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自分が楽しめば、必ず誰かの心に届く プロフィギュアスケーター・高橋大輔さん(インタビュー前編)「きもの、着てみませんか?」vol.10-2

自分が楽しめば、必ず誰かの心に届く プロフィギュアスケーター・高橋大輔さん(インタビュー前編)「きもの、着てみませんか?」vol.10-2

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プロフィギュアスケーターの高橋大輔さんが、薬真寺香さんのスタイリングで着こなした浴衣。着物とご家族との思い出から、フィギュアスケートでの表現をどう作っていくかという背景をお聞きしました。

2025.06.20

よみもの

色気を纏う男の浴衣 feat. 高橋大輔「きもの、着てみませんか?」vol.10-1

参観日に着物で来ていた母の思い出

薬真寺香(以下、薬真寺):高橋さんの着物の原体験や思い出、印象など、お聞かせいただけますか?

高橋大輔さん(以下、高橋さん):自分自身が着た記憶としては、七五三ですかね。写真も残っていて、印象に残っています。あとは撮影で衣装として着ることはあります。

プロフィギュアスケーター・高橋大輔さんが纏う浴衣

高橋さん:実は、自分というよりも母が着物が大好きでよく着ていて。たとえば参観日など、公の場にはだいたい着物で出かけていました。僕は兄が3人いて、そういえば祖父もいつも着物を着ていましたね。

薬真寺:素敵!男の子四人と着物のお母さんというのは、すごく絵になりますね。

プロフィギュアスケーター・高橋大輔さんが纏う浴衣

高橋さん:なんとなく、母は洋服のときよりも着物のときの方がきれいだなと思っていました。普段見ない姿、とくに髪型で結構印象が変わるじゃないですか。

母は髪が短いときもありましたが、長いときにビシッとまとめて、きゅっと背すじが伸びる感じは子供心に「おおっ」となる感覚がありました。

薬真寺:お母様も素敵ですが、幼いながらにその変化をキャッチする高橋さんがさすがといいますか。感性が豊かで、素晴らしいですね。息子さんにそんなふうに言われたら嬉しいだろうな。

日本人の匙加減でこそ作り上げることができる感性

プロフィギュアスケーター・高橋大輔さんが纏う浴衣

薬真寺:高橋さんは日本の代表として世界の舞台に挑むご経験をたくさんされてきたと思うのですが、ご自身の衣装を考える際に「和」の色や柄を意識することはありましたか?

高橋さん:実は和物はあまりやったことがなくて、アイスダンスを始めてから一度あったくらい。いずれにしても、モダンに仕上げる印象はありますね。楽曲的に、和だけだとやや静かで、動きが少ないものが多いと思っています。なので、曲の中でも要素としてプラスしていったり。衣装も自然と、和と洋のミックスになることが多いですね。

でも、海外の方が想像する「和」となると、なぜか中国の伝統衣装の雰囲気が入ってきたりすることもあって。日本人の感性で作るものは、日本人にしかできないのだろうな、というイメージはありました。色の度合いなど、ちょっとした匙加減は、長年日本に住んで、文化的に感じているものが含まれていくのでしょうね。

プロフィギュアスケーター・高橋大輔さんが纏う浴衣

一人よりもチームで。刺激をもらいながら表現を作る

薬真寺:近年ではプロデュースや振り付けを担当されたりなど、若手を後押しするような役割もされていますよね。ご自身としては、ある種シフトチェンジのようなお気持ちがあったりするのでしょうか?

高橋さん:自分としても、やっぱりまだ表にでてやっていきたいと思っています。一方で、スケート界も年々、状況も環境も変わってきていて。いろんなエンタメが日常の中に増えてきている中で、自分たちが生き残っていくためには何をしたらいいのか、このままではダメだ、という思いもありました。

そのためには、自分も楽しめるということが大事。それから、もともとカンパニーのようなものを作りたいなというのを夢のひとつとして抱いていたんです。それに近いものができたらと思って、『滑走屋』は始まりました。

プロフィギュアスケーター・高橋大輔さんが纏う浴衣

薬真寺:2024年2月の福岡公演、2025年3月の広島公演と、回を重ねていく中でどんなことを感じておられますか?

