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台湾で冬と呼ばれる秋の訪れ 「台湾きものスタイル考」vol.11

台湾で冬と呼ばれる秋の訪れ 「台湾きものスタイル考」vol.11

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台湾の日中は23度前後、朝晩は19度くらいときものでも過ごしやすい季節となりました。本格的な寒さはまだ少し先。 暖房のない10度前後の台湾は湿度も高いせいで底冷えしますが、そんな期間は2週間と続かないので、今はその寒さも待ち遠しいです。

スタイリングでより着物を愉しむ

着物はほぼ直線長方形の長着に帯。洋服のように肌の出る面積やシルエットが変わるということはなく、着ただけで個性が際立つものではありません。それでも、選ぶ着物と帯の好みや傾向であったり、半衿の出し方、衣紋の抜き加減ひとつでも、その人なりの着こなしとなり個性があらわれます。

ぐっと気温の下がった10月半ばのある日、台湾では「停班停課最新通知」より「冬に入りました」とお知らせがありました。

停班停課とは、台風や大雨などの被害を最小限にするため、気象状況により事前に会社や学校にするお知らせのこと。停班は通勤や営業の禁止、停課は授業の禁止を意味しています。
それほど台風の影響を受ける国なのだということが分かりますね。

台風や強風だけでなく、「急に気温が下がりますよ」「冬になりましたよ」というお知らせがあるのは、台湾生活3年目となる今年、はじめて気付きました。

とはいえ、日中は23度前後、朝晩は19度くらいと過ごしやすく、日本で生まれ育った体感では爽やかな「秋が来た」といった印象です。

でも家やオフィスに暖房機具がないことが普通という台湾では、連日30度を超えていた日々から急に、10度以上気温が下がると、寒さを強く感じる人も多いのでしょう。
この時期から、早々と分厚い防寒着を着るかたがたが目立ってきます。

冬といわれる秋の到来

冬といわれる、秋の到来

毎年、「そこまで寒くないでしょう?!」と横目で見てきたのですが、まだあまり寒くないのに、しっかりと防寒着を着込みはじめるこの南国ならではの光景は、なんと私自身にも見られる現象だったことにハタと気付きました。

袷のきものを帯付きで着たい気持ちがはやります。

この時期のきものは、単衣のきものにちょっとした羽織ものくらいで、気温的には大丈夫なのです。

でも袷のきものを帯付き(何も羽織らず帯の見える姿)で着たい気持ちがはやり、すでに11月に入ったのだからと、実際の体感よりも前倒しにして、南国で袷のきものが着れる短い期間を存分に楽しもうとしている自分がいるのです。

つい先日も日本から届いた半衿やきものを早速身につけたくて、こともあろうに、特にほっこりと暖かい結城紬を着て出かけ、暑くて汗をかいてしまいました。

気温が下がる短い「冬」に、なかなか出番のない冬服を、少しでも早く長く着たいという南国のかたの思いと全く同じでした。

それに気づいてからは、ダウン姿と半袖姿の混在する街中や電車内で、特に厚着をしているかたに、親近感を覚えるようになりました。

本格的な寒さはまだ少し先。

暖房のない10度前後の台湾は湿度も高いせいで底冷えしますが、そんな期間は2週間と続かないので、今はその寒さも待ち遠しいです。

寒さも待ち遠しいです。

7ヶ月ぶりの再会

5月に台湾のコロナの市中感染が急激に増えてから、再び国内感染を封じ込め、昨年のようにのびのびと日常生活を送れるようになるまで、半年以上。
不要不急の外出や、友人と会ったり外食したりも避けてきました。

先日再会した台湾人の友人とは、実に7ヶ月ぶりの対面となりました。
ついたてもない状態で、おしゃべりができる機会は本当に久しぶりで感無量でした。

当たり前だと思っていたことがある日突然奪われてしまって、でもひとりひとりの行動制限と政府の真摯な対応、政策のおかげで、もとに戻りつつあります。
あらためて感謝したいと思います。

友人との7ヶ月ぶりの再会。

すでに2年間日本に帰っていない私と、日本贔屓な彼女との再会の場所は、「ホテルメトロポリタン プレミア 台北」。今年8月にオープンしたばかり、JR東日本グループ海外初出店となる”ラグジュアリー”を謳ったホテルでのことでした。

台湾名は「JR東日本大飯店 台北」。「JR東日本」の名がそのまま使われているのが意図的なのかどうかわかりませんが、不思議な気がしたのが正直なところです。

”ラグジュアリー”というよりは、すっきり機能的なデザインと吹き抜けのロビーから見上げる客室が印象的なホテルは、日本からたくさんのお客様が訪れることを見越してのオープンだったことが伺われます。

スタッフは日本語も堪能で、私には日本語で、友人の陳さんには中国語での対応をしてくださいました。

思えば、彼女と初めて出逢った時も、お互いきものを着ていました。そのあとの数々の楽しい思い出も、きもの抜きでは語れません。

「再会はきもので」と約束をしていたので、自分以外のきものを着る人と過ごす時間を心待ちにしていました。

私は、外出時に1人でもきものを着ていることが多いのですが、やはり仲間がいるというのは何とも華やいだ気分になるものだなぁ、と感慨深くその着姿を愛でるのでした。

「再会はきもので」と約束をしていました。

そうそう彼女は和服だけでなく、茶道、日舞にも精通していて、私より和のことに詳しいのです。
日本でも有名な眼鏡屋さんの台湾支店WEBサイトにも、茶道指導として出演されていました。

