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顔タイプと違う色柄が好き 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」vol.10

顔タイプと違う色柄が好き 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」vol.10

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着物スタイリストのコバヤシクミさんが、きものと読者をパーソナルスタイリング!「顔タイプとは違う色や柄が好き」というKさんに、どんなコーディネートが提案されるのでしょうか?!

前回のスタイリングはこちら!

2023.07.13

まなぶ

大人可愛く、スレンダーに! 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」 vol.9

着物スタイリスト コバヤシクミさんがご提案!

着物スタイリスト・コバヤシクミさんが読者の着物姿を丸ごとプロデュースする企画「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」。

コバヤシさん

これまで手がけた個人スタイリングは5000人以上。

顔のパーツの直線・曲線の組み合わせ等を測定分析し得意なテイスト・柄・色合い・素材を診断する「顔タイプ着物診断」や、その方の内面性をふまえた論理的なアドバイス、さらには思わずハッと目をみはるような色使いや小物合わせといったコバヤシさんの天性のセンスが加わり、みたことのない新鮮なコーディネートが次々と繰り広げられます。

さて今回はどんなコーディネートを提案してくださるのでしょうか?

和風美人なKさんをお迎え

今回お越しくださったのは、着物歴3年というKさん。

なんとこの企画のために名古屋から着物で新幹線に乗ってお越しくださったそう!

Kさんビフォー正面
Kさんビフォー後ろ姿

この日は、『越後おぐに くるまや工房』の透け感ある黒の小千谷紬の夏着物をお召しです。

帯は、藤色や青みの紫のラインが織りだされた博多帯。帯のラインとリンクさせた藤色の帯締めに、帯揚げも着物の柄と同じ紫に。草履も涼しげな夏仕様です。

Kさんビフォー帯周り
Kさんビフォー足元

「安心感があるので、いつも着物や帯の色とリンクさせた小物選びをしてしまいがち。今日は無難になりすぎない、コバヤシさんの色使いを学びたいです。

また、人から似合うと言われるのは水色やピンクといった薄い色で、自分でも肌の色や顔立ちから考えてそのほうが似合うとは思うのですが、実は……黒や紺といった濃い色が好きなんです!着物も粋な雰囲気が好き。

こういった場合、どんな着物を選べばいいのかコバヤシさんに教えてもらいたいと思っています」(Kさん)

これは”粋”好きな方必見のレッスンになる予感。コバヤシさん、教えてください!

事前ヒアリングに基づくコーディネート拝見!

Kさんのために、コバヤシさんが用意した3つのコーディネートがこちら。

(左)着物:友禅紗紬訪問着「瓢箪」 帯:羅織八寸名古屋帯「霞」
(中)着物:紗紬地染小紋「波濤市松紋」 帯:夏物 本場牛首紬 染め袋帯
(右)着物:友禅駒絽訪問着「露芝夏虫図 帯:天然繭絹芭蕉布染帯「風趣民芸色紙散らし」

「事前にKさんのお写真を拝見して、日本画や昔の小説に登場する女性のような、和風美人な印象を受けました。きっと通な雰囲気がお似合いになると思います。

またキャンプもお好きということで、自然モチーフの着物や帯も選んでみました」(コバヤシさん)

コーディネートを選ぶ

”初秋に向かう山里の情景”コーデ

1つ目のコーディネートは、芝草に夏虫が描かれた駒絽の訪問着に、絹芭蕉布の型染めの名古屋帯。

1つ目の着物

着物:友禅駒絽訪問着「露芝夏虫図」

「着物のキリギリスが写実的でとってもユニークですよね。帯は民芸調で、家屋や水車、蔓、花丸に真帆などが描かれた色紙の柄です。着物と帯で、初秋に向かう山里の情景といったストーリーをイメージしてみました」(コバヤシさん)

Kさんからは、

「とてもいい感じです!京都きもの市場さんのオンラインショップには、リユースでもこんなに質も状態のいいものがあるんですね。知りませんでした!」

とうれしいお言葉が。

「透け感があるので、中に着る襦袢の色によっても雰囲気が変わります

このグレイッシュなピンクの帯締めなど、Kさんの顔タイプに寄せて小物をやわらかい印象のものにするとメリハリが生まれますよ。

華やかさ、こなれ感を出したいなら多色の帯締めを」(コバヤシさん)

1つ目のコーディネートを試す

「小物選びに1時間以上悩むこともあるんです。特に多色の帯締め選びは難しそう」

というKさんにコバヤシさんは、

迷ったら好きな色が入っているものを選びましょう!直感でいいんですよ」

とアドバイス。心強いお答えです。

”霧立ち上る清らかな沢”コーデ

2つ目のコーディネートは、流水が市松模様に描かれた紗紬の小紋に、珍しい、夏牛首紬の染めの帯。

2つ目の帯

帯:夏物 本場牛首紬 染め袋帯

「着物と帯で、霧立ち上る清らかな沢のイメージが浮かび、キャンプのお好きなKさんにぴったりだと思いました」

とコバヤシさん。続けて、

「流水の柄で粋、また市松模様がモダンですが、輪郭がぼかしになっているので柔らかい印象で、Kさんの優しいお顔立ちにも強すぎることなくお似合いになると思います」

とにっこり。Kさんは、

「なんとも言えない色。アイスグレーっぽい着物にベージュの帯を合わせるんだ!と新鮮です。自分では思いつきません」

と驚いたご様子です。

2つ目のコーディネートを試す

2つ目のコーディネートを仮着装

試着後、「あれ?なんだか着痩せして見える気がします!」と声をあげるKさん。

コバヤシさんがほほえみながら、「それは、市松模様が正方形でなく縦長だからなんです」と答えます。

「夏物は淡い色合いのものが多いですが、小物も全部が淡い色合いだとぼんやりしてしまうので、帯締めはこのようなキリッとした色を持ってくると良いと思います」

と、紫と水色の多色の帯締めをすすめるコバヤシさん。

「お店に置いてあっても手に取らないと思ったのですが、着てみるととてもしっくりきます。濃い色の帯締めが入るとさらに引き締まって、とてもいいです」

とKさんもうれしそう。

くせもの!?3つ目のコーデ

3つ目のコーディネートは、瓢箪が友禅で大胆に描かれた紗紬の訪問着に、羅の帯。

「Kさんからは、日本画的な雰囲気を感じるので、こういった古典柄もお似合いになると感じました」(コバヤシさん)