高橋さん:実は、僕自身は何かを一人でやるというのがあまり得意じゃなくて。みんなと物事を作っていくという方が好きだなとすごく感じています。一緒に作っていくことで、僕自身も刺激を受けるし、人数がいればいるほど、プラスが増えていく感覚。

自分も、どんなものが見たいのか、こういうのがあったらいいな、というヒントを得ながら進めてきました。そういう中で、たとえば振り付けひとつとっても感性が一致したときに、何か面白いことができたんじゃないかと感じます。

プロフィギュアスケーター・高橋大輔さんが纏う浴衣

「誰かしらには必ず刺さる」自分が楽しみながら

薬真寺:先ほどの「(生き残るためには)自分も楽しめることが大事」という言葉がものすごく刺さりました。本当にそうですよね。着物づくりにも通ずるものがあるかもしれません。作り手の方が、自分の着たいものを作る、とか。

高橋さん:そうですね。それに響いて、人が感激して、買って、着て。その楽しさは伝わる気がします。自分自身が楽しんでいるものは、誰かしらには刺さるもの。誰にも全く刺さらないものって、ないと思うんです。

プロフィギュアスケーター・高橋大輔さんが纏う浴衣

薬真寺:そう考えると、勇気が湧いてきます。

高橋さん:楽しいことも、さらに新しい研究などをしていくことも面白いですし。自分はどこまでいけるだろう?というのを期待する自分もいるわけです。

薬真寺:ところで、今日いらした時から気になっていたんですが、ジェルネイル、素敵ですね。鈍いゴールドが大人っぽくて、ちょっと金継ぎのようにも見えて。浴衣にも合いますね。

フィギュアスケーター・高橋大輔さんの浴衣にも合うジェルネイル

高橋さん:ジェルネイルは少し前からハマっていて。気分が上がるし、どんなデザインにしようか?と考えるのも楽しいんです。撮影で知り合った方のところでいつもしていただいています。

薬真寺:ネイルも含め、美容全般が性別関係なく親しまれるようになってきましたよね。以前、美容雑誌で高橋さんが、男性の手・骨の感じに合うネイルの色やデザイン選びについてお話されている記事を拝見したことがありますが、すごく興味深かったです。男性ネイルのお手本はまだあまり多くないので、これからチャレンジしたいという方にも参考になるだろうなと感じました。

美容系、ファッション系の媒体にお出になることも多いと思うんですが、根幹にはどのような思いがあるのでしょうか?

プロフィギュアスケーター・高橋大輔さんが纏う浴衣

高橋さん:フィギュアスケートやアイスダンスを知ってはいるけど、まだ足がかりがない、という方はまだまだたくさんいらっしゃるので、情報を発信しないと。ショーに足を運んでいただくには、いろいろな場にお邪魔し、目に留めていただく機会を増やすよう意識するのも大事なことだなと。

その先に、一回でも観にきていただけたら「あ、面白いな」と思っていただけるはず!そうしたら、また観に来ていただける方もさらに増える、と期待しているのかもしれません。

公演情報

2025年7月5日~7日に横浜アリーナにて開催される、「氷艶 hyoen 2025 -鏡紋の夜叉-」に高橋大輔さんが出演されます。

©氷艶hyoen2025

©氷艶hyoen2025

チケットなど詳細はこちらのサイトをご参照ください。

インタビュー後編もお楽しみに

次回は、インタビュー後編を近日公開予定。

動きを美しくするコツや、新しいことへ挑戦する姿勢、そして着物で楽しむアイスショーについて語っていただきました。

浴衣「金魚」「雪紋万華鏡」西岡ペンシル

ヘアメイク/宇田川恵司 keijiudagawa
構成・文/山本梨央 dejane_rio
撮影/坂本陽 minami.camera
ディレクション・スタイリング・着付け/薬真寺 香 ___mameka_

※シルバー雪駄、扇子、サークルパンツはスタイリスト私物

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