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『助六由縁江戸桜』江戸一番の粋な色男が悪を討つ! 「十倍おもしろい!?歌舞伎ど定番演目大解剖」vol.4

『助六由縁江戸桜』江戸一番の粋な色男が悪を討つ! 「十倍おもしろい!?歌舞伎ど定番演目大解剖」vol.4

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市川團十郎の勇猛果敢な姿は、江戸の人々にとってまさに悪を倒すヒーロー! とはいえただただ華やかなショーというだけでなく、実はこの『助六』、ある仇討ち物からのスピンオフだってご存知でしたか?

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江戸歌舞伎の粋を集めた華やかな演目『助六由縁江戸桜』

きものとをご覧のみなさん、こんにちは。tomekkoです。

今回は連獅子と並んで歌舞伎の定番中の定番、あの衣装を見ればすぐわかりますよね。古今東西屈指の人気演目、『助六由縁江戸桜すけろくゆかりのえどざくら』通称「助六」です。

舞台の様子を見てもわかるように江戸歌舞伎の粋を集めた華やかな演目で、市川團十郎を擁する成田屋のお家芸である歌舞伎十八番の一つですね。

十倍おもしろい!?歌舞伎ど定番演目大解剖1

主人公の助六は江戸で一番おしゃれで粋な、いわゆるモテ男。

歌舞伎の語源となった「傾奇者かぶきもの」らしく粋な中にも個性的なアイテムを身につけ目立つ出立ち。そして喧嘩っぱやくてチャラいプレイボーイ風(……と見せかけて実は……?)。

そんな助六を間夫まぶ(愛人)とする三浦屋の遊女揚巻は吉原随一の花魁。美貌と知性溢れるこれまた庶民の憧れる爆美女です。

つまりは花のお江戸のナンバーワンパワーカップルの見どころオンパレード演目、というわけですね。

だから助六を演じるなら役者としても江戸随一でなくては……!ということで、人気No. 1役者の代名詞のような役柄なのです。

成田屋は元々豪快でたくましい「荒事」を得意とする家柄ですが、その中では助六は典型的な荒事の役とは異なり、すっきりした「むきみの隈取」で、和事の優美さも兼ね備えているところも特徴。役者のイケメンぶりが際立ちます。

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とはいえ、ただただ華やかなショーというわけではないんですよ。実はこの『助六』の物語はある仇討ち物からのスピンオフだってご存知でしたか?

十倍おもしろい!?歌舞伎ど定番演目大解剖2

『助六』の裏にあるオリジナルストーリーは鎌倉時代の仇討ち劇『曽我物語』です。

曽我五郎時致と十郎祐成の兄弟が、父の仇工藤祐経を討つ『曽我物語』。江戸の初春興行では、『曽我物語』を題材とした演目を上演するのが恒例でした。

これは江戸の人々の信仰心と、興行上の縁起担ぎが主な理由と言われています。

一つは怨霊を鎮める「御霊信仰」。曽我兄弟は、父の仇討ちを果たした後に若くして非業の死を遂げた実在の人物であるため、正月に彼らの物語を上演することはその霊を慰め「その年一年、江戸の町に災いが起きないように」と鎮魂の祈りを捧げる意味があったとか。

そして「不老長寿」と「繁栄」。二人が18年もの長い年月をかけて初志を貫徹したことから、「粘り強さ」や「おめでたい成就」の象徴とされました。

また、彼らの物語は非常に人気があったため、正月に上演すれば「客がよく入り、芝居小屋が一年中繁栄する」という興行主側のゲン担ぎの意味も強かったようですね。

……と、祈りと商売っ気の混じった目的はあるにせよ、わかりやすいのはやっぱり江戸っ子のヒーロー好き、というところでしょうか。

特に弟の五郎を演じる市川團十郎の勇猛果敢な姿は、江戸の人々にとって「悪を倒すヒーロー」であり、新しい年の幕開けにふさわしいめでたく華やかなパワーを受け取れる演目だったのです。

そんな『曽我物語』にルーツを持つ『助六』は仇討ちものながら血生臭くない、江戸っ子らしい粋でかっこいい内容にブラッシュアップされています。

江戸一番の色男、花川戸助六は一見ただの遊び人に見えますが、実は曽我五郎であり(察しの良い方は「いや時代……!」と引っかかると思いますがそこはご愛嬌)、奪われた源氏の宝刀「友切丸」を探しています。

友切丸を見つけるため、刀を抜かせようとわざとキテレツな難癖をつけて会う人会う人に喧嘩を吹っかけるわけです。

揚巻あげまきは助六と相思相愛の間柄。でも揚巻には横恋慕する男がいて、それが髭の意休(実は仇の工藤祐経)なんですね。

友切丸を持つ意休は助六がどんなに挑発してもなかなか刀を抜きません。この意休の抜きそうで抜かない感じがまたハラハラさせるんですよ!

江戸っ子の美的感覚を表す着こなし

十倍おもしろい!?歌舞伎ど定番演目大解剖3

見どころはやっぱりメインキャラクターたちの粋なファッション!

