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エシカルファッションな着物を、日常着として愉しむ 【YouTube連動】天野さとみさん「着物沼Interview」vol.18

エシカルファッションな着物を、日常着として愉しむ 【YouTube連動】天野さとみさん「着物沼Interview」vol.18

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着物沼の住人が着物愛について熱く語るYouTube連動連載。今回のゲストは、SNS総フォロワー数10万人超!360日着物暮らしを実践する鍼灸師・天野さとみさんです。着物生活のメリットから収納術や浴衣ワードローブまで、“天野さとみ”を徹底解剖します。

2026.08.10

ライフスタイル

“色の力”を知ることで、着物はもっと楽しくなる! 能口祥子さん 【YouTube連動】「着物沼Interview」vol.17

360日着物生活、本日のコーディネート

18歳から独学で着物を着始めた天野さとみさんは、年間ほぼ毎日着物で暮らす生活を実践しながら、日々のコーディネートや着物暮らしの中で得た気づき等をSNSで発信しています。

オフラインでは、「さとみさんの着物交換会」をはじめとする着物イベントを主宰する人気の着物インフルエンサーのひとりです。

天野さん

この日の天野さんは、「今日は朝起きたら雨でしたので、濡れてもいいものと思って」と、サマーウールの着物で登場。

「ザラザラしているので、梅雨時のジメッとしたときに着るのにすごく気持ちよくて。雨なので流水柄にして、帯留めは頂きもののピンバッジにパーツをつけたアマガエルちゃんです」

バックショット

「家でいろいろと作業する日は、半幅帯を矢の字に。帯板もしないです」と気軽な装いです。

半衿

木綿の半衿は彼岸花柄。「時期ではないですけど、こういう切り取り方をすれば彼岸花って分からないので」と天野さん 

着物沼への扉を開いた『KIMONO姫』

天野さんの着物との出合いは高校生のとき。着物沼の住人にはお馴染みの雑誌『KIMONO姫』がきっかけでした。

「衝撃でしたね。なんだ、この可愛い世界観は!と」
 
それまで着物との接点が全くなかった天野さんが、生まれて初めて「私も着てみたい」と思った瞬間だったといいます。

「人並みにオシャレは好きでしたが、着物というとお茶や伝統的というイメージだったので、『ファッションとしての着物』という切り口が自分自身のなかになかったこともあって、シンプルに可愛いという衝撃でした」
 
と当時を振り返る天野さん。

バストアップ

いざ着物を着るとなった際、

「着付け教室に通うという選択肢はなくて。自分の周りに着物を着ている人がいなかったから、逆に先入観がなかったのが良かったのかもしれませんが、着物が難しいものだと全く思わなかったんです」

と、意外な言葉。まずは図書館へ出向き、着付けに関する本を数冊借りてきて、「こんな感じか」とパパッと着ていたというから驚きです。

2025.06.23

アイテム

キモノ好きフォトグラファー さんかくさん

着物の世界に戻る契機となった事件とは?

子育てに追われる日々、お祭りで子に甚平を着せて自分は浴衣……くらいの距離感だった着物の世界に戻ったきっかけは、2013年に起こったバングラデシュのラナ・プラザ崩落事故※でした。

一見、全く着物とは関係なさそうですが、世界で初めてファストファッションが問題を抱えている現状が公になった事件でもありました。

※ラナ・プラザ崩落事故……2013年、バングラデシュのダッカで発生した8階建てのビル「ラナ・プラザ」が崩壊した事故。死者1134人・負傷者2500人にも及ぶ被害を出す大惨事となった。事故前日に当該ビルの亀裂が発見され、使用中止するよう警告されている中で起きた事故だった。

横顔

「そんなことも世界にはあるんだな、で終わる事故かもしれませんが……。私は当時、支援団体を通じてバングラデシュに住む女の子に毎月寄付をしていたんです。定期的に彼女と手紙のやり取りをすることで、バングラデシュを身近に感じていたので、他人事とは思えませんでした」

そこから、500円のTシャツに対して「安く手に入れられて良かった」と手放しに喜べなくなってしまった天野さん。

代わりに何かいい方法はないか?と模索したものの、当時のエシカルファッション※はまだまだデザイン性にも機能性にも乏しく、その割には高価格という現状から、「純粋に可愛くて着たいと思える服がなかった」と振り返ります。

※エシカルファッション……人や地球環境に配慮してつくられた倫理的かつ持続可能なファッションのこと。

 

初めて買った着物や成人式での装いについては、ぜひ動画をご覧ください!

