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桜花祭で織姫 「#京都ガチ勢、大西里枝さん家の一年」vol.4

桜花祭で織姫 「#京都ガチ勢、大西さん家の一年」vol.4

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扇子製造卸を営む大西常商店の4代目、大西里枝さん。家業に新風を吹き込む若き女将がつぶやく、ガチ勢な京都暮らしの本音炸裂ツイートが、いま注目を集めています。2023年社長となる彼女が母から受け継いでいく「大西さん家の季節行事」に密着する一年。

2023.03.03

よみもの

京雛と引千切(ひちぎり) 「#京都ガチ勢、大西さん家の一年」vol.3

「桜花祭」で織姫に変身!

平野神社までやってきた。

毎年4月10日は「桜花祭」の日。花山天皇陵への参拝を終え、神幸列発輿祭が斎行されると、午後1時から200名ほどの時代行列が出発し、およそ2時間半かけて約6kmの氏子地域を巡行する。

その列の中に、我らが里枝さんがいた。

織姫役の里枝さん

桜花祭の起源は、花山天皇が後胤(こういん)繁栄を祈るために平野神社へ行幸され、臨時で行われた勅祭といわれている。

祭祀のようす1
祭祀のようす2

直衣(のうし)姿の公達、神輿を担ぐ水干(すいかん)、馬に乗る武装した士に赤と緑の鬼。曲水列に並ぶ壺装束や、奥女中や侍女たちといったさまざまな時代の衣装をまとった人々が、支度を終えて境内に姿を現したのが正午すぎ。神幸列発輿祭のため本殿前に集合する。

祭目当ての参拝者や偶然居合わせた観光客に取り囲まれ、参列者たちは記念撮影に引っ張りだこだ。美しい織姫に扮した里枝さんも、次から次へとカメラに向かってスマイル連発。

里枝さんたち女性参列者は朝8時に集合し、1時間半から2時間かけて化粧と着付けを施される。控室から出てきた里枝さんを捕まえて感想を聞けば、

「ヘアメイク、戦場でした!」

と食い気味の返答。仕上がりを見れば、その様子は推して知るべし。

織姫役の里枝さん

織姫役の里枝さんは、天平時代の礼服にて

織姫の衣装である礼服(らいふく)は、天平時代のもの。

「軽くて帯がなくて。すごくラクです!絶対この時代に戻した方がいい(笑)」

と、着心地を語る里枝さん。

一般的に天平時代は、平城京遷都から長岡京遷都までを指し、政治的区分でいうと奈良時代にあたる。

当時、流行の最先端だった唐の影響を色濃く受け、鎮護国家の思想から仏教的要素が大きいのも特徴だ。正倉院宝物が天平文化をいまに伝える最たるものだろう。

奈良時代のメイクは、白・赤・黒の3色。とくに赤色は大事で、頬や耳たぶに紅を差し、血色を良く見せる化粧が主流だったという。

花の模様のメイクが印象的

最大のポイントは、額中央に碧色で描かれた花子(かし)・花鈿(かでん)と呼ばれる花や4点の模様。また、口元に靨鈿(ようでん)というエクボのようなポイントメイクも。

今回は、里枝さんの夫 裕太さん(当コラム初登場!)も行列に参加。

里枝さんのご主人

役回りは、勇み肌な駕籠舁き(かごかき)。彦星役がなかったのは甚だ残念だが、尻っぱりょりもお似合いだ。男前のおみ足を拝見できて眼福であった。

行列

午後1時すぎ、いよいよ行列が中門から登場

行列2

表参道を列が進んでいく

行列の鬼

列の前方で鬼たちが厄払い

行列の壺装束

垂衣(たれぎぬ)をつけた市女笠が特徴の壺装束は、中世の女性の旅装。
袿(うちぎ)を引きずらないよう身の丈に合わせて着て紐で結んでいる

行列の武士

馬上には鎧兜で武装した猛々しい武士の姿

桜咲く社で花を愛でるとき

平野神社

そもそも、平野神社は桜が有名だ。

平安時代から植樹が行われ、現在約60種400本もの桜が咲き誇る。「桜花祭」が開催される4月10日は、花山天皇が桜をお手植えされた日。当時から、桜は生命力を高める象徴として人々に愛されてきたのだ。

原木や珍種も多く、なかでも3月中旬から花開く『魁(さきがけ)』は平野神社発祥の枝垂れ桜で、この桜が咲くと京都の花見が始まるといわれている。

魁(さきがけ)

3月中旬から花開く『魁(さきがけ)』

江戸時代には庶民にも夜桜を開放し、「平野の夜桜」が都を代表する花見の名所になったほど。

今年は桜の開花が早く、魁はすっかり葉桜に。

とはいえ、平野神社の代表的な名桜『平野妹背(ひらのいもせ)』は祭の日が盛り。

平野妹背桜

平野神社の代表的な名桜『平野妹背(ひらのいもせ)』

葉より少し淡い黄緑色の花弁をつける『御衣黄(ぎょいこう)』や、遅がけの八重桜『平野突羽根(ひらのつくばね)』など、ひと月半にわたる長い期間、多様な桜を愛でることができるのも魅力だ。

ちなみに、里枝さんが考案した「かざ」には、八重桜の香も。

かざ

「冬を抜けて繁忙期に近づいていく春はワクワク感があって、桜のふふむ時期が一番すきです」

と里枝さん。桜の食べ物や商品など、桜フレーバーがとにかく好きでたまらないのだと言う。

※ふふむ……「含む」の古語。蕾がふくらむこと。

桜関連のアイテムがたくさん出る季節はそわそわする彼女が、「香りの商品を出すなら、絶対に桜は外せない!」と作ったもので、上品な香りのなかに少し甘さがあり、リピーターも多い。

参列者の貴族らの頭には、生花の桜が

参列者の貴族らの頭には、生花の桜が

絵馬

近頃は『King&Prince』平野紫耀さんファンの間で“聖地”として話題を集めている平野神社。
キンプリファンの絵馬が所狭しと奉納されている

桜花祭オフショット満載なTwitter

夕方、無事に歩き終えた里枝さんの感想は、

「死ぬかと思いました!!!!」

然もありなん……ビフォーアフターは里枝さんのTwitterでご確認あれ。

今回、支度中はメディア関係者も立ち入り不可だったため、里枝さんやご友人たちに撮影をお願いした。

着付け前、大興奮で桜模様の畳みの縁や几帳の朽木紋を撮ってはツイートしていた里枝さん。好奇心旺盛な彼女らしい一コマも、Twitterにて。

淡い色柄がはんなりとした春らしい不断着(普段着)の写真をはじめ、カメラで追い切れなかったカットもどうぞお愉しみください。

朝8時、ノーメイクでの平野神社イン

朝8時、ノーメイクにて平野神社イン

本日のお道具類

ヘアセットに用いるグッズ類

次回は、里枝さんのTwitterを世に知らしめた「菖蒲打ち」。

乞うご期待!

撮影/スタジオヒサフジ
協力/平野神社

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