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『宮崎家具』7代目 宮﨑真里子さん【YouTube連動・体験編】「元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代」vol.10

『宮崎家具』7代目 宮﨑真里子さん【YouTube連動・体験編】「元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代」vol.10

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京都の老舗家具メーカー『宮崎家具』。1856年の創業から155年の節目に建てられた「京指物資料館」に紗月さんが訪問します!7代目・宮﨑真里子さんにご案内いただき、貴重な家具とその図案を拝見しました。

2022.12.26

まなぶ

『宮崎家具』7代目 宮﨑真里子さん【YouTube連動・インタビュー編】「元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代」vol.9

京都が誇る伝統技術、京指物の資料館へ【Youtubeリンク】

次回の「紗月が聞く!」もお楽しみに

794年から約1000年に渡り、日本の都として栄えた京都。その間に育まれた独自の文化や伝統は、今も耐えることなく街の中に息づいています。そこには、いつの時代も“伝統文化の担い手”として切磋琢磨してきた人々の姿がありました。

2015年から2021年まで祇園甲部の人気芸妓として活躍した紗月さんがMCを務め、代々家業を受け継ぎ、また次の世代に引き継ぐべく奮闘されている方々に“老舗を守りつなぐお話”を伺います。

MCの紗月さんと、『宮崎家具』7代目・宮﨑真里子さん

MCの紗月さんと、『宮崎家具』7代目・宮﨑真里子さん

前回お話を伺ったのは、『宮崎家具』の代表取締役を務める宮﨑真里子さん。同社が1856年の創業以来受け継いできた、金釘を一切使わずに家具や調度品をつくる“京指物”の技術についてお聞きしました。

今回は、そんな京指物の技術により生まれた家具を展示する「京指物資料館」に紗月さんが参ります!

『京指物資料館』入り口

「京指物資料館」入り口

古くから「家具の街」として知られる夷川通り。その夷川通りと堺町通りが交わる西角に、「京指物資料館」はあります。『宮崎家具』の創業155年を記念し、2010年に建てられました。

宮﨑さんに案内していただきながら、早速館内を見学してまいりましょう。

紗月さんと宮﨑真理子さん

思わず見惚れる最高級の飾り棚とは

最初にお見せいただいたのは、表面に蒔絵を施した最高級の飾り棚。

骨組みの細さや蒔絵の螺鈿加工により優雅な雰囲気のある飾り棚

「豪華さがぐっと出てきますね」と紗月さんが語るように、蒔絵には貝をはめる螺鈿加工が施されており、京都らしい雅な印象を受けます。

また、注目すべきは骨組みの線の細さ。このように極限まで線を細くするのが、京指物のひとつの特徴なのだそうです。

最高級の飾り棚に見惚れる紗月さん

「線を細くすればするほど細かで高度な技術が要りますが、その分繊細で優雅な雰囲気のものが出来上がります。木を使っているものは杉や桐など、白い木で木目がまっすぐなものを使うことが多いんですが、最高級のものは漆で仕上げていきます」

隙のない美しく繊細な飾り棚に、紗月さんも目を奪われっぱなしです。

紗月さんが「あっ!」と思わず声をあげたのは、前編でも宮﨑さんにその魅力を存分に教えていただいた、桐箪笥。

蒔絵を施した桐箪笥

火や水はもちろん、湿気にも強く、高温多湿の日本で昔から重宝されてきました。着物の収納といえば…の桐箪笥ですね!

『宮崎家具』の本店で見せていただいた桐箪笥は最もオーソドックスなものでしたが、今回のものは蒔絵を施して仕上げています。オーダーにより自分の好きな柄を入れると、世界にひとつだけの桐箪笥が完成です。

堂本印象と神阪雪佳が引き戸に直筆で絵を描いた飾り棚

堂本印象と神坂雪佳が引き戸に直筆で絵を描いた飾り棚

写真の向かって左下。紗月さんが見ているのは、直筆で引き戸に絵を描いた飾り棚です。大正から昭和にかけて京都で活躍した日本画家・堂本印象が、松竹梅を描きました。

季節によって引き戸を変えることができ、その下には同じく京都出身の日本画家である神坂雪佳の作品も展示されています。

上村松園がデザインした広蓋

こちらは「広蓋」と呼ばれる、結納などの正式な贈り物をする際に使われるもの。美人画で有名な女性画家・上村松園が描いた鼓の柄が立体的に浮かび上がります。

鼓は大きな音が鳴ることから「物事がよく成る」―つまりは成長や成功を意味する縁起の良い柄とされてきました。

図案もそのまま掛軸にして飾られています。

京都迎賓館に納品した脇息の見本

日本の伝統的な肘置きであるこの「脇息」は、京都迎賓館に納品した家具の見本です。

紗月さんは芸妓時代に京都迎賓館で行われた宴会にもお呼ばれされたことがあるそうで、「目に触れさせてもろてたかもしれません」としみじみ。思わぬ再会です。

京都画壇による貴重な図案を拝見!

