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縁起物モチーフの出番です! ~睦月(むつき)の巻~ 「十二ヵ月のアンティーク半襟」vol.9

縁起物モチーフの出番です! ~睦月(むつき)の巻~ 「十二ヵ月のアンティーク半襟」vol.9

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1月におすすめのモチーフは、新しい年のはじまりを華やかに彩るめでたいモチーフ「十二支」や2022年の干支「寅」、「初夢」「宝尽くし」「七福神」「初夢」「宝船」、そして福を引き上げる「網」や運が上がる「凧」、お金がよく廻ることにかけた「独楽」、七転び八起きの「達磨」、雪の中に春の訪れを感じさせる「福寿草」など。縁起物モチーフが季節にぴったりとマッチします!

着物姿のなかで一番目につく面積の狭い「半襟」。
しかし、かつては…

「お話しする時は相手の目ではなく、半襟をみてお話しするように」

という躾(しつけ)の言葉や、

「いずれ白襟で伺います」
※普段掛けている色襟を正式な白襟に替えて(=あらためて)伺う

という礼儀の言葉があったように、「半襟」は特別な意味を持つ和装小物です。

アンティークの刺繍半襟や染めの半襟にはすばらしい手仕事が凝縮されており、礼装はもちろん、縞の着物などに季節の半襟を掛ける(つける)ことが、明治から昭和、当時の女性の楽しみでした。

刺繍半襟は、

「着物を一枚仕立てる贅沢のかわりに、せめて刺繍の半襟を…」

という女性の気持ちに寄り添って作られた、小さな贅沢だったのでしょう。

そんな半襟に込められた和の美と季節の再発見をテーマに、旧暦の月名にあわせたアンティーク半襟をさとうめぐみの「半襟箱」の中からご紹介していきます!

さとうめぐみの半衿箱

二十四節気と半襟について

さて…
今月1月は、旧暦名で「睦月」(むつき)。

「睦び月(むすびつき)」が「睦月」に転じたというのが有力な説です。
仲良くすること・仲睦まじいこと・互いに親しみ合うなどの意味を持つ「睦び合い」の宴を、お正月に家族や親族が集まる月に行うことから「睦月」という月名が生まれました。

そんな1月に訪れる「二十四節気」は、

「小寒(しょうかん)」(2022年は1月5日)
「大寒(だいかん)」(2022年は20日)

です。
「寒」という文字を見るだけでも、冴え冴えとした冬の空気を感じますね。

小寒:寒さがもっとも厳しくなる時期。寒の入り!

「小寒」は寒さがもっとも厳しくなる時期です。新暦の正月を迎えると、まもなく「寒の入り」。年賀状を出し遅れたら「寒中見舞い」と してご挨拶することになります。「小寒」から15日後の「大寒」までが、寒さのピークとなります。「寒の入り」から節分までの約30日間は「寒の内」といわれ、厳寒期にあたります。

大寒:冬の季節最後の期間・暦の締めくくり!

今回訪れる二十四番目の節気は、節気のしめくくり、大寒(だいかん)。「大寒」は読んで字のごとく「もっとも寒い」という意味です。「大寒」から15日で、旧暦の年初め「立春」がやってきます。365日を丸く締めくくる15日間にしていきたいですね。

「雪」に「冬」…文字を見るだけでも、いよいよ冬本番を感じますね。

「二十四節気」とは、旧暦(太陰太陽暦)における太陽暦であり、2月4日の「立春」を起点に1年を24等分し約15日ごとの季節に分けたもので、いわゆる「暦の上では…」のもとになっているものです。

