着物・和・京都に関する情報ならきものと

光る糸の秘密を探る!ショートトリップin京都 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.9

光る糸の秘密を探る!ショートトリップin京都 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.9

記事を共有する

気になるあの帯、あの輝き。織りの現場を訪ねてレクチャーいただきつつ、ステキな小物ができちゃうなんて…? 古谷尚子さんが誘う大人の京都旅、きものファン必見です!

2022.07.04

よみもの

アバカの半巾帯と、マリナオ村の物語 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.8

読者の皆さんならご存じかと思います、なんとも上品に妖しく光る糸で織られた魅惑的な帯のことを。

そうです、今日は西陣の帯匠「桝屋髙尾」さんの代名詞ともいうべき「ねん(糸へんに念)金綴錦」のお話。

桝屋髙尾」さんの代名詞ねん金糸

付け下げから留袖まで合わせられる汎用性の高さと品格は、多くのきもの好きに愛され、一本は持っていたい、いつかは欲しい、と考えている方も多い人気のブランド帯です。

きもの利用術の総合コンサルティング「金閣寺サロン」

まずは、金閣寺のきぬかけの路近くにオープンしたばかりの「金閣寺サロン」を訪ねました。

金閣寺サロン外観

金閣寺サロン<予約制>

金閣寺サロン

世の中のきものの潤滑油となる場所をつくりたいと考えた桝屋髙尾4代目髙尾朱子さんは、自宅だった場所を改装、クリーニングや仕立て直し、クローゼットサービス、着付けレッスンから、買取りや遺産整理に至るまで、きもの利用術の総合コンサルティングを開始しました。

「たとえば、昭和のきものに令和の帯を合わせるだけで“ステキが蘇る”んです。思い出の品が見違えるほど輝くことも。パーソナルにいろんな提案をさせていただいて、きものを着る喜びを取り戻したい」

残糸を貼り合わせたアートな帯の試作に夢中の朱子さん

残糸を貼り合わせたアートな帯の試作に夢中の朱子さん

こう語る朱子さん。会社や工房での社長としての姿とは違い、サロンでの、日々のきものを着こなす朱子さんも見違えるように輝いています。

ねん金糸で制作された小物たちが揃う。

ねん金糸で制作された小物たちが揃う。ここでしか買えないものも多数。

この金閣寺サロンでは、SDGsもテーマのひとつ。
残糸や残布を利用したワークショップも開催しています。残糸で作ったブローチのお洒落なこと!もちろん一点ものですしね。

生きている現場を見学できる「桝屋髙尾工房見学ツアー」

それでは今回のメーンイベント「桝屋髙尾工房見学ツアー」に出発です!

上京区の聖天町にある織工房に到着すると、西陣らしい力強い機の音が響いてきました。
そう、ここは観光用ではありません!生きている現場です。1階が機械織、2階が手織と、一か所で両方見学できるというのも面白いところ。

上京区の聖天町にある織工房

機自体を一から設計したという大判ストール用の広幅の手機も。大きさにびっくり。

大判ストール用の広幅の手機

じつはいま「金閣寺サロンオープン記念」として、スマホポーチの加工代つき工房見学ツアーを実施しているのです。

ねん金スマホポーチ集合

私、先日購入して以来「ねん金スマホポーチ」のヘビーユーザー。取材や撮影時はもちろん、きもの姿のときにしっくりくる、使えるポーチなんです。

ねん金スマホポーチ

愛用のポーチを自分で織れる??とテンションマックス。
あ、いえ、自分で織るのは3~4㎝くらいで(集中力の限界)、あとは仕上げて送ってくださるシステムです。自分が織るポイント部分とボディの色、紐を選べます。組み合わせを考えているひとときは女子度マックスで盛り上がりますねー。

「スマホポーチ」のデザインは、「足袋入れ」の形

「スマホポーチ」のデザインは「足袋入れ」の形をしていて、留め具はコハゼ。内部にスリットポケットつき。手織り体験つき工房見学ツアーはおひとり8800円、日月以外の13:30~15:30予約制。

最初に、西陣織の帯ができるまでの工程についてレクチャーを受けます。
そのなかで桝屋髙尾オリジナルねん金糸について詳しく解説していただきました。

西陣織の帯ができるまでの工程についてレクチャー

ときは1979年、朱子さんの父、髙尾弘さんが徳川美術館から「黄金のねん金袱紗」の再現を依頼されます。500年以上も前の袱紗は劣化損傷が激しく、復元研究には大変苦労されたそうです。

「黄金のねん金袱紗は糸の長さがバラバラで、一度織られた織物をほどいてもう一度織られたものとしか考えられませんでした。まさに500年前のSDGsですよ」

と朱子さん。モノやコトの再生に使命感を感じたことが金閣寺サロンをつくったきっかけになっているそうですが、この復元研究をもとに1984年に「彩ねん金糸」を創作、その糸で織られた帯、ねん金綴錦が桝屋髙尾を代表する作品になりました。

鮮やかなブルーやグリーンの彩ねん金糸アップ

鮮やかなブルーやグリーンにダイヤモンドダストをふりまいたような高貴な輝き。
織物に仕上がったとき、品をたたえた優しい光になるその秘密は、真綿。そう「彩ねん金糸」の芯糸は手紬の真綿なのです。

鮮やかなブルーやグリーンの彩ねん金糸

ふんわりとした真綿糸に巻かれた金糸は色の見え方が不規則になり、金属の硬質感とは違った優美な輝きを放つのです。

ストールを織っている機の糸を虫メガネで見てみると…

光る糸の秘密を探る

真綿糸に金糸が巻かれている、ねん金糸、見えますよね!(そして私はこの後の体験で、彩ねん金糸の扱いにくさを実感することになります。)

虫メガネで見るねん金糸

一筋縄ではいかぬ、手機織り機体験

ひとつひとつ感動しながら工房を見学し、つぎはいよいよ手機織り機の体験です。

先ほど選んだ色の糸が用意されていて、熟練の職人さんから手ほどきを受けながら地道に織っていきます。

手機織り機の体験

仕事柄いろいろな産地で機にのらせていただき経験はある私でしたが、帯地の機はある程度力が必要な上に、一筋縄ではいかぬ、ねん金糸の扱いに四苦八苦。たった4㎝ほど織るのに20分くらい要しました。

私の集中力はそのくらいが限界かも。あとはお任せして出来上がりを待つことにいたします。

あー楽しみ!

祭見物や観光地散策だけではなく奥深い京都の旅。ぜひみなさんもいかがですか?

携帯ポーチ

撮影/スタジオヒサフジ

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する