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台北の衛星都市も見どころ満載 「きもので歩く台北2022」vol.9(最終回)

台北の衛星都市も見どころ満載 「きもので歩く台北2022」vol.9(最終回)

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きもので旅に出る、旅にきものを持参する、そう考えただけでワクワクしませんか?どんな街に、どんなシーンに、どんなきもので?台湾・台北で人気のスポットを、ふらりきものでご紹介するシリーズも今月が最終回。ご紹介しきれなかった台湾の魅力も、ぜひみつけにきてください。

日本はすでに、雪の舞い落ちる冬へと季節が進んでいるころでしょうか。

今年の台湾はなかなか気温が下がらず、11月でも30℃を超える日が多く、袷きものの出番は本当にわずか。12月に入り、ようやく涼しさを感じる日が増えてきました。

さて「きもので歩く台北2022」と題した連載も今月で終わり…

コロナ禍で行き来の難しかった日台間も、以前のようにぐっと近くなるでしょう。ご紹介しきれなかった台湾の魅力も、ぜひみつけにきてください。

今回訪れたのは、新北市板橋。台北をぐるっと囲むのが新北市で、台北中心部から南西に位置するのが板橋(バンチャオ)です。

ベッドタウンのクリスマスイルミネーション

板橋は、台北市の衛星都市として発展してきました。

まず驚くのが、駅前のビル群。台北市内よりもモダンで都会的な雰囲気です。

東京でいうと立川のような都内への通勤圏で、交通の便の良い大きなベッドタウンといえるでしょう。

クリスマスのイルミネーション

クリスマスのイルミネーション

11年前からクリスマスのイルミネーションに力を入れていて、この時期の週末にはたくさんの人が集まってきます。

毎年趣向が凝らされていて、今年はディズニーとのコラボレーション。大きなスクリーンには『アナと雪の女王』のエルサを始め、さまざまなキャラクターが写し出されます。

広場の大きなツリーの前にはオラフが設置され、人工雪が降る演出も。

この日の気温は28度でしたが…はじめて南国でホワイトクリスマスを感じられた瞬間でした。

オラフの上に雪が降る演出も

オラフの上に雪が降る演出も

実は、ロマンチックな気分に浸りながらも、突然降り注ぐ雪に一瞬ひるみました。

なぜかお分かりでしょうか。

そうです!きものや帯が濡れてしまうことを懸念してしまったのです。

「正絹きもの」にはパールトーン加工をしてあったことにホッとする一方で、無防備な帯のために、屋根の下に避難するか否かの決断をせまられました。

何が起こるかわからない外出先、洗えるきものや、パールトーン加工、またちりよけなどの必要性を感じることとなりました。

クリスマスイルミネーションは年を越しても、当分撤去されないのも日本とは違うところ。3月を過ぎるころまでは楽しめると思います。

林本源園邸(林家花園)へ

林本源園邸

台湾には、日本と同じ地名や駅名の場所がいくつもあります。
新北市の板橋と、その隣の府中駅の間くらいにあるのが「林本源園邸」(東京の人には、駅名で混乱しそうですね)。

1853年頃、かつて台湾五大富豪と言われた林本源一族が巨額を投じて建設をした邸宅が「林本源園邸」で、敷地面積はじつに6,000坪を超えます。

園林建築は国の史跡に指定されています。

台湾では希少な清時代の園林建築であることから、国の史跡に指定されています。

「きものと」では日本統治時代の建物や日式にリノベーションされた建物などを「きものが似合う場所」としてご紹介してきましたが、実は私は、この林家のように歴史を感じさせる中華建築様式の建造物こそ、きものとのコラボレーションが美しくまた台湾らしい写真が撮れるのではと感じています。

残念ながら改修工事が行われています。

残念ながら改修工事が行われていて、広大な敷地の1/3程度しか見学することができませんでしたが…

回廊の壁や屋根の装飾も美しいものでした。

それでも十分に、栄華を誇った個人宅のすばらしさを堪能できるもので、池を挟んだ向こうには舞台が作られていたり、読書を静かに楽しむための部屋や、回廊の壁、また屋根の装飾なども美しいものでした。

私が台湾にきたばかりのころに一度訪れているので、その時の写真も1枚載せますね。

前回はアンティークきもので訪れたので、時間が止まったかのような、雰囲気のある写真が撮れました。

台湾にきたばかりのころの写真。

台湾にきたばかりのころの写真

それぞれのきものコーディネート

撮影は今回も、いつもの3人で。

今までなんとなく装いを申し合わせてきましたが、今回は連載も最終回ということで、それぞれが「好きな」きものコーディネートで集まることになりました。

陳さんは、袷の訪問着姿で。

台湾人の陳さんは、袷の美しい訪問着姿で。

暑い日でしたが、なかなか着る機会がないからとのセレクトで、このまま結婚式の披露宴会場に駆けつけられるようなコーディネートでした。

ただ、庭園を歩くため礼装用ではない草履であることを気にされていました。実際に礼装の場ではないので、「持参する」とおっしゃるのを軽くお止めしました。着姿をネット上にあげるのは、なかなか気を遣うものです。