二十三番目の節気は「小寒」は、「寒さが最も厳しくなる時期のはじまり」という意味です。

この日から「大寒」までが寒さのピークとなります。
「小寒」から「寒の入り」をし、節分までの約30日間を「寒の内」と呼びます。

この寒の時期の水には若さを保つ力があるといわれ、寒中に汲み上げた水を使って仕込むお酒が有名です。

ご近所に名水のある方は「寒のお水とり」などをしてみて一年の健康祈願をしてみてはいかがでしょうか。

また、「門松は七日の風にあてるな」という言葉があるように、お正月飾りは1月6日の夜までに外すのがならいとなっています。

ハレの日と日常を上手に切り替えるいにしえの知恵に従って、新暦新年をスムーズに軌道に乗せたいですね。

そして、二十四番目、二十四節気最後の節気は「大寒」は、読んで字のごとく、「もっとも寒い」という意味の節気です。

「小寒」から「大寒」は「寒」、もしくは「寒中」とまとめて呼ばれることが多く、寒参りや寒垢離、寒中水泳、寒稽古など、寒さの中で身を清める行事が行われます。

また、2022は1月17日から2月3日までの18日間が「冬の土用」にあたります。
寒いことに加えて季節の変わり目で体調を崩しやすい時期なので、養生することを忘れずに!

「大寒」から15日で、旧暦の年初め「立春」がやってきます。

365日を締めくくる15日間にしていきたいですね。

「小寒」に「大寒」…この「15日ごとの季節」=「二十四節気」という小さな区切りこそ、半襟のお洒落の見せ所です。

着物や帯の季節のモチーフを取り入れてしまうと、短い時期しか着ることができなくなってしまいますが、ほんのわずかな面積が襟元からのぞく程度の半襟なら、印象に残ることも少なく、着ている方は季節の移り変わりを密かに楽しむことができます。

睦月の半襟1『縮緬地 遠山に富士山 刺繍半襟』

『縮緬地 遠山に富士山 刺繍半襟』
浮世絵のような刺繍半襟です。

そんな睦月にご紹介する一枚目の半襟は…

『縮緬地 遠山に富士山 刺繍半襟』

群青色の縮緬地に、金糸・銀糸で遠山文様と、繊細なしけ引きの刺繍で霞文様を表現した、浮世絵のような刺繍半襟です。

群青色は群青色(ぐんじょういろ)とは、日本画材の岩絵具の「群青」に由来する色名で、紫みがかった深い青色のことです。

日本画には欠かせない色で、桃山時代の障壁画や江戸時代の琳派の屏風絵などに使われています。

この半襟に江戸の香りを感じるのも、その地色が呼び起こす記憶のせいかもしれません。

初夢として見ると縁起がいいものとされている

「一富士 二鷹 三茄子」

を連想させる洒落た意匠です。

「一富士 二鷹 三茄子」は、将軍徳川家康に縁の深い駿河の国(静岡)にそびえる富士山をはじめに読みこんだ江戸時代のことわざで、「富士」で「不死」に通じて不老長寿を意味し、鷹は「高・貴」で出世を意味し、茄子は実がよく成ることから、物事が良くなる・子孫繁栄を意味するといわれています。
(あとに続けて「四扇五煙草六座頭」「四葬礼五雪隠」などといわれることも、語り継いでいきたいですね)

そして「初夢」とは本来、大晦日から元旦にかけては夜明かしをして初日の出(ご来光)を拝んで、歳神を迎えるという風習があったため、初夢は元日もしくは正月二日の夜に見る夢のことを指します。

良い初夢をみるために、縁起物を身に付ける…そんな思いを感じるアンティークの半襟です。

良い初夢をみるために、縁起物を身に付ける。

睦月の半襟2『縮緬地 犬張子に玩具文様 染め刺繍半襟』

『縮緬地 犬張子に玩具文様 染め刺繍半襟』
シボの高い抹茶色の縮緬地の半襟

二枚目にご紹介する半襟は、

『縮緬地 犬張子に玩具文様 染め刺繍半襟』

シボの高い抹茶色の縮緬地に、ダークなトーンで大きな犬張子とでんでん太鼓、独楽、飛行機型の凧、風車、紙風船、ラッパ、刀、日の丸などを染めた可愛らしい半襟です。

独楽に凧…滝廉太郎作曲の唱歌「お正月」の歌詞を彷彿とする取り合わせですが、犬張子の前垂れ(よだれかけ)の紐の部分が刺繍で表現されてるところに、手仕事の豊かさを感じます。

「犬張子」とは犬の形状を模した紙製の置き物で、邪霊や魔を祓う効能を信じて寝所に置かれたため、「御伽犬(おとぎいぬ)」「宿直犬(とのいいぬ)」とも呼ばれます。

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