Kさんは「これはくせものですね〜」とにやり。

3つ目のコーディネートを試す

「Kさんは、紺色もお好きと伺っています。帯締めで赤みを持ってくると、瓢箪の紺が際立って見えますよね。

この組み合わせなら、盛夏というよりは晩夏に着るのが素敵かなと思います」(コバヤシさん)

帯締めで雰囲気を変える

えっと驚く組み合わせも、着物ならではのお楽しみ

「ちょっと遊びを入れたいなら、こんな市松模様の帯締めもいいですよ」(コバヤシさん)

一番ときめいたコーデは?

さて、3つのコーデを比較し終えたKさん。

着物:紗紬地染小紋「波濤市松紋」
帯:夏物 本場牛首紬 染め袋帯

「一番ときめいたのはどのコーディネートですか?」とコバヤシさんが尋ねると…

Kさんは「これです!」と2つ目のコーディネートを指差しました。

「とっても顔映りがいいと感じました。また自分では手に取らないと思ったので、いつもと違う自分に変身できるのは?と期待を込めて」(Kさん)

う〜ん、変身した姿が楽しみです!

ヘアスタイルを作る道具たち

今回も着付けとヘアメイクを担当するのは薬真寺香さん。きものとのコラム「きもの、着てみませんか?」を連載中です。

メイクをする薬真寺さん

Kさんがご自身でまとめてこられた髪をほどきながら、すき毛(毛たぼ)を使っていらっしゃることに着目された薬真寺さん。

「なかなかご自身ですき毛を使われる方はいないのですが、とてもおすすめなんです!和髪ほどかっちりでなくても、今回の通好みの着物を着る時のように、相応のきちんと感が欲しい場合に、簡単にヘアスタイルが決まります

Kさんは「着物を着るようになると、たくさん写真を撮りますよね。それでヘアスタイルも研究するようになったんです。Instagramで発信している方の投稿を見ながら試したりしています」と楽しそう。

そして盛り上がったのが、薬真寺さんが使う小道具。なんと……髪をまとめるのに歯ブラシを使われていました!

ほんの少量のポマードをつけて、生え際に落ちている髪をなでつけるのに便利なんです。たったこれだけで、細部が綺麗に見えるんですよ」(薬真寺さん)

なるほど、すぐにでも真似できそうなテクニックです!

着付けをする薬真寺さん

続いては着付け。

「今回の着付けではほどよく衿を寝かせ、やや深めに合わせることで首から肩のラインが美しく見えるよう意識しました。女性らしく柔らかい雰囲気に仕上がります」(薬真寺さん)

Kさんは「ぴしっと体に吸い付くようで、とても気持ちがいいです!」と笑顔を見せてくださいました。

さて…

メイクと着付けを終えたKさんがこちら!

ヘアメイクと着付けを終えたKさん正面

Kさんお好みの粋で通なコーディネートですが、着物の市松模様がふんわりとぼかしになっているため、Kさんの優しいお顔立ちによくお似合いです。

また、縦長の市松模様と着付け時の衿合わせのこだわりから、すらりと首が長く見えます。

紫と水色のバイカラーの帯締めがアクセントになり、とってもおしゃれ!

ヘアメイクと着付けを終えたKさん後ろ姿

着物の流水柄と、ニュアンスカラーでまとめられた帯の霞模様が夏の川床や沢の水しぶきを連想させ……

まわりの気温が3度ほど下がったかのような、なんとも涼やかな着姿です!

Kさんヘア後ろ姿
Kさん日傘

大げさすぎないボリュームでぴっちりと下めにまとめられたヘアスタイルは、日本画や昔の小説に出てくる和風美人のマドンナを彷彿とさせます。

サイドには作家もののガラスのかんざしがあしらわれて。横顔も美しく絵になりますね!

ビフォーアフター拝見

あらためて、今回のビフォーアフターを拝見してみましょう。

ビフォー

Kさんビフォー全身

アフター

Kさんアフター

ビフォーでは、黒と紫が効いたコーディネートがキリリとクールな印象だったKさん。

アフターでは、Kさんのお肌の白さやお顔立ちの優しい雰囲気、日本画的な和風美人の要素が最大限に引き出され、誰もが振り返るような涼やかな着姿になりました。

微笑むお二人

「お店で受けるアドアイスとはまた違う、プロの色合わせやテクニックを教えていただくことができ、とても満足です!遠くから着たかいがありました!」

にっこりと笑顔を向けてくださったKさんのお言葉が何よりうれしく、ほっとしたスタッフ一同なのでした。

撮影/久野藍
文章/都留詩織

ITEM

記事に登場するアイテム

紗紬地染小紋「波濤市松紋」

友禅紗紬訪問着「瓢箪」

天然繭絹芭蕉布染帯「風趣民芸色紙散らし」

羅織八寸名古屋帯「霞」

薬真寺 香さん(本記事 着付け・ヘアメイク)のコラムもどうぞ!

よみもの

「きもの、着てみませんか?」

都留詩織さん(本記事 ライティング)のコラムもどうぞ!

よみもの

「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」

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