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春をよろこぶ卯月 「月々の文様ばなし」vol.1

春をよろこぶ卯月 「月々の文様ばなし」vol.1

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「春はあけぼの、ようよう白くなりゆく、山ぎわ少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる」、清少納言の有名な『枕草子』の出だしを読むと、いつもまぶたに浮かぶのが、「遠山」と「霞」の文様です。

はじまりの4月

今月からスタートいたします「月々の文様ばなし」。

初回は、新年度にむけて、卯月(四月)の文様からお話ししたいと思います。

気になる桜前線

卯月 桜模様

私たち日本人にとって、春は「桜」なしには語れないものがありますね。春先には自然と桜にちなんだものを身につけたくなります。

古くから人々に愛され文様化されてきた花だけに、意匠も図案も実にさまざま。着物や帯、襦袢や帯留など、お気に入りの取り合わせで、三月から五月にかけて列島を北上する桜前線より早めに装い、桜の開花を迎えたいものです。

「左近の桜、右近の橘」

卯月 橘

京都御所の紫宸殿には、桜と並んで「橘」が植えられていることも、よく知られていますね。

昔から馴染みある吉祥文様のひとつですが、みかんの仲間である橘の実を、ぽってりと愛らしい形に文様化した人は優れた図案家さんだと思います。

文様界の名優?遠山と霞

卯月 遠山
卯月 霞

「春はあけぼの、ようよう白くなりゆく、山ぎわ少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる」、清少納言の有名な『枕草子』の出だしを読むと、いつもまぶたに浮かぶのが、「遠山」と「霞」の文様です。

郷里富山の険しい山脈を見て育った私には、おぼろにかすむ京都周辺の山並みの風景は、文様の通りのなだらかで優しい景色に映ります。

遠山や霞は、柄として主役にもなれば引き立て役にもなり、花模様だけでなく、洛中洛外など風景文様とも相性がよく、組み合わせによって一つの景色に見立てた装いにもなりますね。

「百花の王」、牡丹

卯月 牡丹

さて、桜も終わったころ、今度は「牡丹」が咲きはじめます。

百花の王にふさわしく華麗に咲く牡丹は、富貴な象徴として文様の歴史も古く、牡丹唐草など、古代の西域を感じさせるエキゾチックな雰囲気の文様もあります。

季節を問わない文様ですが、友禅染めで写実的に描かれたものや、帯にさらりと描かれた一輪の牡丹で、季節感を感じる装いも好まれていますね。

春の野に蝶々ひらひら…

卯月 蝶

そして愛らしく飛び交う「蝶」の文様も、ことに春らしい装いにはぴったりの柄のひとつです。

古くから愛されてきた意匠には、有職(ゆうそく)文様や家紋のように品格のあるものから、織物の絣柄にあるようなカジュアルなものまで幅広くあり、脇役から主役までを担うことができる文様です。

卯月は、ものごとが新しくはじまる月です。

好きな文様を取り入れて、自分だけの春景色を描くように装ってみましょう。

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