毎日浴衣生活のひと夏で感じた着物の良さ

「そんなとき、ふと、学生時代に家庭科の授業で『着物はつくる・着る・手放すといった全ての段階において全く無駄がない服だ』と教わったことを思い出したんです。

そこで、毎日着る服を着物にしたら、私は環境にも人にも負担をかけずに生きていくことができるんじゃないかって」

足元

「でも、実際に着物で生活をしている人はほとんどいなくて。
 
いないということは、不具合や不便といった何かしらの理由があると考えて、毎日着る服を着物にするアイデアに基づいていきなり移行するのではなく、まずはお試しから入ってみようと思いついたんです」

それが、34歳の夏の始まり。

「このひと夏をお試し期間として浴衣で生活してみよう、と。で、やってみたところ――私にはデメリットがひとつもなくて。むしろ良いことばかりでした」

外出

ゴミ出しにも軽快な足取りで。長い階段も何のその!

「冷えたり不摂生で太ったり、夏は一年間で一番体調が良くない時期なんですが、すごく良好でした。それに加えて、夏バテではなく自然に少し痩せて(笑)。

さらには、浴衣を着ているとすごく人に褒められるし、お店などで良い席にも通してもらえるし、腰の調子も良いし。あとは、日焼け止めをあまり塗らなくてもいいので、色白で過ごせたなみたいな」

“お試し浴衣暮らし”が良いこと尽くめだった天野さん、「これは着物生活、いけるかもしれない」と実感します。そのまま秋以降も継続することとなり、8年が過ぎていまに至ります。

鍼灸師の目から見る、数々の着物メリット

高校卒業後、ヘアメイクの専門学校に進んだ天野さんでしたが、妊娠・出産を経たご自身の身体の変化を通して内側の健康や美について考えるようになり、鍼灸師という道を選びました。

「適切に締めれば、帯はほど良い支えになってくれます。本来、身体が一番正常に機能する良い姿勢を無理なく保つ助けになってくれる。さらに、帯をしていることで冷え対策にも。お袖があることで、夏はとくに冷房が直接当たらず肌を守ってくれる役割があります」

骨格標本

「もう少し東洋医学的な観点から言えば、腰紐がくる位置はへそ下の関元※など臨床上重要なツボの上を通っているのも大事ですね。帯のおかげでだらっとした姿勢ではいられないので(苦笑)、自然とインナーマッスルが鍛えられると思います」

※関元……へそから指4本分下にある東洋医学のツボ。丹田。

骨格標本とさとみさん

そんな天野さん、なんと着付けに悩んだことが一度もないと言います。

それは、解剖や骨格の知識があるからでは……と、自身について考察する上で、彼女の着付け教室では、専門的な知識がなくとも目で見て説明を聞けば解る説明で、少しでも楽に着られるためのコツを学ぶことができます。

「昔からこうするのよと言われていることは、解剖学的にも正しいことが多いんです。ただ、『なぜ?』という理由は説明されない。私の講座ではそのあたりをしっかりお伝えしています」

普段のお手入れ方法&最後に残す一枚

ほぼ毎日着物生活を送る天野さんのお手入れ方法は至極シンプル。

「基本的には、着たら干すだけ。シーズンごとのお手入れで洗いに出すこともありません。サマーウールなど洗えるものは、よほど汗をかいたら洗うかな」

陰干し

補正は無し。衿芯も帯板も無し。

「着付け教室で習う方法は、ハレの日のための着方なんだと感じます。でも、昔は日本人は毎日着物を着てたわけじゃないですか。大変な着方を、毎日全員がしていたわけがない。ケの日の着物としては、地味なおばあちゃんみたいな着物が好きですね(笑)」

たくさんの着物・浴衣をもつ天野さんに、「どれか一枚だけ残すとしたら?」という質問をしたところ――。

答えは、シルクデニムの濃い紺色の無地着物。

シルクデニム

その理由は、

「普段着としても着られて、野良仕事するのにも着られるし。コーディネート次第ではホテルのディナーなんかにも行けたりします。実際、海外旅行に行くときには、それだけ持っていくくらい。あらゆるシーンをカバーしてくれるのに、洗える。デニムなので丈夫で、傷んできてもいい感じの味に見えそう(笑)」

とのこと。なるほど、合理的です。

11月で8回目!「着物交換会」に託す想い

「ミニマリストでありたい」と口にする天野さんが取り組む着物イベントのひとつである着物交換会は、持ち込んだ着物と同じ数だけ、他の参加者が持ち込んだ着物を持って帰ることができるという会。エシカルなアクションとして海外では普及しているイベントです。

「私が着物を着始めたきっかけがそこに根差しているので、自身にとってのエシカルアクションのひとつとして、着物交換会を開催しています」

棚の上

周りにそういうイベントをやりたいと話したところ、当初は否定的な意見ばかりだったといいます。

「交換会に持ち込むものの基準って、シミが何点まで、といったことではなく、『親友にプレゼントしたいものを持ち込んでください』ただそれだけなんです。実際に始めてみたら、すごく素敵な着物が集まりました。

過去の交換会では、着物インフルエンサーのシーラさん、さんかくさん、織蜜さんが、趣旨に賛同してくださって……。寄せてくださった着物をそっと混ぜ込んで、見つけた方が『えー!』ってビックリされてたり。すごくいい循環が生まれていると感じています」

風景

2025.04.25

ライフスタイル

着物研究家 シーラ・クリフさん

藍染めの浴衣はサバイバル用品になる?!

