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ものまね女王と昭和にタイムスリップ! feat.清水ミチコ「きもの、着てみませんか?」 vol.9-1

ものまね女王と昭和にタイムスリップ! feat.清水ミチコ「きもの、着てみませんか?」 vol.9-1

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着物スタイリスト・薬真寺香さんによるスタイリング連載の第9弾。今回は40年近く、長きにわたって第一線で活躍を続けるタレントの清水ミチコさんをお招きし、大人でありながら遊び心満点の非日常感あふれる着物コーディネートを提案しました。

インタビュー

きもの、着てみませんか?

清水ミチコさんが老舗ライブサロンのマダムに変身!?

着物や和装以外の分野で活躍されている方が、着物スタイリスト・薬真寺 香さんの手ほどきにより、着物をお召しになりながらお話を伺う本連載。

純喫茶ときもの feat.小谷実由』に続いて登場いただいたのは、テレビ、ラジオでの活躍はもとより、会場ごとに内容の違うライブがいつも楽しいタレントの清水ミチコさんです。

清水ミチコさん

エキゾチックな魅力に満ちた東京友禅の逸品を身に纏った清水ミチコさん

着物:染繍美術 大彦 逸品東京友禅訪問着 「異国人物更紗図」
帯:人間国宝 故・北村武資 最高級経錦袋帯 「花襷紋」

現在、清水さんは、毎年恒例のライブツアー「清水ミチコ万博 ~ひとりPARADE~」の真っ最中。2024年11月23日から東京エレクトロンホール宮城を皮切りに、2025年4月26日の沖縄・那覇文化芸術劇場 なはーとまで、全国34都市を駆け巡ります。

薬真寺さんは「清水さんといえば、代名詞のピアノ」と、今回、ムード満点のピアノがある場所を探していたと言います。しかも「アンダーグラウンドな雰囲気を醸したサロンで」とのこと。そうして見つかったのが、1970年創業の『新宿カールモール』でした。

新宿カールモールは音楽や舞台、映像、写真、絵画など、各ジャンルのアーティストが集うライブサロンです。アンティークな調度品に、金華山織の贅沢な壁紙、真っ赤な絨毯が敷き詰められた趣のある階段。

先代のマスターがこだわり抜いて作り上げた空間は、まるで昭和の時代に迷い込んだかのようです。

タレント・清水ミチコさん

薬真寺さんが、

「今日の清水さんは往年の大女優兼歌手で、カールモールの2階に住むマダムの設定です」

とお伝えすると、清水さんは設定に驚きつつも、現マダムの小林さんに問いかけます。

「カールモールって、どんな由来があるんですか?」

「18世紀ドイツの劇作家で思想家のフリードリヒ・フォン・シラーが書いた『群盗』という戯曲があります。そのなかに、裕福な家からお金を盗ってきては、貧乏なお家に配る鼠小僧のような自由人が出てきます。その人の名がカール・モールと言うんですね」(「カールモール」マダム・小林さん)

すると「お店の由来が知的! 先代のマスターは素敵な方だったんですね」と、清水さんは笑顔で答えます。

カールモール同様、かつてアンダーグラウンドな文化発信基地だった渋谷ジァン・ジァンで鮮烈なデビューを飾った清水さん。

場所の引力に惹きつけられるように、撮影とインタビューがスタートしました。

◯◯◯を纏って。タレント・清水ミチコさん

ステージで観た清水さんの少女性にインスパイアされた着物

薬真寺さんが今回、清水さんのために選んだのは、東京友禅の老舗・大彦だいひこの逸品『異国人物更紗図』

タレント・清水ミチコさん

「コントや大河ドラマで着た今までの着物とは全然違う! 質感がものすごくよくて、しっとりとして、するんとした肌触り。長く着ていても疲れないですね。コレって絹でできているんですか?」(清水さん)

「はい、とても上質な正絹の着物です。しっとりとして、とてもなめらかですよね」(薬真寺さん)

薄い群青色に染め上げた絹地に、蝶や鳥、インドの更紗などと一緒に異国の人物画が金刺繍によって描かれています。清水さんは裾に何かを見つけたようです。

「コレ、機織りの人ですかね? エキゾチックな柄が刺繍されていて、面白い」(清水さん)

タレント・清水ミチコさん、お裾まわり

「面白いですよね。機織りだけでなく、糸取りをする人も立体的な刺繍で描かれているんです。

以前清水さんのライブを拝見したときに、目の前にいるのは大人の女性でありながら、まっすぐでピュアな情熱を放つデビュー当時の清水さんが二人羽織のように重なって見える瞬間が何度もあって。少女のような可愛らしさを感じました。それで、お花などの可愛らしい要素の入ったこちらの作品を選ばせていただきました。

高度な技術、上質感、絶対的なオリジナリティ、色や柄によって高揚感をもたらしてくれるところなど、清水さんのライブの素晴らしさに通じる部分が多いと感じています」(薬真寺)

「ライブを実際に観て着物を選んでくださったの? うわ〜、嬉しい。着物を着るって、やっぱり贅沢な時間ですよね」(清水さん)

「”贅沢な時間”と言っていただけてすごく嬉しいです! どうしても時間や手間はかかってしまいますから、着付けをポジティブに捉えていただけるような提案ができたらと、いつも考えています」(薬真寺)

人間国宝の貴重な帯を締めて

帯は、惜しまれつつも2022年に亡くなられた重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝である北村武資氏によるもの。

