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『オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠』三菱一号館美術館  「きものでミュージアム」vol.48

『オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠』三菱一号館美術館 「きものでミュージアム」vol.48

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『ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠』が三菱一号館美術館で開催中!オランジュリー美術館とオルセー美術館の名作が集結し、印象派の柔らかな光とポスト印象派の構築的な筆致が響き合います。

2025.05.19

よみもの

特別展『蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児』東京国立博物館 平成館 「きものでミュージアム」vol.47

ルノワール×セザンヌ、芸術の進化を辿る

今回は、三菱一号館美術館で開催中の『オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。画像写真の無断転載を禁じます。
左:ルノワール、右:セザンヌ

左:ルノワール、右:セザンヌ

ピエール=オーギュスト・ルノワール (1841-1919)とポール・セザンヌ(1839-1906)の作品に焦点を当てた、オランジュリー美術館企画、オルセー美術館協力の世界巡回展がミラノ、スイス、香港を経て日本にやってきました。

展示風景

左:ポール・セザンヌ 《青い花瓶》 1889-1890年 オルセー美術館、パリ、右:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《花瓶の花》 1898年 オランジュリー美術館、パリ

印象派のルノワールと、ポスト印象派のセザンヌ。

ともに1874年の第1回印象派展に参加し、共通する表現手法を持ちながら、それぞれ異なるアプローチで絵画の近代化に貢献しました。

柔らかな光を追求したルノワール、構築的な造形美を確立したセザンヌ。

本展では、オランジュリー美術館とオルセー美術館の所蔵品を中心に、2人の交流と、近代絵画の発展に寄与した軌跡をたどります。

展示風景

ピカソなど後世の芸術家にも影響を与えた彼らの作品を通じて、モダンアートの形成における重要な役割を探ります。

作品を並べて鑑賞することで、新たな視点や発見を得られる機会となるでしょう。2人による肖像画、静物画、風景画などをじっくりと楽しむことができます。

展示風景

左:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ピアノの前の少女たち》 1892年頃 オランジュリー美術館、パリ、右:ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノの前のイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル》 1897年頃 オランジュリー美術館、パリ

三菱一号館美術館は、明治時代の洋風建築を忠実に復元した赤レンガ造りの美術館。ジョサイア・コンドルの設計によるクラシカルな空間は、印象派の柔らかな光とポスト印象派の構築美を見事に引き立てています。

ルノワールとセザンヌが並ぶ展示室

ルノワールとセザンヌは1863年に印象派の画家たちを通じて知り合ったとされ、生涯にわたって良好な関係を築きました。1874年の第1回印象派展にともに参加しましたが、その後はそれぞれ異なる道を歩んでいます。

展示風景

印象派の技法を活かしながらも1880年代以降は古典的な描写へ回帰し、より構築的で滑らかな筆致を追求したルノワール。

一方、セザンヌは、印象派の影響を受けつつも、幾何学的な構成を重視する独自の絵画様式を確立し、「近代絵画の父」とも呼ばれるようになりました。

印象派の枠を超えて、それぞれの芸術を発展させた2人の関係は、単なる同時代の画家以上のものだったと言えます。

展示室には2人の作品が並びます。

ルノワール 《花瓶の花》

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《花瓶の花》 1898年 オランジュリー美術館、パリ

ルノワールの《花瓶の花》は柔らい色彩と軽やかな筆致によって、生き生きとした花々の雰囲気を伝えています。

セザンヌ 《青い花瓶》

ポール・セザンヌ 《青い花瓶》 1889-1890年 オルセー美術館、パリ

一方、セザンヌの《青い花瓶》は静寂が際立ち、落ち着いた色調と計算された構図がみごとです。

ルノワールは光と色の調和を重視し、セザンヌは形態の探究を深めることで、それぞれ異なる視点から静物画を発展させました。並べて鑑賞すると、表現の違いが鮮やかに浮かび上がります。

ルノワールの風景画

左:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《アルジェリア風景、ファム・ソヴァージュ(野生の女)峡谷》 1881年 オルセー美術館、パリ、右:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《イギリス種の梨の木》 1873年頃 オルセー美術館、パリ

ルノワールの風景画2点は、印象派らしい光と色彩の変化を捉えた作品です。柔らかな筆致が活かされ、自然の温かみが感じられます。

セザンヌ 《赤い岩》

ポール・セザンヌ 《赤い岩》 1895-1900年 オランジュリー美術館、パリ

セザンヌの《赤い岩》は、ルノワールとは対照的に、岩の質感や空間の奥行きを強調することで、自然の力強さを表現しています。岩や木々の形を単純化しながらも、色の重なりで深みを加え、安定感と構成の緻密さを感じる作品です。

