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パリの老舗百貨店『サマリテーヌ』 ~ポンヌフ周辺~ 「きものでパリ navigated by MariMaeda」vol.2

パリの老舗百貨店『サマリテーヌ』 ~ポンヌフ周辺~ 「きものでパリ navigated by MariMaeda」vol.2

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リアルなパリの今をお届けする新連載は、ポンヌフ界隈をご紹介中。ルイ・ヴィトンの『LV DREAM』に続き今回は、16年の改修工事を経て2021年に営業再開したパリの老舗百貨店『サマリテーヌ』へ。

2023.04.05

よみもの

話題の『LV DREAM』へ ~ポンヌフ周辺~ 「きものでパリ navigated by MariMaeda」vol.1

ポンヌフより

ポンヌフからの眺め

ポンヌフからの眺めは、格別のもの

みなさまご機嫌麗しくお過ごしでしょうか。一年で最も過ごしやすい季節となりましたね。レジャーや外出、また着物をお召しになられてのおでかけも増えてきたのではないでしょうか。

今回も、ポンヌフ周辺をご紹介いたします。

サマリテーヌデパート

ポンヌフ界隈を象徴するサマリテーヌデパート

現在この界隈は、前回訪ねましたルイ・ヴィトンのエキシビジョン『LV DREAM』をはじめ、かの安藤忠雄氏が旧商品取引所を改修設計した『ブルス・ド・コメルス美術館』、そして16年にもわたる改修工事を経て営業再開したパリの老舗百貨店『サマリテーヌ』など、人々を魅了するホットな場所となっています。

パリ旅行の際には、ぜひお立ち寄り下さいませ。

時を超えてよみがえったサマリテーヌ

セーヌ川に面したサマリテーヌデパート。

セーヌ川に面したサマリテーヌデパート

サマリテーヌデパートの創業者は、ポンヌフの露天商であったことで有名です。

創業者エルネスト・コニャック(Ernest Cognacq)は、ポンヌフの露店でネクタイを販売していました。

その後、ボン・マルシェの店員をしていたマリー・ルイーズ・ジェイ(Marie-Louise Jaÿ)と結婚。彼女の支援もあり、ポンヌフ通りとモネー通りの角に店舗を構えます。1870年、わずか48㎡の店舗からのスタートでした。

ゼロから出発した夫妻は52年間ともに働き、晩年も表舞台に立ったそう。事業と慈善活動、美術品の収集家としても知られています。

『サマリテーヌ』の名はポンヌフにあった「セーヌの水をくみ上げるポンプ」に由来します。

そこには聖書からテーマをとったキリストとサマリア人女性(ラ・サマリテーヌ)の像があり、創業者コニャックはこの場所に店を構えるにあたりそれを店名に選んだと言われています。

サマリテーヌ

ファサードの黄色い部分は、ヴォルヴィックの溶岩にエマイユ(七宝)を施したもの

改装前のサマリテーヌにも時々足を運んだものですが、当時のサマリテーヌは”古いデパート”といった印象でさびれていました。

”新装サマリテーヌ”では、3つの時代の建築を楽しむことができます。

・フランツ・ジュルダンのアール・ヌーヴォー建築(1910年に落成)
・アンリ・ソヴァージュによるアール・デコの建物(セーヌ川に面した建物・1928年)
・日本の設計事務所SANAAによるガラス張りのファサード(リヴォリ通りに面した建物・今回改築された)

自然光が入る天井の様子。

自然光が入る最上階の天井の様子。1000㎡もの巨大なガラス張りの天井の下に広がるのはフロアーを区切る欄干やバルコニー。そこには黄金色のマロニエの葉があしらわれ、渦巻き模様の装飾が

七宝のパネル

溶岩石の板に七宝を施したパネルは、黄色をベースとした鮮やかな色合い。花のモチーフが装飾されています。

こちらは、20世紀の建築家フランツ・ジュルダンによるアール・ヌーヴォー建築。繊細なモチーフは丁寧に修復され、色彩が蘇りました。

修復のようす

修復のようすを捉えたパネル

修復にあたったのは、七宝細工職人のマリア・ダ・コスタ(Maria Da Costa)。彼女の技術を総動員して、1枚のパネルを作るのに15日間を費やして仕上げたそう。

