着物・和・京都に関する情報ならきものと

大島紬の反物から、贅沢なコート4種を制作 「MariMaedaの着物クリエーション」vol.4

大島紬の反物から、贅沢なコート4種を制作 「MariMaedaの着物クリエーション」vol.4

記事を共有する

大島紬を着ているうちに…やはりファッションデザイナーとしては、「このすばらしい織物をもっと多くの人に体感していただけないものか」と感じるようになりました。そしてついには、大島紬の反物から様々なアイテムの制作をスタートいたしました。

春たけなわの今日この頃

4月も半ばを過ぎ、春たけなわの今日このごろですが、いかがお過ごしでしょうか。
フランスでは、現在3回目のロックダウンとなり外出が規制されていますが、日本もオリンピックを控え変異ウィルスの拡大が心配されていますね。
国によってはワクチンの接種も進んでおりますが、どうぞみなさま、日々健康には気をつけてお過ごし下さいませ。

自然界の美しさとともにリフレッシュ

パーク・アンドレ=シトロエン(Parc-André-Citroën)にて

今年、日本では桜の開花が例年よりかなり早かったようですね。
パリでも、街角や公園など至るところで日本の桜を楽しむことができました。
とはいえコロナ禍によるロックダウンの最中にあって、外出証明書や自宅の居住証明書を持ち歩きながらの制限された外出となっています。

私の住まいの近辺には、シトロエンの自動車製造工場跡地に構築された「パーク・アンドレ=シトロエン(Parc-André-Citroën)」という、14ヘクタールのすばらしい公共庭園があります。1986年初頭に着工され、1992年に開園しました。

私がパリにて生活しはじめましたのが1990年のこと。
数回の引越しを経て1992年、開園前にこの近辺に住むようになりました。開園されるのを日々楽しみにしていたものです。
開園時にはパリ市内最大の公園であり、自然との共生に見事に成功しています。
周辺環境も良く、パリ南西部端のセーヌ河岸に接していてセーヌ川へ歩いてもゆけます。

自然界から癒しのトリートメントを受けている感じです。

桜の木々の間から木漏れ来るおだやかな日差しを感じ、自然界からの癒しのトリートメントを全身に受けているような感じです。

心地よい花の香りを感じながら鳥のさえずりを聴き、公園の中を散策しています。
春ですね…
美しい桜に囲まれて、気分よく瞑想いたしました。

癒しを感じる大島紬の魅力

大島紬の良さは、何と言っても着心地の良さ

私はパリでもよく着物を着るのですが、春や秋の心地よい季節になりますと大島紬を選ぶ機会が多くなります。大島紬の魅力は、何といっても「着心地の良さ」です。

旅先などでは着物のしわが特に気になってしまうのですが、その点大島紬はしわになりにくい素材。しかも大変軽いので、荷物の重さが気になる旅先ではとても助かっています。

そして私は大島紬の、するりとすべらかな羽衣のような質感が大好きです。
また泥田などに由来する天然染色の香りは、これぞまさに自然界からの贈り物。
五感すべてを刺激して、真の心のデトックスとなっています。

緑豊かなこの公園では、趣向を凝らした多彩なテーマのもとで庭園が構成されています。
子供の遊び場から大人の瞑想の場まで、老若男女誰しもが、自分の居場所をみつけられるしかけが施されています。

《黒い庭》《繁茂する庭》《連なる庭》《白い庭》

こう区分された庭は、いずれもユニークで新鮮です。

多彩なテーマ設定で庭園が構成されています。

また野原のような緑地はジル・クレマンが試行錯誤の末に創りあげた「野生の庭」。
厳格なマニュアルをもとに、野花や雑草が、まるでなすがままのように咲き乱れています(…が、完全に庭師の演出によるものなのです)。

自然界はインスピレーションの宝庫。

自然界のモチーフや彩りは、クリエーターにとってインスピレーションの宝庫ですね。
現代の感覚と古典が融合した日本庭園を彷彿するかのような庭には、竹笹も植えられています。