京都画壇による図案がずらりと並んでいる

京都画壇による図案がずらり

資料館には、こうした実際の家具だけではなく貴重な図案も多く展示されています。

実は明治の終わりから戦前にかけ、『宮崎家具』は「家具を芸術品の枠まで高めていきたい」という思いから、さまざまな京都画壇に図案を依頼していたとのこと。

ただ、製品になった後の図案は陽の目を見ることはなく、蔵に長らく保管されていました。

京都画壇の図案をご覧になる紗月さん

そんななか、とある美術館で図案を展示したところ、大変好評を得たそう。「それだったら普段から見ていただけるように展示しよう」ということで、この資料館を作るに至ったのです。

神坂雪佳による図案

ちなみに、こちらは神坂雪佳の図案。敷物から飾り絵、調度品まで一部屋すべてをイメージした、今で言うインテリアコーディネートです。

「これがきっかけで、家具から内装業へと発展していったというものすごく大事な図案になります」と宮﨑さんは語ります。

丸太に書かれた年表を眺める紗月さん

丸太に書かれた年表を眺める紗月さん

次々と貴重な所蔵作品を見せていただくなか、ひときわ存在感を放っていたのが、こちらの杉の丸太。なんと、樹齢400年以上の吉野杉なのだそうです!

「関ヶ原の戦いの頃に生まれた木がここまで成長しまして。なかなかこんな切り株は見ることがないかなと思いまして、展示しています」

紗月さんが指差す先には……

この木が生まれてからの歴史が記されている

日本の歴史と世界の歴史が年表で記されています。この丸太が辿ってきた年月の長さを感じられますね。じっくり眺めていると、いつの間にか時間が経っていそうです。

最後に見せていただいたのは、分かりやすく桐箪笥の更生の技術を表した展示物です。

半分だけ更生技術を施した桐箪笥

半分だけ更生技術を施した桐箪笥

向かって左半分が時間の経過とともに徐々に黒ずんでいってしまったもの。右半分が、それを更生して綺麗にしたものになります。

丸ごと箪笥を洗い、薄くカンナをかけた後にとのこや木の実を煮た液を再塗装することにより、新品のように綺麗になるのです。

桐箪笥の更生について説明を受ける紗月さん

持ち主がお孫さんに譲渡するタイミングなどで、更生を依頼されるケースが多いのだそう。

経年変化した箪笥も味があっていいのですが、宮﨑さんは「いいものを長く使っていただく文化を伝えていけたら」と考えています。

「良いものを永く使う文化を伝えていきたい」

本店に戻り、最後に「宮﨑さんにとって、京指物とは何か」という質問をお聞きしました。

自身にとっての「京指物」を語る

宮﨑さんが書いたのは、「永」という一文字。そこには永く使えるもの、そしてそういった技術を永く伝えていきたいという思いが込められています。

展望を語る宮﨑さん

「木材で作った家具はできた時が一番美しいのではなくて、使っていくほどに味わいが出てくるもの。色も変わって多少の傷もでき、それも味となっていきます。そういった代々いいものをきっちり永く使っていく文化も伝えていきたい。永く使われた時の木の重み、美しさを伝えていきたいと考えています」

貴重なお話と展示物を披露してくださった宮﨑さん、ありがとうございました。

今回の取材を終えて―

今回の取材を振り返る紗月さん

「とても貴重なお話をたくさん聞くことができました。金釘を一本も使わない指物の技術というのも目の前で見せていただいて、あらためて、桐箪笥のすごさがわかる回でした!」

紗月さんと宮﨑真里子さん

紗月さんファン必見!オフショット

「おたのもうします!」と、ちょっとお茶目な表情の紗月さん

「おたのもうします!」と、ちょっとお茶目な表情の紗月さん

今回お召しになっているのは、紬地の柔らかいグラデーションカラーの着物と抽象文の名古屋帯

今回お召しになっているのは、柔らかいグラデーションカラーの紬着物と抽象文の名古屋帯

今回もどんな話が聞けるのか、ワクワクです

今回もどんな話が聞けるのか、ワクワクです

見どころ満載の『京指物資料館』。自然と表情も豊かに

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紗月さん、飾り棚の中が気になる様子

紗月さん、飾り棚の中が気になる様子

丸太もこんなに大きいんです!

丸太もこんなに大きいんです!

年表に興味津々の紗月さん

年表に興味津々の紗月さん

宮﨑さんが一つひとつの展示物を丁寧に説明してくださいました

宮﨑さんが一つひとつの展示物を丁寧に説明してくださいました

次回の「紗月が聞く!」もお楽しみに

次回の「紗月が聞く!」もお楽しみに

文章/苫とり子
撮影/弥武江利子

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