ゆりえさんは、華やかな単衣の小紋で。

ゆりえさんは、華やかな洗える単衣の小紋で。

このきものは彼女にとてもよく似合っていて、美しさを引き立てあっているように感じます。

着物歴としてはまだ日が浅いはずなのに、着姿の美しさとコーディネート力には毎回感動させられています。

普子さんは櫛引紬の訪問着。

私は、袷にするか単衣にするか、ギリギリまで悩みましたが、体温が高くなりやすい更年期のため、無理せず単衣の、今年の春に着るチャンスのなかった櫛引紬の訪問着にしました。

ちょうどお手入れから戻って、パールトーン加工済みでしたので、白でも躊躇なく着ることができました。

きもの仲間の存在

4月から12月まで、この連載にお付き合いいただいた陳さんと、ゆりえさん。

陳さんは、出逢ったころからご自身で着付けをされていらっしゃって、私よりもずっと日本文化を深く学ばれてきた方です。

日本語が堪能なので、中国語を教えていただいたり、公私ともにお世話になっています。

先日は、陳さんの踊りの生徒さん方の着付けを任されるという貴重な経験もさせていただきました。

日舞の着付けのお手伝い。

日舞の着付けのお手伝い

忙しい日々のなかで「きものと」のお出かけにも意欲的で、いつも1番最初に次のコーディネートを発表してくれました。

陣さんとゆりえさん。

ゆりえさんとは、2020年の6月に私が開催した、ゆかた着付けの講座に生徒さんとしていらしてくださったのが初対面でしたが、あっという間に美しい着姿を体得されました。

当時自宅が近かったこともあり、なにかと気にかけてくださったことから、お互いの距離も一気に縮まり、ご一緒する機会が増えました。

持ち前のセンスの良さから毎回眼福で、彼女のコーディネートを見るのが楽しみになっています。

とても楽しい時間。

私は基本的には1人で行動することが多く、また夫との外出の際などにも単独できものを着ることがほとんどですので、複数名できもので集まる、きもので出かける機会は滅多にありません。

「きものと」を口実に、毎月最低一度はきもの姿で集まり、きもので各地を巡るのは新鮮な喜びであり、とても楽しい時間でした。

毎回お互いにたくさん写真を撮り合い、回を重ねるごとに写真の腕も写り方も、それなりに上達してきたように感じていますが、いかがでしょうか?

写真の腕も上達!

きものとART

ゆりえさんとは、つい先日、台湾で活躍する日本人写真家 近藤悟氏 のスタジオで行われた作品撮りの撮影にもご一緒しました。

板橋区のスタジオ
近藤悟氏の作品撮り。

こちらのスタジオがある場所も板橋区です。

「板橋435藝文特區」というアートセンター

「板橋435藝文特區」というアートセンター内にあるのですが、若い芸術家たちがスタジオを持ったり、展示やワークショップが行われていたり…

芝生の広場で家族が過ごしたりもできる、知る人ぞ知るスポットとなっています。

この日はきものでしたが、「影の記憶」シリーズの撮影で、シルエットしか映らない仕上がり。

「影の記憶」シリーズの撮影
個性的な写真

顔も色も映らないのに、いえ、情報量が少ないからこそ個性的な写真となる、という不思議な体験でした。

青黄色系のシルエット写真
きものならではの美しいシルエット

「きもの」の持つ、きものならではのシルエットの美しさをあらためて実感し、ますますきものが好きだなぁと写真を見ながら思いました。

最後に

「きものと」で書かせていただいて、2年半。来年はまた新たなテーマでの連載が始まります。

9回にわたってお付き合いいただいた陳さんとゆりえさんからもひと言いただきましたので、こちらに掲載します。

陳さんからのコメント

陳さん

「日本人ではないのに、どうしてきものを着るの?」とよく周りの人に聞かれてきました。

きものを着始めたもともとの理由は、日舞や日本茶道のお稽古に必要だったからです。

私は日本の文化が大好きで、真摯に続けてまいりました。

きものの着付けは、最初は動画や本などを見て覚えました。ですが、人前に出るためにもっと綺麗な着姿になりたいと思い、台湾人講師による本格的な着付け教室に通い、資格も取得。

きものをきっかけとして同じようにきものが好きな方々と出会え、ともにきものの知識を増やしたり、一緒にきもので出かけたりするのは、とても楽しいひとときです。

私にとって、きものがあること、きものを着られることは、充実した日々であることに繋がっています。

ゆりえさんからのコメント

ゆりえさん

私ときものの出会いは、コロナ禍で出国もままならなくなってきた2020年の夏のこと。友人の誘いで着付けを学ぶことになったのがきっかけでした。

20数年前に台湾で結婚式を挙げた際に母に振袖を着付けてもらって以来、きものを着ることはありませんでした。

海外に住んでいるから着付けなど無理だと思っていましたが、すばらしい機会に恵まれ、ヒロコ先生から教えていただくことになりました。

お稽古をひととおり終えたころに「練習でも着られますよ」と、ヒロコ先生から譲っていただいたのがこちらのきもの。そんなことから今回はこちらのきものをセレクトしました。

黒地にピンクの花柄が、鮮やかでありながら派手すぎないところが気に入っています。

台北のさまざまなところへの散策にあたり、季節やお天気に合わせてきものを選んだり、お出かけ前に3人で相談しあうのも楽しさのひとつでした。

あっという間に終わりを迎えましたが、楽しい大人の遠足に参加させていただきありがとうございました。これからも、台湾のさまざまなシーンできものを楽しもうと思います。

2023年からは、私、長谷川普子の新連載「きものとわたしのエイジング」が始まります。

引き続きよろしくお願いいたします。

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