中央部の芝生にて、春の訪れを満喫

中央部には、開放的なデザインの芝地が広がり、小川のような水路も巡っています。
コロナ禍中におきましても、パリジャン・パリジェンヌたちは、待ち望んだ春の訪れを満喫していますね。

ヘリウム気球(キャプティブバルーン)は、地上300メートルまで、最大30人の訪問者を空の旅へ誘います。パリの美しい景色を空中より10分間楽しめるのです。
私の自宅からも、時々、この気球が上がっているのを眺めることができます。
背景にある鉄骨にガラス張りの巨大な建築物も、パリのクラシックな街並みとはひとあじ違った趣です。

大島紬にインスパイアされて

大島紬を着ているうちに…
やはりファッションデザイナーとしては、「このすばらしい織物をもっと多くの人に体感していただけないものか」と感じるようになりました。
そしてついには、大島紬の反物から様々なアイテムの制作をスタートいたしました。

大島紬のマントコート

こちらのマント・コートは、和洋装どちらにも着こなしが可能になるように制作しました。フロント中央をクチュール感覚で折り畳んだフォルムにして、大島紬の織りの美しさや光沢感を立体的に感じ取っていただければ、と想いを込めています。

私の自信作です。

大島紬のマント・コート
洋装のドレスアイテムとのコーディネート

ご覧のように、洋装の着こなしにも迫力のアイテムとなります。
フレアーやギャザーといった、どちらかといえばかわいらしいイメージになりがちなテクニックを施していますが、大島紬ならではの重厚感からでしょうか…モダンかつシャープな仕上がりとなりました。

個性的なデザインの中に、エレガントな品格を表現いたしました。
とても軽いので、羽織っていることを忘れてしまいそうです。

パリで大島紬コート
端切れを使ってアクセサリーを制作

マント・コートは、一反の生地(着物1着分)を使用します。ほぼ残布はありません。
わずかな端切れを使ってアクセサリーを制作してみました。

パリの隠れスポットで撮影

パリの隠れスポットで撮影
パリ8区「モンソー公園(Parc de Monceau)」秋の落ち葉とともに
パリの街並みにとけこんで
巴里の街並みに溶け込んで
ROLEX社屋前で
モンソー公園の入り口、『ROLEX』の洋館の前にて

織物の芸術ともいえる大島紬は、ひとつひとつ、気の遠くなるような手作業で制作されていきます。このすばらしい日本の文化は、まさに世界遺産に値するものですね。

大島紬の機場
窪田織物にて
素晴らしい日本の文化は、世界遺産ですね。
窪田織物にて

フランスの「ゴブラン織」イランの「ペルシャ絨毯」と並び、世界三大織物に数えられる大島紬。さすがに崇高な織物です。

白大島紬を軽やかなトレンチ・コートに

究極のおしゃれを、1枚のトレンチ・コートに託してみました。
時代を超えて長くお召しいただきたい作品です。
ネックラインを優しくモダンなフォルムで表現、シンプルなデザインに蝶貝ボタンでアクセントをつけました。

