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初めての訪問着を誂えに『工芸キモノ野口』へ 「京都できもの、きもので京都」vol.4

初めての訪問着を誂えに『工芸キモノ野口』へ 「京都できもの、きもので京都」vol.4

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古典柄ではあるけれど古風に留まらない。ただの写しではなく、モダンな解釈によって今に生かす。その絶妙は塩梅は野口ならでは! 古典を知り尽くした上で、現代の趣向に合う色柄を生み出す京友禅の老舗。その9月の展示会に伺いました。

2023.08.23

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大げさでなく、華やかさもほどほどの訪問着がほしい

きものを着始めて10年目。

私には必要がないと、これまで訪問着は持たずにきましたが、来年は初釜や新春歌舞伎、周年のパーティーなど、おめでたい席にも伺う予定です。

『工芸キモノ野口』へ

この9年間、カジュアルきものメインで通してきましたが、柔らかものに対する目が多少は鍛えられ、自分に合った小紋や色無地、付け下げも少しずつ揃えてきました

ただ、訪問着となるとハードルが高く、よく目にするそれが私には大仰かつ華美で、心の底からほしいと思えるものに出合えませんでした。

「だったら誂えては?」といわれ、リサーチを開始。

古典柄をモダンな感覚で今に生かす、「野口らしさ」に魅せられて

絶妙は塩梅は野口さんならでは

ここ数年、いろんな方とお話しする中で「やっぱり野口さん」「いつかは野口さん」というワードが私の耳に入って来るようになり、実際に呉服店で京友禅の小紋や帯を拝見することも増えました。

その度「ああ、わかる。その気持ち」と、私のなかの“野口ポイント”がどんどんアップしてきたのです。

絶妙は塩梅は野口さんならでは

古典柄ではあるけれど古風に留まらない。ただの写しではなく、現代的な解釈によって今に生かす。その絶妙な塩梅は野口ならでは!

古典を知り尽くした上で、私たちの趣向や生活スタイルに合う色柄を生み出す京友禅の老舗。その9月の展示会に伺いました

※呉服業者向けの会のみ(一般非公開)。お問い合わせは京都きもの市場まで。

9月の展示会に伺いました

野口家の歴史を物語る花洛庵での展示会

展示会が開かれた花洛庵(からくあん)は、京都市の指定有形文化財に指定されている貴重な住宅。伏見の小堀遠州の屋敷にあったとされる座敷を、野口家が購入し移築したものだそうです。

指定有形文化財に指定されている貴重な住宅

享保18年(1733年)、金谷安部兵衛により創業された呉服商は、当代で8代目。

280年を超える長きにわたり染め一筋に歩み、今なおきもの好きの憧れであり続ける野口。

指定有形文化財に指定されている貴重な住宅

優美で上品な古典柄のあしらい、白生地の上質さ、香しく澄んだ空気を思わせる染め色……

型友禅、糸目友禅、疋田、刺繍、金彩、辻が花などの技法は、それぞれ卓越した技術を持つ職人によって受け継がれ、追随を許しません。

指定有形文化財に指定されている貴重な住宅

ここに1日中いたい、ずっと見て浸っていたい」そんな時空間でした。

典雅で可愛い「源氏春秋」、素敵な柄にひと目惚れ

付け下げの着尺を見せていただき、それをベースに訪問着を誂えていただくことにしました。

たくさんの色柄から、心に留まったのが「源氏春秋」という柄です。

「源氏春秋」という柄

人物は描かれていません。

源氏が藤壺の宮に似た少女「若紫」を見つけた時の様子、雀の子が籠から逃げていく北山の光景が描かれた春

源氏が舞を演じていることを示す鳥兜が象徴的に刺繍された、祝賀会の御殿の様子は『紅葉賀(もみじのが)』で秋

「源氏春秋」という柄

それらが墨色のカチン描きで描写されています。

金彩、刺繍、摺り疋田も品よく美しく柄を彩ります。

この典雅さと可愛さのバランス、ひっそり盛り込まれた物語と季節感がたまりません。迷いのないひと目惚れでした。

迷いのないひと目惚れでした

付け下げをベースにボリュームアップ、唯一無二の訪問着に

的確なお知恵をいただきました

訪問着らしさを出すために、共の八掛、柄のボリュームアップを相談したり、白生地の地紋や染め色を検討したり、社長の野口誠さん、奥様の真里さんに的確なお知恵をいただきました。

的確なお知恵をいただきました

生地の染め上がりが11月末ぐらい、仕立て上がりが1月半ば予定。

この待つ時間すら愛おしく『源氏物語』を久しぶりに再読しています。いずれこの連載で披露したいと思っています。

当日の着こなし

当日の着こなし

シャリ感のある本塩沢は着心地が爽やかで、暑さの残る9月に袖を通すことが多い単衣です。

帯は本藍の型絵染め、大好きな岡本紘子さんの「空に花」。ところどころに見られる絞りが愛らしく楽しい名古屋帯です。

岡本紘子さんの帯を締めるとウキウキします。

当日の着こなし

夏の終わりから秋の初めに似合う露芝の刺繍半衿をつけて、帯締めも金茶で少し秋らしさを出してみました。

当日の着こなし
当日の着こなし

草履は「神田胡蝶」のもので、単衣の時期に活躍するさっぱりした素材感のホースヘア。

バッグは「handvaerker365」のナンタケットバスケットです。

当日の着こなし
当日の着こなし

誂えのメモ

生地は国産絹、「伊と幸」の松岡姫で作られた紋御戸代から、入子菱の地模様を選択。

地色はカチン描きがきれいに見える淡い色めがよいので、わずかに薄紫がかった淡い青をお願いしました。私の体型に合わせ柄の配置なども考えてくださるとのこと。

撮影/弥武江利子

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