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夏の装いの醍醐味を感じる葉月 「月々の文様ばなし」vol.5

夏の装いの醍醐味を感じる葉月 「月々の文様ばなし」vol.5

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着る人よりも、見る人のほうが涼を感じるとよく言われる夏着物。厳しい暑さの中で着物を着るのは気合いがいりますが、そうやって人の眼を喜ばせることも、夏の装いの醍醐味のひとつですね。

月々の文様ばなし

梅雨もあければ、いよいよ本格的な暑さがやってきます。日本の夏ならではの布素材の違いとともに、夏の文様も、涼感を呼ぶお洒落として取り入れて楽しみましょう。

厳しい暑さを楽しむ装いを

着る人よりも、見る人のほうが涼を感じるとよく言われる夏着物。

厳しい暑さの中で着物を着るのは気合いがいりますが、そうやって人の眼を喜ばせることも、夏の装いの醍醐味のひとつですね。そんな夏の後半も楽しめる文様をご紹介させていただきます。

南国の葉に、降り積もる雪?

葉月の文様「雪持芭蕉」

南国の風情を感じる植物の芭蕉は、そのエキゾチックな葉の形だけでも絵になりますね。

有名な『段片身替り雪持芭蕉文縫箔』という桃山時代の能装束にみられる「雪持芭蕉(ゆきもちばしょう)」文様。

南国の芭蕉の葉に、ふっくらと雪を降り積もらせるという発想とセンスには驚きます。芭蕉はまた、文様だけでなく、その繊維から芭蕉布という夏の布が織られていることも、よく知られていますね。

のどかな水辺を想像させる「舟」たち

葉月の文様「舟」
葉月の文様「帆掛け船」

厳しい暑さの中、海や川など、水を連想させるモチーフには涼感があります。

かつて、漁や運搬、行楽などで行き交っていた「舟」や「帆掛け船」。地方によっては、昭和のある時期まで見られたそうですが、のどかな水辺の風景を想像させてくれます。

「沢瀉」は意匠においても可憐

葉月の文様「オモダカ(沢瀉)」

池や沼地などに自生し、夏も後半になって白い可憐な花を咲かせる「オモダカ(沢瀉)」。花の名前は知らなくても、文様として見たことがあるという人は多いことでしょう。

その独特の葉と花の形は、さまざまに意匠化され、家紋などでもみることができます。

冬のモチーフ「雪輪」で涼感を

葉月の文様「雪輪」

現代のような映像メディアがなかった時代、視覚的に、冬のモチーフを冬のモチーフを夏に持ってくるという考え方は、とても合理的で面白い発想ですね。

先に登場した「雪持芭蕉」などもそうですが、雪の結晶から円の縁取りをデザイン化した「雪輪」も同様で、夏の小紋や浴衣などに、よく用いられています。

夏と言えば、な「トンボ」

葉月の文様「トンボ」

「トンボ」は、退くことをせず前にしか進まないという飛び方が「勝ち虫」として、古くから武士に好まれ、陣羽織や武具などにトンボの文様がよく用いられました。

夏の染め着物や帯にみられるだけでなく、織りの絣文様でもみられるポピュラーな絵柄です。

夏後半に映える美しさ「桔梗」

葉月の文様「桔梗」

くっきりとした花の形も、白や青みがかった紫の花の色も美しい「桔梗」。

秋の七草の一つに数えられ、古くから意匠化され、家紋だけでなく、衣装や調度品など、さまざまなものに描かれてきました。

夏着物や浴衣、帯など、夏も後半を迎えるころから、ことのほか着映えする文様のひとつです。

思いがけない早さで盛夏を迎えたこの夏も、八月の立秋からは折り返しとなり、日差しもじょじょに短くなってゆくのが感じられるようになることでしょう。

名残り惜しみながら、夏の柄を楽しんでいただければと思います。

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