究極のオシャレをトレンチ・コートに託す
大島紬ならではの精密な織の細かさ

大島紬ならではの精密な織の細かさが、上質な気品を感じさせてくれます。
麻の葉の古典文様が、かえって新鮮な気配を漂わせます。

ケープを取り付けたり、スカーフとしてアレンジも可能。

ケープを取り付けることで、よりおしゃれ感をプラス(ケープは取り外し式)。
ケープ生地は、右の写真のようにスカーフとしてアレンジすることもできます。

巴里の街並みともマッチ

ふんわりと軽やかな、白大島紬のトレンチ・コート。
何とも着心地がいいです。
パリの街並みにもしっくりとマッチいたします。

贅沢な総絣の大島紬をジャケット・コートに

扇子柄の泥大島のジャケット・コート。

扇子の地紙柄を遊ぶように織り散りばめた、総絣の泥大島紬のジャケット・コート。
自然界の美しいモチーフが、地紙にいっぱいに込められています。

この贅沢な大島紬の反物を洋服にすることには…実はとても葛藤がありました。
こんなにすばらしい図案はやはり着物で着た方が良いのではないか、思ったのです。

着物素材から洋服を制作する場合に、注意していることが2つあります。

◆1
訪問着のような絵羽模様の着物素材は、柄行きを最優先にしてデザインを考えること

◆2
高価で貴重な素材ゆえ、流行やトレンドに左右されることなく一生大切にお召しいただけるアイテムとすること

丹念に織られた織物を織り手の方から引き継ぎ、デザイナーとしての洋装アイテムにしていくわけですが、何としても完成度の高いものにしたい。
私なりの、プロデザイナーの意地とも言えるこだわりです。

またフランス人からはよく、「大島紬の魅力をどのように捉えているのか」と聞かれます。

フランスは元を正せば絹織物の発祥のような国。ルイ14世の時代から、リヨン地方では絹織物産業が盛んです。ゴブラン織しかり、織物に対する造詣は深い国民です。
友禅のような華やかさはなくとも、フランス人は、大島紬に対して畏敬の念を感じているようです。

ネックレスも泥染めのイメージに合うよう制作

ネックレスも、泥染めのエコロジックなイメージと合うように手作りで制作しました。

裏地は、紫のスレキを使用しています。
着物において帯揚げの色合わせを意識するように、さりげなく見える色味にこだわります。

裏地は紫のスレキを使用
バックスタイルは構築的なデザインに。
バックスタイルはウエストからボックス・プリーツを入れて構築的なデザインに
ノースリーブ・ドレスとアンサンブルで着こなした状態。
ノースリーブ・ドレスとアンサンブルでの着こなし
ネックには、ビーズの個性的なチョーカーを取り入れて
革ベルトで新たな着こなしを表現。
ウエストの革ベルト使いで新たな着こなしを表現
インナーのドレス
インナードレスは、ヘム・ラインに大島紬を使用

ジャケット・コートとこのドレスで、貴重な大島紬一反が無駄なく使用されています。

アールヌーボー調の扉の前で
アールヌーボー調の扉の前で

総柄の大島紬から唯一無二のスプリング・コートを

総絣の大島でスプリングコートを

総絣、総柄の大島紬を用いた、桜の花のロング・コートです。

春になると、スプリング・コートは必修アイテムですね。
毎年この季節に「ほしいなぁ」と思っていたものが、シンプルでありながら誰からも注目の的となりそうな凝ったコートでした。

そんなコートを着てお花見をしたいけれど…なかなか見当たらない。
であれば制作してしまおうと考えてできあがったのが、こちらの作品です。

見返しとカウス(取り外し可)に別布の大島紬を使用しています。
この別布部分はスナップで取り外し可能。
薄いパープルをセレクトしました。

お揃いのストールを用いることで、様々なアレンジが可能です。
ストールと本体のロング・コートで、一反の貴重な反物が無駄なく使用されています。

大島紬のコート
大島紬のバッグとコーディネートして
大島紬のバッグとともにコーディネート

グランドハイアット東京の「ソワレ・ブランシュ」に白大島紬で

ソワレブランシュの時に着装した大島紬の着物

毎年グランドハイアット東京で開催されている「ソワレブランシュ」の際に着用した白大島紬です。
南仏をイメージしたこのイベントは、ステキなドレス姿の方がとても多いのですが、あえて着物で参加し、好評でした。
コロナ禍でイベントが控えられていますので、なんだか懐かしく感じます。

これから一層季節も良くなり単衣の季節を迎えますが、みなさまどうぞ、コロナ禍でもご自身ならではの工夫にて着物ライフをご満喫くださいませ。

Mari Maeda による特注・オーダーメイド

コラム内に登場のデザイン含め、Mari Maedaによる特注・オーダーメイドご希望の方は、京都きもの市場「きものと」担当宛にお問合せくださいませ。

京都きもの市場「紬」
京都きもの市場・コート

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する