2人の風景画はほかにも展示されていますのでじっくりと味わってみてください。

裸婦を描いた作品では、さらに顕著に2人の作風の違いが味わえて興味深く感じます。

展示風景

左:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《風景の中の裸婦》 1883年 オランジュリー美術館、パリ、右:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《長い髪の浴女》 1895年頃 オランジュリー美術館、パリ

セザンヌの作品

左から:ポール・セザンヌ 《水浴者たち》 1899-1900年 オルセー美術館、パリ 、ポール・セザンヌ 《3人の浴女》 1874-1875年 オルセー美術館、パリ、ポール・セザンヌ 《5人の水浴する人々》 1876-1877年 オルセー美術館、パリ

ルノワールとセザンヌの名作が次々と

ルノワールの《ピアノの前の少女たち》は、初めて国からの依頼で制作された作品のうちのひとつです。この制作過程で6点のほぼ同じサイズの作品が生まれました。

ルノワール 《ピアノの前の少女たち》

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ピアノの前の少女たち》 1892年頃 オランジュリー美術館、パリ

現在オルセー美術館に収蔵されている作品が最終的に選ばれ、国に購入されました。背景などはオルセー版のほうが細かく描きこまれています。

個人的には、今回出展されるオランジュリー美術館の作品のほうが寄り添う女性の表情や室内の雰囲気が柔らかく親密な空気感があり、魅力的に感じます。

セザンヌの《セザンヌ夫人の肖像》は、静かな色調と安定した構成がその魅力。形を慎重に描きながら、落ち着いた雰囲気を生み出しています。

セザンヌ 《セザンヌ夫人の肖像》

ポール・セザンヌ 《セザンヌ夫人の肖像》 1885-1895年 オランジュリー美術館、パリ

そして、2人がそれぞれ自分の息子を描いた作品も展示されています。

ルノワール 《ピエロ姿のクロード・ルノワール》

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ピエロ姿のクロード・ルノワール》 1909年 オランジュリー美術館、パリ

ルノワールは、《ピエロ姿のクロード・ルノワール》と《遊ぶクロード・ルノワール》。

展示風景

左:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《遊ぶクロード・ルノワール》 1905年頃 オランジュリー美術館、パリ

セザンヌは、 《画家の息子の肖像》。

セザンヌ 《画家の息子の肖像》

ポール・セザンヌ 《画家の息子の肖像》 1880年頃 オランジュリー美術館、パリ

ルノワールは子どもの無邪気さをうまく表現し、セザンヌは計算された構図と落ち着いた色調で、モデルの存在感を強調。

それぞれ、家族への愛情を感じる作品ですね。

そして、ルノワールとセザンヌの静物画が並び、それぞれの魅力を楽しめる展示も。柔らかな筆致と構築的な描写の対比が見どころです。

ルノワール 《桟敷席の花束》

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《桟敷席の花束》 1880年頃 オランジュリー美術館、パリ

展示風景

ルノワールとセザンヌの作品が並ぶ展示風景

ピカソへの影響

残念ながら撮影禁止ですが……

最後の展示室では、ルノワールとセザンヌそれぞれがピカソの作品と並べられています。

セザンヌ 《りんごとビスケットのある静物》 と、パブロ・ピカソ 《大きな静物画》

ルノワール 《横たわる裸婦(ガブリエル)》と、パブロ・ピカソ 《布をまとう裸婦》

セザンヌの静物画は、ピカソのキュビスムにおける構成の探究に影響を与え、物体を幾何学的に再構築する視点を育みました。

一方、ルノワールの裸婦像は、ピカソの官能的なフォルム表現に影響を与え、柔らかさと量感のある人体描写へとつながりました。

2022.11.27

よみもの

『ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』 国立西洋美術館 「きものでミュージアム」vol.16

こうして作品が並ぶとその影響が手に取るようにわかります。ぜひ実際に展示室でご覧ください。

本展は画商のポール・ギヨームが収集し、後にオランジュリー美術館の礎となった作品が多く出展されています。

その関係で三菱一号館美術館所蔵のオディロン・ルドンの作品も展示されていました。

オディロン・ルドン 《グラン・ブーケ》

オディロン・ルドン 《グラン・ブーケ》 1901年 パステル、カンヴァス 248.3×162.9cm 三菱一号館美術館

ルノワールの展示風景

左:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《桟敷席の花束》 1880年頃 オランジュリー美術館、パリ、右:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《バラ》 1890年頃 オルセー美術館、パリ

ルノワールの作品がもたらす「親密な温かみ」と、セザンヌの「知的な構築性」が対照的に際立つ本展。

並べて見ることで、時代の変化が表現に与えた影響が鮮やかに浮かび上がってきました。この貴重な機会をお見逃しなく!