助六は黒の着流しが粋でいかにも遊び慣れた江戸の通人の風情。

この時代、表にあからさまに派手で豪華な柄や縫いを着るのは野暮とみなされました。だからすっきりとした誤魔化しの効かない黒の下に朱をチラ見せする抜け感あるカッコよさ。

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逆に敵役の意休は龍、虎、亀などの模様が刺繍された成金を象徴する衣裳です。これ見よがしのゴージャスさがダサさを表しているんですね。

全体的に華やかな舞台で主役が一番シンプルな着こなしをしているのは、当時の江戸っ子の美的感覚をよく表しているんですね。

助六の持ち物、蛇目傘。雨も降っていないのに傘を広げるのは……「桜避け」のため……ですって!フゥー!

そして顔の横で存在感を示す江戸紫の手拭いが隈取に映えてよりキリリとした印象ですが……

これはその昔、奥女中と役者の悲恋で有名になった絵島生島事件の際、絵島が贈った帛紗を額に巻いて生島新五郎が舞台に出たという逸話を元に衣裳となったそうです。

でも……私実はちょっと疑問に思っていました。紫の鉢巻姿って偉い人の病気時のイメージありませんか?

調べてみると病気の時は顔の左側で結ぶらしい。顔の右に結び目がある若衆鉢巻は、放蕩無頼の「傾奇者」らしさを表しているのですって。

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『助六由縁江戸桜』の特別なしきたり

ある意味成田屋の人気と影響力を最大限に魅せるこの演目には特別なしきたりが多くあるんです。

例えば助六の衣装に使う鉢巻、下駄、傘は当時魚河岸、吉原、蔵前から贈られており、今でも鉢巻は魚河岸が贈っているそう。

そして幕が開くと、裃姿の口上役によってこの演目の由来が披露された後、河東節かとうぶしの演奏が始まります。

市川團十郎家が助六を演じる時は、ご贔屓の旦那衆によって河東節が演奏されるという特別仕様。現在は「十寸会ますみかい」という一派に伝承されています。

市川團十郎家以外の役者が助六を演じる時は清元の長唄になるので、BGMの違いを楽しむのも一興ですね。

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花魁の豪華絢爛な衣裳で女形の魅力も全開

またファッションの視点では遊女揚巻の豪奢な衣裳にもご注目。いくら渋さが好まれる江戸っ子とはいえど、やっぱりみんなの憧れ、高嶺の花の花魁は豪華絢爛でなくっちゃ。

おめでたい演目ということもあり、

五節句 ──正月、桃の節句、端午の節句、七夕、重陽の節句──

にちなんだ衣裳を次々と披露してくれます。

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正月の打掛には金糸銀糸を長く垂らした注連飾り、そしてなんと橙と伊勢海老が載った鏡餅を背負います。その下に着ているのが、桃の節句を表す着物です。花魁の象徴、前結びの大きく垂れ下がる俎板帯には端午の節句のモチーフ、鯉の滝登り。

お召し替えした打掛には日本画家の描く墨絵(揚巻を演じる役者に贈られる)、七夕の俎板帯、そしてクライマックスには重陽の節句を表す菊尽くしなど目をずっと楽しませてくれるのです。

大ぶりな髷とたくさんの簪を差した鬘に加え、豪勢な衣装を合わせると計3〜40キロもあるという花魁の衣裳。これを涼しい顔でさばく姿は女形の魅力が全開です。

揚巻がその打掛を優雅に脱ぎながら助六の悪口を言う意休に言葉遊びの連想ゲームで知的な悪態をつくシーンも見どころの一つです。

『助六由縁江戸桜』におすすめのコーディネートは?

さてさてこの演目、人気がありすぎてとあるフードメニューの由来にもなりました。

ご存知「助六寿司」には太巻きとお稲荷さんが入っていますよね?これは助六の鉢「巻」と揚巻の「揚」から来ていて、(揚巻だけで表したメニューを敢えて恋人の名前で呼ぶのが粋だった説もあります)上演時の幕間に食べる幕の内弁当の一つとして考案されたそうです。

江戸っ子の考える演出、幕間までもその世界観で統一していて洒落が効いていますね。

十倍おもしろい!?歌舞伎ど定番演目大解剖4

そんなおしゃれで華やかな演目をお着物で観に行くとなったら……これは気合い入っちゃいますね!

江戸の粋を極めた助六をお手本に、もう一つの主役“桜“をどこかに取り入れてみたい。渋い江戸小紋に小物で朱と紫の締め色を効かせつつ、華やかな桜柄の帯はいかがでしょう?

着物は季節を先取りが鉄則のように言われますが、歌舞伎では演目や役者さんの屋号を思わせる「ちなみ柄」が喜ばれるので大丈夫ですよ。

また江戸小紋は「小紋」と名がついても訪問着や付け下げに次ぐ格を持っているので、金糸の入った華やかな帯を合わせるとバランスが取れてグッと恰好がつきます。

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江戸のカッコ良さの粋を集めて見事に現代まで受け継いだ歌舞伎の代表演目『助六由縁江戸桜』は、毎年五月に歌舞伎座で開催される『團菊祭』夜の部にて市川團十郎の助六、尾上菊五郎の揚巻という名コンビが演じます。

実は午前の部では『助六』と同じ「曽我物」の代表格『寿曽我対面ことぶきそがのたいめん』も上演されますので、通っぽく『昼夜通し』で見比べ、一日歌舞伎の世界に浸り切るのも楽しそうですね。

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