寝巻きも浴衣、という天野さんがとりわけお気に入りなのは、有松絞りの一枚。

「だいぶ着込んできているので、ふわふわのクタクタで。それが寝巻きにすごくいい感じになっています」

浴衣

「戦国時代には武士が肌着を藍で染めていて、止血はもちろん、ご飯が食べられないような緊急事態になっても肌着をかじって藍の成分で命を繋いだという話を聞いて、本藍染めの浴衣を着ていたら、寝ている間に災害が起こっても生き残れるじゃん!サバイバル用品になるじゃん!と思って着ているのもちょっとだけあります(笑)」

この浴衣は、昨年の有松絞りまつりでも展示された一枚で、参加者からは「寝巻きにするなんて贅沢!」という声も上がっていたそう。

「よく言われる話ではありますが、人生の3分の1は寝ているわけなので、そこの質を上げていくことは大事なんじゃないかな、と。残りの3分の2の生産性にも大きく関わってきますので、私は無駄遣いとは思ってないですね」

2026.07.01

アイテム

とことん楽しむ!『有松絞りまつり』の巡り方 「きものと編集部のおすすめ」vol.13

暖簾から

ビビットな色柄が目を引く有松絞り。柄の色にリンクさせた帯は、裂き織りの半幅帯。帯留めのブローチは、熊本の空港で出合った作家モノ

耳飾り

耳元にもバレンシアオレンジの色味をプラス。「明るい髪色にしてから、こういう明るい色柄も似合うようになりました」と天野さん

その他の浴衣ラインナップについては、動画にて!

オープン収納で“しまい込まない”整理術

①手に取りやすく
②管理を楽に

これが、天野さんの収納ポイント。

「目に入らなくなると、途端に意識に上らなくなるので。たとう紙に包んだり、しまい込んだりといったことはしないようにしています。基本的には出しっぱなしのオープンラック収納って言うんですかね、もはやラックですらないですけど(笑)」

愛猫

「猫ってなぜか正絹好きなんですよね~(笑)」と天野さん。撮影中も自由気ままに着物の上に乗ったり、間に潜り込んだり

「畳むのが面倒になると続かないので、私は本畳みではなく袖畳みという簡易的な方法で収納しています。極力面倒くささを排除して、整理の方法を構成しています」

という天野さん、帯締め&帯揚げは吊るすだけという簡単収納。

収納

帯板・腰紐・帯枕など着付け道具が一式入った籠バックから出てきたのは、茶こし付き水筒にしまってある扇子。「内蓋を取って、お香を入れています。扇子を取り出すのも簡単です」(天野さん談)

足袋もザクっと。ニトリの鉢カバーに放り込んでありました。

足袋

「とにかく手間をなくそうなくそうとした結果です(笑)」という言葉通り、その姿勢は一貫しています。

ヘドレ

イベント等で活躍するヘッドドレスたちも、がさっと箱にイン!

ちなみに、天野さんの着物沼っぷりをご紹介する動画は3本立て。

素敵なお住まいと着物収納については、ぜひこちらの動画にてじっくりとご覧ください。

「ちょっとつけるのどうなん?って思うかもしれませんが、つけちゃうと自分からは見えないし、軽いので、意外と気にならないです(笑)」(天野さん談)

「ちょっとつけるのどうなん?って思うかもしれませんが、つけちゃうと自分からは見えないし、軽いので、意外と気にならないです(笑)」(天野さん談)

ほぼ毎日着物生活に窮屈さや義務感を微塵も感じさせず、あまりにも自然体に日々を送る天野さん。

その根底には、異国の事故をきっかけにエシカルなアクションを取りたいとする姿勢や、36歳で患った乳がんの闘病生活の経験などが相俟って形成される、彼女ならではの価値観があり、一つひとつの行動や選択にしっかりとした意思が伺えました。

「夏は一番“着物沼が遠浅になる時期”だと思っているので、まずは浴衣から。着てみたいと思っているなら着てください!」

天野さんの言うとおり!まずは手軽な浴衣から、着物沼に足を浸してみては?

文/椿屋
スチール撮影/松村シナ

2026.03.30

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