炉開きのきもの

11月。
茶道の世界では、夏の間閉じていた炉を開く「炉開き」が行われます。また無事に1年がはじまる、感謝とお祝いの節目です。

普段着物では好きなように好きな着物を。
…ですが、茶道には決まりがあります。

  • 半衿と足袋は白
  • 過度に華美なものは避ける
  • 先生やお茶会に招く亭主、一番格の高い正客より格上の着物にならないよう配慮する
  • 茶碗を傷つける恐れのある指輪や落ちそうなかんざしは外す

など。

それぞれのお教室(社中)や先生の方針・茶事や茶会により少しずつルールが違いますので、主催のかたや先生に伺うことをおすすめします。

とはいえ、今はお稽古時に着るきものは自由というお教室がほとんどではないでしょうか。

今年の開炉茶会、私は、社中の会に加えて、前述の友人・陳さんが薄茶席の亭主を務める茶会にも先生の許可を得て参加する予定です。

炉開き

台湾ではじめた茶道も3度目の「炉開き」ですが、コロナ禍中でお稽古もお休みすることが多く、物覚えの悪さも相まって、いつまでも初心者のままですので不安だらけです。

1日、先輩の胸を借りるつもりでしっかり勉強させていただこうと思っています。

楽しみなのは普段着るきものとは違うあらたまったきものが纏えること。

候補としては、

  • 一つ紋色無地+袋帯
  • 一つ紋江戸小紋+袋帯
  • 訪問着+袋帯

あたりでしょうか。

あらたまったきものが纏える楽しみ。
先生が紋付でないようなら、この中から選びます。

先生が紋付でないようなら

  • 紋のない色無地+袋帯
  • 紋のない江戸小紋+袋帯
  • 紋のない色無地+名古屋帯
  • 紋のない江戸小紋+名古屋帯
  • 小紋+名古屋帯

の中から選びます。

紬などの織の着物は避けたほうが良いでしょう。

紬など織り生地の着物は、染めの柄の訪問着だとしても避けたほうが良いと言われています。

柔らかもののほうが身体の動きに沿うので、所作の邪魔にならないのと、紬はもともとが普段着るものだったという歴史からのよう。

紬のきものにハマり中の私ですが、紬は普段のお出かけに存分に着ていますので、なかなか出番のない家紋のついたきものを着る機会の特別感を楽しもうと思っています。

特別感を楽しもうと思っています。

着付け講座の再開

コロナだけでなく、5月から9月までは猛暑のため、しばらく休止していた台北での着付けの講座を再開しました。

カニ着物さんのオーナー張さん。

着物レンタルとスペースでお世話になっているのは、都心部からMRT(地下鉄)で小一時間ほど、温泉地で有名な新北投にある「カニ着物」さん。

オーナーは台湾人の張さんです。

彼女は、高校生の時にはじめた剣道から日本文化に興味を持ったといいます。
そして着付けができないままに、ゆかたを購入したのがきものはじめ。当時は着ることなく、眺めては満足していたそうです。

その後大学生の時に袴と振袖の購入にも至り、いよいよ着付けを習うことになったのだそう。彼女からはひしひしと、きものに対する憧れや愛情が伝わってきます。

今でもずっと着付けの勉強をし続けている張さんですが、2016年には出張で着付けの仕事をスタート。

2018年10月からご自身のお店をオープンし、きものやゆかたのレンタルと着付けのお仕事をされています。

今もずっと着付けの勉強をしている張さん。
日本文化の浸透度合いがうかがえます。

台湾でのニーズとしては、家族での浴衣体験や、友人同士、また子供の着物姿の撮影などがあるそうです。

ちょうど先日、七五三さんの撮影をされたお子様もいらっしゃったとのこと。

タイにも着付け教室やレンタルはありましたが、ユーザーはほぼ日本人、現地駐在の方のご家族だったように記憶しています。

台湾人が台湾人相手に着物のビジネスが成り立っているところに、日本文化の浸透度合いがうかがえます。

こちらのスタジオもある新北投は、日本統治時代の温泉施設が発見・リニューアルされた北投温泉博物館や、本格的日本建築の北投文物館また北投図書館など、趣のある建築物があり、きもの姿もよく映えます。

新北投はきもの姿もよく映えます。
北投温泉博物館

実は私がお能を至近距離で観たのも三味線の演奏を聴いたのも、日本ではなく、台湾のこの新北投にある北投文物館での機会が初でした。

「偽出国」というイベントが大人気です。

台湾の文化はもとより、漢民族や原住民の文化や民俗を紹介・展示したり、茶道教室や和菓子体験など日本文化の紹介や伝承もしている、台北市政府認定の古跡なのです。

日本との行き来がままならない中、人気を博しているのが、「偽出国」という、日本に行った気になる場所やイベント。安心して本当の出入国が自由にできるようになったら、きっと多くの台湾のかたが日本へ殺到しそうですね。

是非台湾にもいらしてくださいね。

旅の荷物を減らし、「カニ着物」さんできものレンタルをされたら、気軽に台北の街をきもの姿で散策できますよ。

是非台湾にもいらしてくださいね。

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