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禁断の歌舞伎世界へと誘う、圧巻の一代記『国宝』 「きもの de シネマ」vol.66

禁断の歌舞伎世界へと誘う、圧巻の一代記『国宝』 「きもの de シネマ」vol.66

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銀幕に登場する数々の着物たちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だって着物で愉しみませんか。本日公開の『国宝』は、歌舞伎がテーマ。舞台衣裳としての着物はもちろん稽古着や不断着まで、まさに眼福です!

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2025.06.02

よみもの

よそさんが挑む!京都迷宮への攻略物語『ぶぶ漬けどうどす』 「きもの de シネマ」vol.65

壮絶な世界観で描く、芸道追求の一代記

ごきげんよう、椿屋です。

今月3本目となる「きもの de シネマ」でご紹介するのは、吉沢亮さんと横浜流星さんの競演で注目を集める『国宝』です。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

原作は、女形として歌舞伎に人生を捧げた男の生き様を壮大なスケールで描く芥川賞作家・吉田修一さんの同名小説。著者自ら3年間歌舞伎の黒衣を纏って楽屋に入った経験を基に書き上げられた渾身作です。

『悪人』(2010年/東宝)、『怒り』(2016年/東宝)に続き、3度目となる吉田作品の映像化に挑んだ李相日監督がメガホンを握りました。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

主演は吉沢亮さん。任侠一門の生まれながら、訳あって梨園の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げた喜久雄の50年を演じ切りました。その美貌の説得力たるや!

李監督に「この映画は、“吉沢亮ありき”で始まった」と言わしめただけのことはあります。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

ライバルとなる歌舞伎名門の御曹司・俊介を演じるのは、現在、NHK大河ドラマ『べらぼう』で主演を務めている横浜流星さん。その精悍さの威力たるや!

2025.03.14

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『べらぼう 江戸たいとう 大河ドラマ館』浅草に開館 「きものでミュージアム」vol.44

「流星のひたむきさやストイックな姿勢に、もう一度賭けてみよう」と心中するような気持ちで白羽の矢を立てたというのも納得です。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

互いに高め合いながら芸に青春を捧げ、いくつもの出会いと別れを得て、血筋と才能に振り回され、絶望に晒され、もがき苦しみつつも芸の道を突き進んでいくふたりの行く末とは――。

狂気にも似た熱量で繰り広げられる壮絶な世界観に、とくと圧倒されてくださいませ。

圧巻の存在感で魅了する、超豪華俳優陣

メインキャストを支える豪華な顔ぶれも、本作の見どころ。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

歌舞伎名門の当主・花井半二郎に渡辺謙さん。喜久雄の父親で長崎・立花組の組長は永瀬正敏さん。このおふたりが酒を酌み交わす冒頭のシーンは、渋さが天を突いていて惚れ惚れいたします。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

上方歌舞伎の当主・吾妻千五郎役で出演されている四代目中村鴈治郎がんじろうさんは、本作の歌舞伎指導も担当されています。

実は、主演の吉沢さんは撮影期間を入れるとトータル1年半もの期間、歩き方の基礎から歌舞伎の稽古をされたといいます。彼の緻密で繊細な所作は、鴈治郎さんの支えと寄り添いがあってのことなのです。

ちなみに、鴈治郎さんの息子さんである壱太郎さんが、お家元名・吾妻徳陽にて踊りの監修をされているのも見逃せません。

2023.02.18

インタビュー

文化の垣根を越えた試みに挑戦― 歌舞伎俳優 中村壱太郎さん(前編)

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

わたくしが最も瞠目したのは、当代一の女形であり人間国宝でもある歌舞伎役者・小野川万菊まんぎくを演じられた田中泯さんの存在感です。とくに『鷺娘さぎむすめ』の舞台シーンでは、その可憐さに息を呑みました。

おじいちゃんなのに!なんて可愛くて、なんて健気なの!!万さまの鷺の精は、ぜひとも大きなスクリーンで。

作品の華となる、五者五葉の着こなし

そして、「きものと」的に見逃がせないのが、女優陣の着姿です。

中でも、自身も梨園出身で、半二郎(渡辺謙)の後妻であり俊介(横浜流星)の実母である大垣幸子を演じた寺島しのぶさんの佇まいは、“ほんまもん”です。

「今まで生まれてきた私の環境や、蓄えてきたものを少しでも活かせていれば良いなぁと思っています」という言葉どおり、歌舞伎名門を支える女房を見事に体現されていました。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

喜久雄(吉沢亮)の幼馴染である福田春江(高畑充希)の献身。まだ無名だった彼の役者としての才に惚れて子を産む芸妓・藤駒ふじこま(見上愛)の健気。

歌舞伎役者・吾妻千五郎(中村鴈治郎)の娘・彰子(森七菜)のいじらしさもまた、喜久雄の魅力を引き立たせるのに欠かせない要素です。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

2025.01.17

よみもの

是枝裕和監督が描く花街の文化 Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』〈前編〉「きもの de シネマ」番外編

そして、私が誰より「恰好いい!」と唸らされたのが、立花組組長(永瀬正敏)の後妻・立花マツ役の宮澤エマさんでした。見よ、この艶やかさ!

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025「国宝」製作委員会

冒頭のみの短い出演ですが、刻んだインパクトは相当なものです。その衝撃をどうぞ劇場で体感してくださいませ。

2025.04.07

よみもの

歌舞伎俳優 ご夫人方の装い

2023.02.25

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先達の姿から“粋”を知る― 歌舞伎俳優 尾上右近さん(前編)

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