でお買い物、途中に喫茶店で休憩、といった気軽なお出かけのシーンを想定しスタイリングしたという薬真寺さん。

「衣裳だから借り物なんだけど、できるだけ借り物感をなくしたくて。小谷さんがお家からこのまま来たような雰囲気を出せるよう意識しました」(薬真寺)

今回のロケ地である東京・有楽町の純喫茶『ローヤル』があまりに好きで、「喫茶店と同化したいほど!」という小谷さんの言葉も。

お店を下見した薬真寺さんが選んだのは、レトロで趣ある壁紙から着想を得た着物でした。

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。
モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

浮き織りの風合いと色味がローヤルさんの壁紙を彷彿とさせ、ぐっときました。

江戸茶色を基調としており一見落ち着いた印象なのですが、さりげない光沢とグラデーションの効果で、着ると意外な華やかさを放ちます

こういった”きれいめに着られる無地っぽい紬”はイメージが限定されにくく、様々なシーンで活躍してくれる。一枚あると本当に頼りになるし、コーディネートの楽しさを存分に味わえます」(薬真寺)

着付けが終わり、ようやく鏡の前で全身の着姿を見た小谷さんも、

「すごい!ローヤルだ!光のキラッとする感じがまさに!」

と興奮気味。光の当たり具合で、見え方が様々に変化する生地をじっくり眺めていました。

洋装で好きな要素を着物コーデに取り入れる

「刺繍も好き」という小谷さんのためにセレクトされた半衿は、黒地に秋らしい栗があしらわれたもの。

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

「半衿は『富士商会』さん。イラストレーター石橋富士子さん(通称ぺタコさん)による刺繍が施されています

実は今回、この栗の半衿ありきでお着物や帯など他アイテムをセレクトしました。

小谷さんがこの半衿をつけて純喫茶「ローヤル」にいらっしゃる図を想像したら、あまりにしっくりきて、他には考えられなくなってしまって」(薬真寺)

丁寧な手仕事、繊細な細工、可愛らしさとユーモア、色遣いなど、小谷さんが日頃愛でておられるものたちと、この半衿がすんなりと馴染むように思えたことも決め手のひとつです。

そういった細部に宿る共通項をきっかけに『着物ってたのしい』と思っていただけたらうれしいです」(薬真寺)

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

「かわいい!見た瞬間、栗に目を奪われました。色もモチーフも新鮮です。

今まで自分の中ではなかった組み合わせですね。”着物ならではの楽しみ”という感じがします」(小谷さん)

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

そして実は、小谷さんが普段好んで身につけている洋装のブランドも、コーディネートに忍ばされています

「草履は『履物関づか』さんと『MameKurogouchi』さんのコラボアイテム。

”mame愛好家”としてのお顔もお持ちの小谷さんにぜひおすすめしたくてお持ちしました」(薬真寺)

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

2024.10.27

よみもの

『履物関づか』の草履と革足袋にひと目惚れ 「京都できもの、きもので京都」vol.17

「深緑色が秋らしくて、ベルベットの素材とも相まって素敵です。

ちなみに、バッグもシンプルなレザーですが、わざわざ和装用の小物を買わなくても、普段使いしているものが応用できるとは知りませんでした。もしかしてこのバッグはコムデギャルソン……?」(小谷さん)

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

「そうなんです。こういったタイプのほか、クラッチバッグや、きんちゃくなども着物に合わせても可愛いですよ。

すでにお家にあるものや古着屋さんで見つけたものを合わせたりして楽しんでいただきたいです」(薬真寺)

秋らしさを全身に散りばめた色使い

「帯締めもとても秋らしくていいですね!」(小谷さん)

そうつぶやいた小谷さん、薬真寺さんがうれしそうに語ります。

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。
モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

「『組紐工房 偕可園』四代目・児島有子先生の作品です。

先日幸運にもご本人にお目にかかる機会があったのですが、配色やデザインなど、制作の様々な過程において女性ならではの目線を大切にされているということが伝わってきて、とても心に残りました。この絶妙な色を出すためには工房に古くからある井戸のお水が重要なんだそう。

