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『宮崎家具』7代目 宮﨑真里子さん【YouTube連動・インタビュー編】「元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代」vol.9

『宮崎家具』7代目 宮﨑真里子さん【YouTube連動・インタビュー編】「元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代」vol.9

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家具の街として知られる京都の夷川(えびすがわ)通り。そこで1856年から京指物(きょうさしもの)の伝統を受け継いできたのが、老舗家具メーカーの『宮崎家具』です。今回は、7代目の宮﨑真里子さんを訪ねて。秋に第一子出産を発表された紗月さんの、貴重な出産前オフショットにも注目です!

まなぶ

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家具の街で京指物の伝統技術に出会う【Youtubeリンク】

MCの紗月さん

794年から約1000年に渡り、日本の都として栄えた京都。その間に育まれた独自の文化や伝統は、今も耐えることなく街の中に息づいています。そこには、いつの時代も“伝統文化の担い手”として切磋琢磨してきた人々の姿がありました。

2015年から2021年まで祇園甲部の人気芸妓として活躍した紗月さんがMCを務め、代々家業を受け継ぎ、また次の世代に引き継ぐべく奮闘されている方々に“老舗を守りつなぐお話”を伺います。

今回お話を伺うのは、『宮崎家具』の代表取締役を務める宮﨑真里子さんです。

同社は、1856年(安政三年)の創業以来、京指物の伝統技術を受け継いできた和家具の老舗メーカー。

『宮崎家具』本店。創業年を記した旗が風にたなびいている

『宮崎家具』本店。創業年を記した旗が風にたなびいている

紗月さんから宮﨑さんへのインタビューを通じて、京指物とは何かについて、またその魅力に迫ります。

宮﨑家具にて

その前に…

今回もまずは紗月さんの装いについてご紹介を。

紗月さんの立ち姿

優しい色合いの紬着物でお越しくださった紗月さん。ふっくらとした十日町紬の織り地には、珊瑚色やアイボリー、鼠色でやさしい段ぼかしがあらわされています。

ナチュラルで温かみのあるムードが、紗月さん本来の柔和なお人柄をより際立たせますね。

紗月さんの後ろ姿

シンプルながらも奥行きのあるムードの着物は、帯合わせでいかようにも表情を変えるもの。

今回は西陣の名門・都織物から、黒とライトグレーで配色された同じく紬地の名古屋帯をピックアップ。落ち着いたお色味ですが、抽象化された蝶紋を込めた色紙のようなお柄でお洒落なムードが漂います。

お着物の珊瑚色に合わせたピンクの帯締めがまた可愛らしく、上品で大人っぽくもありながら華やかさも携えた装いとなりました。

京都を離れて芽生えた家業への感謝

『宮崎家具』本店外観

『宮崎家具』本店外観

今回伺ったのは、京都御所のお膝元・夷川(えびすがわ)通りにある『宮崎家具』の本店。

ここ、夷川通りは別名「家具の街」として知られています。

「夷川通りは江戸時代から、今で言うインテリア関連の職人さんたちが暮らし、畳屋や表具屋、建具屋が沢山集まっている通りです。戦後から家具屋さんが増え、家具の街・夷川として知られるようになりました」

インタビューに応える宮崎さん

そう教えてくださったのは、1856年(安政3年)に夷川通りにて創業された『宮崎家具』の7代目・宮﨑真里子さん。

家具ブランド『宮崎家具』の母体となっている宮崎木材工業株式会社の代表取締役を2014年から務めています。

インタビューの模様

「このお店にあるものはすべて京指物の技術を用いてお造りしたものばかり。すべて当社のオリジナル商品で、他では買えないものばかり扱っています」

京都の伝統産業を受け継いできた家業を誇らしく思っている宮﨑さんですが、幼少期は自分が後を継ぐということは全く考えなかったそう。というのも、宮﨑さんは二人姉妹の妹でお姉様が後を継ぐものだと思っていたからです。

取材中の紗月さん

そのため、宮﨑さんは10年ほど京都を離れていた時期があります。しかし、家元を離れたことで、これまで自分を育ててくれた両親と、ひいては家業に対する感謝の気持ちが芽生えたのだとか。

見た目の美しさはもちろんのこと、手触りも滑らかな桐箱

見た目の美しさはもちろんのこと、手触りも滑らかな桐箱

花や、ウサギや猫といった可愛らしい絵柄が描かれている

花や、ウサギや猫といった可愛らしい絵柄が描かれている

「自分がこれまでやってこられたのも家業があったからこそ。何とか少しでも恩返しができればという気持ちで引き継ぎました。もともと、インテリアや建物の内装に興味がありましたし、自然素材である木材を使って家具や内装材など、美しいものを作り上げていく作業は本当にやりがいがあります」