展覧会の余韻とともに

ミュージアムカフェ・バー 『Café 1894』

ミュージアムカフェ・バー「Café 1894」

ミュージアムカフェ・バー「Café 1894」明治時代の銀行営業室を忠実に再現

タイアップランチ「南仏への旅路」

タイアップランチ「南仏への旅路」2,800円(税込)

三菱一号館美術館併設の『Café 1894』は、明治時代の銀行営業室を忠実に再現したレトロ空間で、クラシックな趣きと2層吹き抜けの高い天井が人気。

プレミュージアム、アフターミュージアムに、優雅なティータイムやお食事はいかがですか?

会期中限定で、展覧会にちなんだメニューを楽しめます。展覧会の余韻に包まれながら、歴史ある空間で贅沢なひとときを。

タイアップデザート

タイアップデザート「ルノワール《桃》 桃と紅茶アイスのパリブレスト」 1,450円(税込)

ルノワール 《桃》

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《桃》 1881年 オランジュリー美術館、パリ

タイアップミニデザート

タイアップミニデザート「セザンヌのりんご クラフティ フロマージュクリーム添え」 500円(税込)

《わらひもを巻いた壺、砂糖壺とりんご》

ポール・セザンヌ 《わらひもを巻いた壺、砂糖壺とりんご》 1890-1894年 オランジュリー美術館、パリ

ミュージアムショップ 『Store 1894』

展覧会限定グッズも見逃せない!思い出をお持ち帰りください。

ミュージアムショップ
ミュージアムショップ

ロクシタンが香りの演出

南仏にゆかりのあるルノワールとセザンヌの展覧会を、南仏プロヴァンス生まれの「ロクシタン」フレグランスシリーズが香りで演出します。ミュージアムショップにはロクシタン製品も並びます。

ロクシタンが香りの演出

ロクシタンが香りの演出

写真撮影が可能

本展では、一部の作品を除き写真撮影が可能です。会場のルールを守りながら、ぜひお気に入りの作品を記録してください。

・フラッシュ撮影、動画の撮影は禁止です。三脚、自撮り棒は使用できません。
・撮影禁止マークのある作品は撮影できません。

この日の装い

本展では、ルノワールは「ピンク」、セザンヌは「ブルー」をイメージカラーとして、ポスターや作品キャプションなど色彩を活かした視覚的な演出がされています。

この日の装い1

メインビジュアルのカラーに合わせて、緑がかったブルー系の江戸小紋(御召十)に、フランスつながりで『リヨンの花飾り』と銘が付いた貴久樹の帯を合わせ、ピンクの小物を差し色に。

帯締めは道明の笹浪組で、ピンクとブルーのグラデーションのもの。

この日の装い 帯回り
この日の装い
この日の装い

本展ではなんと、カラーコーデ割引「Pink / Blue」を実施中!

ピンクかブルーの服装で観覧料が100円割引に、さらに、ピンクとブルーのコーディネートで200円割引になります(チケット窓口での購入のみ適用。他の割引との併用不可)。

みなさんもピンクとブルーを取り入れてお出かけしてみませんか?

2023.10.06

よみもの

ヒンディスタン・ジャーニー ジャイプール編 「忘れえぬこと その3」貴久樹・糸川千尋

2024.06.07

まなぶ

有職組紐 道明(東京都台東区上野)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.6

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

ルノワールとセザンヌポスター画像

オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠

三菱一号館美術館
https://mimt.jp/ex/renoir-cezanne/

日時:2025年5月29日(木)~9月7日(日) 10:00-18:00(祝日を除く金曜日と第2水曜日、9月1日~9月7日は20時まで)、【夏の特別夜間開館】8月の毎週土曜日も20時まで開館します。※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日 ※但し、祝日の場合、トークフリーデー(6月30日、7月28日、8月25日]、9月1日は開館)

※本展ではリュックサックやA4サイズを超えるお手荷物は展示室内に持ち込めません。無料のロッカーをご利用ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

上村松園と麗しき女性たちポスター

【特別展】生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち

山種美術館
https://www.yamatane-museum.jp/

日時:2025年5月17日(土)~7月27日(日)
10:00~17:00 (入館は閉館の30分前まで)

休館日:月曜日(7/21(月・祝)は開館、7/22(火)は休館)

※きもの特典:きものでご来館のお客様は、一般200円、大学生·高校生100円引きの料金となります。
※複数の割引・特典の併用はできません。

五大浮世絵師展ポスター

五大浮世絵師展―歌麿 写楽 北斎 広重 国芳

上野の森美術館
https://www.5ukiyoeshi.jp/

日時:2025年5月27日(火)~ 7月6日(日) 10:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
※休館日なし 

◆ 読者プレゼント ◆

ルノワールとセザンヌポスター画像

さて、恒例の招待券プレゼント!

今回は『ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠』三菱一号館美術館の招待券を2組4名の方にプレゼント!

ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoto__

◆X
https://x.com/kimonoto___

※応募期間:2025年6月22日(月)まで

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