コーディネートにさらっと馴染むけれど、ありきたりではない雰囲気を醸し出してくれる。しなやかで、締め心地もとても良いです」(薬真寺)

ブルーグレーの帯は、琉球の織物、南風原花織

手花てぃばなと呼ばれる立体的な模様の織りは、半衿の刺繍とも相性が良く、着姿全体のアクセントにもなっています。

「伝統工芸士・野原俊雄さんの工房による、琉球絣と南風原花織の両方の魅力が楽しめる帯です。

高度な、しかも複数の技法が合わさった特別な織りと、ブルーグレーの“甘くない”色味の調和がすばらしく、南風の届かない東京の街にもそっと馴染んでくれているように感じます。

小谷さんが寒色系のお色をよくお召しになっている印象があった点も決め手のひとつに」(薬真寺)

さらに、髪飾りにもこだわりが

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

小谷実由さんのお名前にちなんで『実』をイメージしたかんざしを合わせています。

アンティークならではの、独特のこっくりした感がありますが、こういったタイプのものをボブに合わせるのもまた可愛い。かんざしはロングのまとめ髪に使うものだと思っている方が多いんですが、工夫次第で短い髪にも使えるんです。

まず、かんざしを挿したい付近にアメピンを留め、そのピンを土台にしてかんざしを挿せば、ボブやショートでも楽しむことができます。挿す位置、角度によって見え方は随分変わるので、慣れるまでは控えめに仕上げると抵抗が少ないと思います。

ロングヘアじゃないから……と諦めている方にも、ぜひトライしてヘアアレンジの幅を広げてみてほしいです」(薬真寺)

着物を纏って、お気に入りの喫茶店でコーヒーゼリーを

着物でどんなところへおでかけしたいですか? と聞いてみたところ、さすが小谷さん!という回答がすぐに飛び出しました。

「やっぱり、喫茶店ですね。映画館や書店に寄ってから、喫茶店で過ごしてみたいです。特にお気に入りの純喫茶ローヤルでは、大好きなコーヒーゼリーを食べたいかな。

ここのコーヒーゼリーはクラッシュされていて食べやすいんです。季節のフルーツが乗っている、シックな見た目も着物に似合いそう!」(小谷さん)

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。
モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

季節感のあるモチーフを身につけて、着物でレトロな喫茶店へ。そこでコーヒーゼリーを食べるというおでかけは、薬真寺さんのイメージ通りだったようです。

普段着のような、小谷さんのクローゼットの中身と並べても違和感がないような着物姿を目指してスタイリングしました。

だからこそ、着物でどこへ行きたい?という質問への即答が喫茶店で、いつも通りの過ごし方を考えてくださったのがうれしかったです」(薬真寺)

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

「着物を着ると、自然と仕草が変わりますね。メニューを選ぶときにも、指を差すのではなく手のひらでこう示したり。

言葉遣いも『こっち』ではなく『こちら』と言いたくなるような。自分の中での意識の変化を感じました」(小谷さん)

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

お気に入りであり、行きつけでもあるという喫茶店ローヤルのオーナーからも「着物、すごく似合ってるじゃない」と声をかけられ、照れながらもとてもあたたかい笑顔が印象的だった小谷さん。

普段の生活の中に着物を取り入れてみると、もう一歩深く「お気に入り」を楽しめるきっかけが潜んでいるのかもしれません。

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

インタビュー編もお楽しみに

モデル・小谷実由さんお気に入りの純喫茶ときもの。

次回は、インタビュー前編を公開予定。

小谷さんの思い出の浴衣のお話や、着物コーディネート体験の様子をお伺いします。

半衿:富士商会
https://fujishokai.theshop.jp

帯締め:組紐工房 偕可園
https://kumihimokoubou-kaikaen.com/

構成・文/山本梨央 dejane_rio
撮影/坂本陽  minami.camera
ディレクション・スタイリング・着付け・ヘアメイク/薬真寺 香 ___mameka_

※草履、バッグ、帯締め、かんざしはスタイリスト私物

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