着物の地色を選ばない、冴えた黄色の帯地がパッと目を惹きます。

清水ミチコさんの帯姿

「こちらの着物ですと、白金の帯などでシンプルにまとめるのがいわゆる”王道コーデ”だと思います。ですが、清水さんの過去の衣装などもいろいろと拝見しますと、カラフルなものを纏ってらっしゃることが多く、まるで”歩くビタミン”のように元気な色彩がお似合いになると思いました。

色と色のかけあわせと、ありきたりでなく遊び心を感じさせる”ちょっと一筋縄ではいかなそうな雰囲気”が、清水さんにも、この空間にも馴染むように感じています」(薬真寺)

今回は、全体的にゆったりとした雰囲気を感じさせる着付けにしたという薬真寺さん。なかでも特に意識したのは半衿なんだそう。

1983年公開の映画『細雪』(市川崑監督)で、佐久間良子さんが演じておられた次女・蒔岡幸子の"上品だけど凄みを感じさせる雰囲気"が今回のイメージに近いなと感じ、参考にしました」(薬真寺)

着物アップ
半衿をたっぷりと出して

「半衿は三河芯を使い、柄をたっぷり出せるよう、少しずらして縫い付けています。

地紋は、吉祥文様の一種で稲妻のようにも見える紗綾形。着物も帯も曲線的な印象が強いので、白以外の半衿を合わせるなら直線的なモチーフにしたいと思い、セレクトしました」(薬真寺)

着物は黒髪じゃなくてもいい。インナーカラーの効果的な合わせ方

清水さんはヘアメイクの際に、ひとつだけ気にしていたことがあります。それは、ワインレッドの色が映える個性的なインナーカラーを活かしてもらいたいということ。

清水ミチコさんのインナーカラー

「さっき、薬真寺さんがヘアスプレーを持っていたとき、もしかしてインナーカラーを黒髪で隠したいのかなと思っていたら、違ったんですね? 活かしてもらえる! 嬉しい。ありがとう」(清水さん)

「ライブを拝見したときにインナーカラーがアクセントになっていてとても素敵だったので、着物も、髪色が映える色味を選びました。『着物には黒髪』という方もいらっしゃるかとは思いますが、個人的にはもう少し自由に、好きな髪色・髪型で着物を自分サイドに寄せてくるのも良いのでは、と考えています。

最近はグレイヘア、ホワイトヘアをはじめ、清水さんのようにインナーカラーを入れたりハイライトを入れたりと、50代以降のヘアの楽しみ方が広がりましたよね。ぜひ、今回のアレンジも参考にしていただきたいです」(薬真寺)

タレント・清水ミチコさん、ピアノの前で

耳から下の髪をアップにし、襟足と首周りをスッキリさせ、トップとサイドの髪をふんわりとかぶせたボブのアレンジヘア。

着物の柄が多く入っている上前側方のヘアラインはタイトに、反対側はふんわりとボリュームを出しやわらかく仕上げました。

「このアシンメトリーなアレンジも、清水さんのライブを拝見したときに思いついたんです。着物の柄と強弱をつけたバランスにしたいなと」(薬真寺)

「え〜? そんなことを考えながらライブを観てくれていたなんて。わ〜、嬉しい。松任谷由実さんや矢野顕子さんのモノマネで、私のライブは一体何を観せられて笑っているのか、お客さんもわからなくなっちゃうというのに(笑)」(清水さん)

そして清水さんは、光沢のある着物が映えるモチモチとしたキメの細かな素肌の持ち主

ファンデーションにほとんど頼らない、薬真寺さんもびっくりするほどの薄付きでメイクを仕上げました。

ポイントは、美容家・神崎恵さんプロデュース『D-UP』ラッシュボーテのつけまつ毛。清水さんのナチュラルな魅力や透明感を活かすため、繊細な毛質で自然に仕上がるつけまつ毛にこだわりました。リップは、インナーカラーの色に寄せています。

薬真寺さんが「美肌の素といいますか、食生活で気をつけていることはありますか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきました。

タレント・清水ミチコさん

「『糖質はあんまり摂らない方がいいよ』と聞くと、本当に1週間ぐらい摂らないときもあります。私、人からいわれたことを全部素直に聞いて、実践するんですよ。

例えば、能町みね子さんの勧めるカゴメにんじんジュース プレミアムがあまりに美味しいと、すぐに買っちゃうし。ファンケルの『内脂サポート』やらドーナツ枕やら、健康に関するもので勧められたら、全部トライしています」(清水さん)

「お目にかかる前から素直な方なんだろうなと感じてはいたのですが、予想以上でした。そんな反応をされたら、周りの方々も勧めた甲斐がありますよね」(薬真寺)

「確かに『素直だね』って、昔から周りの人によくいわれていました。そういわれると嬉しいですね」(清水さん)

「健康のことだけでなく、ライブの内容などお仕事の面でもアドバイスを受けられるのでしょうか?」(薬真寺)

「アドバイスももらいますよ。ライブ後には、100人いたら100通りのお客さまの意見や感想が一気に寄せられるので、全部真に受けてしまうと大変です。だから、まずは自分の周りのスタッフから。身近な人の意見は特に、素直に取り入れるようにしているんですよ」(清水さん)

インタビュー編もお楽しみに

次回は、インタビュー前編を4月上旬に公開予定。

清水さんの着物との関わりや、着物が心にもたらすものについてお伺いします。

構成・文/横山由希路 yukijinsky
撮影/坂本陽 minami.camera
ディレクション・スタイリング・着付け・ヘアメイク/薬真寺 香 ___mameka_

※半衿、帯揚げ、帯締めはスタイリスト私物

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