修復作業。

また金具職人のエドゥアール・シェンク(EdouardSchenck)は、全長600メートルに及ぶアール・ヌーヴォー様式の金具細工の修復に携わりました。

葉脈の金箔の張り替えなど、職人技が見事です。

マロニエの葉

黄金色のマロニエの葉

ひとつひとつ慎重に、そして丁寧に修復され、時代を超えて蘇った『サマリテーヌ』。

2005年に閉店して以来16年の工事を経て、2021年のコロナ禍中に新装開店いたしました。

中央が吹き抜けになっています。
アミューズパークのような感じ。

新たな建物面積は7万㎡、百貨店部分は2万㎡で、5つ星の高級ホテル、オフィス、住居、さらには保育所も併設。

吹き抜けの中央からは、下のフロアを一望できます。各フロアはゆったりとしたディスプレイで、まるでアミューズメントパークのよう。

着物撮影がマッチングできる空間スポット。

淡いグレーの手すりには金色のマロニエの葉があしらわれて

シャンパンのディスプレイ

吹き抜け近くのスペースには、シャンパーニュ『ルイナール』のディスプレイ

老舗の香水は、サマリテーヌの歴史と共に

16世紀からの老舗の香水。サマリテーヌの歴史とともに歩んできた黒いボトルが素敵

エスカレーターで上がりつつ振り返りますと…

なんとみなさまが携帯を向けておられて。思わず、とっさにポージングいたしました。

撮影中

日本の設計事務所SANAAによる建築

新たな建物

新たなサマリテーヌの建築家を選ぶにあたっては、かつてアール・ヌーヴォー様式を取り入れた時のように、新時代を感じさせる、大胆かつチャレンジ精神に満ちた取り組みが求められました。

リヴォリ通りに面したこちらの建物は物議を醸すほど斬新な設計となり、それを手掛けた会社こそ、日本の設計事務所SANAAでした。フランスの歴史的な建物に西洋ではなくはるか東洋、日本の発想を起用したことにこのプロジェクトのすごさを感じます。

新たな建物に古い建物がうつりこむ

21世紀を象徴する、高度な技術とデザイン。

ウェーブを描くガラスのファサードが新旧の建物を映し出し、融合させるという粋なコンセプトの設計です。

しかし「街並みの景観にそぐわない、調和がとれていな」いことを理由に、2015年、裁判所は工事を一時中断させました。

その後紆余曲折があったものの、現在こうして水の流れのように緩やかで透明感があるモダンな建物となり、陽光を浴びながら美しい輝きを放っています。

波打つ硝子の壁

高さ25m・幅75mのガラスの大きな壁は、343枚のパーツ(1枚2.7m×3.5m)で構成。ガラスは1日に2枚までしか作れないオーダーメイド。スペインのバルセロナで加工された

こちらではストリート・カルチャーを取り込んだ若者向けの商品が販売されています。

サマリテーヌ最上階のカフェ&レストラン

コロナ禍中の再開だったこともあり、なかなか改装後のサマリテーヌを訪れることができませんでしたが、今回、改装後の空間を堪能することができました。

ドンペリニヨンのボトル。

最上階のカフェ&レストランでは、人々が和やかな雰囲気で過ごされています。

カフェ&レストラン

これからのデパートは、人々の憩いの場であることが大切ですね。

鮮やかな色彩の空間は、着物姿での撮影にもぴったりです。ぜひ足を運んでみてくださいね。

サマリテーヌ

La Samaritaine
19, rue de la Monnaie 75001 Paris,
最寄メトロ:Pont Neuf
エリア:パリ1区

サマリテーヌとルイ・ヴィトン本社前の広場

ルイ・ヴィトン本社。

こちらは、澄みきった青空の下、優雅で風格を感じるルイ・ヴィトンの本社。まるでシャトー(お城)のような佇まいですね。

食料品や大工用品を扱っていた百貨店『ラ・サマール』を、LVMH(モエ=ヘネシー・ルイ・ヴィトングループ)が改修・改築し、ルイ・ヴィトン本社として見事に変貌させた建物です。

ヴィトン本社エントランス前

ヴィトン本社エントランス前

現在は、前回ご紹介しました『LV DREAM』に訪れる方々や、巨大な草間弥生さんのオブジェを見物する人などで大変な賑わいを見せています。

2023.04.05

よみもの

話題の『LV DREAM』へ ~ポンヌフ周辺~ 「きものでパリ navigated by MariMaeda」vol.1

草間さんのオブジェ

日本が誇るアーティスト草間弥生さんの巨大なオブジェが話題に

草間さんのオブジェ02

何とも迫力のある光景

vol.1~2と、ポンヌフ界隈をご案内させていただきました。いかがでしたでしょう。

なぜか日本の伝統衣装である着物がしっくりと馴染んでしまう不思議な街パリ。次回はパリの夏景色をご紹介いたします。どうぞお楽しみに!

次回もパリの魅力溢れる名所をご案内

撮影/助友利矢子

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