金釘を一切使わない伝統工芸・京指物とは

「京指物」とは何かについて説明する宮崎さん

そもそも、京指物とはどういうものになのか。

宮﨑さんは、「金物や金釘を一切使わずに、『ほぞ』や『組み手』といった方法により手作業で木と木を組み合わせていく伝統技術のことです」と説明します。

驚く紗月さん

「釘を使わずに!?」と驚きの紗月さん。実はお二人がインタビュー中に座っている椅子や、背後にある箪笥も京指物の技術を使って作られたものなのです。

一体どういうことなのか。実際に木と木を組み合わせていく作業を目の前で見せていただきました。

座板の溝に脚の部分を差し込んでいく

こちらは、お二人が座っている椅子の座板と脚の部分。座板裏の角に「ほぞ」と呼ばれる溝があり、先端が尖った脚のパーツを差し込みます。

椅子を組み立てるところを披露する宮崎さん

簡単そうに見えますが、パーツとパーツが簡単には抜けない精密な技術がそこには隠されています。こちらも一切金物や金釘を使っていません。

金具や金釘を使っていないため、どこから見ても美しい仕上がりに

「家具ってあまり裏を見られることはないと思うんですが、ひっくり返していただいてもどこにも金物や金釘がなく、どこを見ても綺麗に仕上がるのが京指物の特徴になります」

宮崎家具の桐箪笥

続いては、桐箪笥の角などに使われている「組手」と呼ばれる技術について教えていただきます。

お話を聞く紗月さん

このように、段違いでカットされた木と木の板を組み合わせていくのが「組み手」という技術。

「組み手」について説明する宮崎さん

注目していただきたいのが、まっすぐではなく少し斜めにカットされていること。これによって、引っ張っても簡単には外れないようになっているのです。

金釘を使わずに組み合わせた木と木の板を引っ張ってみる

紗月さんも、「ほんまや!ぴくりともしない!」と驚くばかり。大人の力で引っ張っても全く外れる様子はありません。

まっすぐカットするよりも手間はかかりますが、そのぶん長く使うことができるのだそうです。

桐箪笥は、日本人の知恵の宝庫

インタビューの模様

釘を使わないメリットは見た目の美しさだけではありません。よく「桐箪笥は一生もの」と言われますが、それにはそれ相応の理由があるのです。

宮﨑さん曰く、金物の釘は錆びて、使っていくうちにズレたり外れたりということがあるのに対し、木と木はどんどん引っ付いて丈夫になっていくという側面があるのだとか。だから寿命というものがほとんどなく、一生使っていくことができるそう。

話を聞く紗月さん

「芸妓時代に『桐箪笥を持ってると一人前』と置き屋のおかあさんから言われたことがあるのですが、その意味がすごくわかりました」と紗月さん。

実は、紗月さんのように着物をよく着る方にも桐箪笥は最適なのです。

桐箪笥の値段はオーダーによって変わってくるが、こちらは税込で216万円

桐箪笥の値段はオーダーによって変わってくるが、こちらは税込で216万円

まず、桐箪笥は湿気を調整してくれるということ。「家具が息をしていて湿気を吸ったり吐いたりしてくれるんですよね。ですから着物を入れると、長期間ずっと同じ状態が保たれるんです」と宮﨑さんはいいます。

火や水に強く、火事や洪水の時も箪笥が身をもって中に入ったものを守るともいわれているのだとか。実際に桐箪笥を使っていたおかげで、災害時に中に入れていた着物が被害に遭わずに済んだという話を宮﨑さんは何度も聞いたことがあるそうです。

桐箪笥の中を覗く紗月さん

「桐には独特の香りがあり、その香りのおかげで虫もつきにくいといわれています。また軽くて加工もしやすい、まさに桐箪笥は日本人の知恵の宝庫であり、高温多湿な日本の気候の中で長い間愛用されてきました」

オーダーをすれば取っ手などのパーツも自分で選べる

オーダーをすれば取っ手などのパーツも自分で選べる

そんな桐箪笥を作る職人さんたちは、伏見の工場で働いていらっしゃいます。

普段は内装材を作っていて、注文が入ったら桐箪笥を作ることになっています。本店で展示現品を購入する方も中にはいますが、ほとんどの場合がオーダーによる受注生産。つまりは、世界にたったひとつの桐箪笥ということになります。

桐箪笥の魅力を語る宮崎さん

宮崎家具では現在、60代がひとり、あとは20代〜40代までの若い職人さんたちも日々活躍されています。

「20代の若い職人は内装材がメインですが、自分から桐箪笥を作りたいと言ってくれました。やはりそういった技術は若い人に伝えていかないといけないので、自分から進んで言ってくれて本当に嬉しいですね」

「京指物資料館」を見学中の紗月さん

後編では、 宮崎家具が運営する「京指物資料館」を見学いたします!お楽しみに。

紗月さんファン必見!オフショット

10月下旬に第一子を出産された紗月さん、本当におめでとうございます!

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実はこの時もご妊娠中でしたが、しっかりとMCを務めてくださいました

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こちらは『宮崎家具』本店の入り口。取っ手がMYAZAKIの“M”になってて可愛い!

こちらは『宮崎家具』本店の入り口。取っ手がMYAZAKIの“M”になってて可愛い!

さっそく中に伺います!

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宮崎さんとご対面。なにやらとっても楽しそうな雰囲気です!

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台本を確認する紗月さんの真剣な表情を激写

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カメラに気づいてこの笑顔!思わずキュン

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本当に外そうとしても外れず驚きました

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死角のない美しい桐箪笥の前で記念撮影

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取っ手までひとつひとつこだわりがあり、見飽きません

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紗月さんは何を見ているのでしょうか。後編もぜひご覧ください!

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文章/苫とり子
撮影/弥武江利子

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