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 『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで』国立西洋美術館  「きものでミュージアム」vol.46

『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで』国立西洋美術館 「きものでミュージアム」vol.46

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『西洋絵画、どこから見るか?』が国立西洋美術館で開催中。サンディエゴ美術館と国立西洋美術館の西洋美術600年の名品を組み合わせ、作品をどのように楽しむかという新しい視点を提示します。ルネサンスから印象派までの貴重なコレクションを!

2025.04.23

よみもの

『ミロ展』東京都美術館 「きものでミュージアム」vol.45

見かたを変えて西洋絵画の鑑賞をもっと楽しく

企画展示室ロビー

企画展示室ロビー

今回は、国立西洋美術館で開催中の『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで』(以下「どこみる展」)をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。画像写真の無断転載を禁じます。
企画展示室ロビー

企画展示室ロビー

本展は、アメリカのサンディエゴ美術館と国立西洋美術館の共同企画によるものです。

サンディエゴ美術館からの49点(すべて日本初公開)と国立西洋美術館のコレクション39点の名品88点を組み合わせ、ルネサンスから19世紀に至る西洋美術の流れとその魅力を新たな視点で紹介します。

展示風景

展示風景

サンディエゴ美術館は、アメリカ西部を代表する美術館の一つで1926年に開館しました。そのヨーロッパ絵画コレクションは、当時アメリカ西部では随一の質と規模でした。特に、ルネサンス絵画やスペイン17世紀絵画の傑作を所蔵しています。

一方、国立西洋美術館は1959年、松方幸次郎のコレクションをもとに設立され、西洋美術史を網羅する幅広いコレクションを所蔵しています。

この展覧会では、教科書的な美術史解説にとどまらず、両館のコレクションを掛け合わせることで、新しい魅力を探ります。

マリー=ガブリエル・カペ《自画像》

右:マリー=ガブリエル・カペ《自画像》1783年頃 油彩/カンヴァス 国立西洋美術館

関連性のある作品同士が小グループやペアで展示され、制作地や画家の個性、時代による表現の変化などが一目でわかる構成です。

さらに、会期中は常設展においてもサンディエゴ美術館所蔵の絵画5点が展示され、コレクション同士のさらなる「対話」を楽しむことができます。

音声ガイドナビゲーターは、ディーン・フジオカさん!

本展の音声ガイドナビゲーターに、ディーン・フジオカさんが就任しました。ディーンさんは、サンディエゴ美術館が位置するアメリカ・西海岸への留学経験もあるそう。

「どこみる展」プレス内覧会の様子

「どこみる展」プレス内覧会の様子

プレス内覧会に、モノトーンの衣装でさっそうと現れ、スルバランの作品の前で本展の見どころについて語ってくださいました。ステキ!

「どこみる展」プレス内覧会の様子

「どこみる展」プレス内覧会の様子

ルネサンス期の名品が続々と

会場に入るとルネッサンス期の名品がずらりと並びます。

サンディエゴ美術館から祭壇画を含む多くの板絵が来日しており、国立西洋美術館所蔵の作品との共演も大変見ごたえのある展示となっています。

ルカ・シニョレッリとジョット

左:ルカ・シニョレッリ 《聖母戴冠》 1508年 サンディエゴ美術館、右:ジョット(ジョット・ディ・ボンドーネ)《父なる神と天使》 1328–35年頃 サンディエゴ美術館

たとえば《マグダラのマリアの回心》では、美しく着飾ったマリアを姉のマルタが諭す場面が描かれています。二人の肌の色や服装の対比が印象的。

ベルナルディーノ・ルイーニの時代はレオナルド・ダ・ヴィンチが大きな影響力を持っており、影響が見て取れますね。

《マグダラのマリアの回心》

ベルナルディーノ・ルイーニ 《マグダラのマリアの回心》1520年頃 サンディエゴ美術館

《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》は、新約聖書を題材に多くの画家が描いてきたテーマです。こちらの作品は、ティツィアーノが晩年に工房とともに制作したと考えられています。

《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》

ティツィアーノ・ヴェチェッリオと工房 《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》 1560–70年頃 国立西洋美術館

ジョルジョーネの《男性の肖像》は、人物描写や髪の毛の質感、陰影表現などの表現が緻密で、それ以前の他の作品と比べ際立っています。「サンディエゴのモナ・リザ」とも呼ばれるそう。

ジョルジョーネ《男性の肖像》ほか

左:ヤコポ・ティントレット 《ダヴィデを装った若い男の肖像》1555–60年頃 国立西洋美術館、右:ジョルジョーネ(ジョルジョ・ダ・カステルフランコ)《男性の肖像》 1506年 サンディエゴ美術館

ルネサンス絵画には、キリスト教信仰についての作品が数多く見られます。本展でも聖母子やキリストの姿が多く描かれており、それぞれの表現の違いを見比べる楽しみがあります。

両館のコレクションを一堂に会して展示することで、ルネサンス期の名作をまとめて鑑賞できる貴重な機会となっています。

祭壇画の展示風景

フランクフルトの画家 《アレクサンドリアの聖カタリナの神秘の結婚》 1500–10年頃 サンディエゴ美術館、右2点 ディーリック・バウツ(派)《悲しみの聖母》国立西洋美術館、ディーリック・バウツ(派) 《荊冠のキリスト》 国立西洋美術館

聖母子の展示風景

左:アドリアーン・イーゼンブラント(に帰属)《玉座の聖母子》国立西洋美術館 寄贈作品 、右:アドリアーン・イーゼンブラント《聖母子と天使》 1510–20年頃 サンディエゴ美術館

祭壇画の展示風景

左:ヨース・ファン・クレーフェ 《三連祭壇画:キリスト磔刑》1525年頃 国立西洋美術館、ヒエロニムス・ボス(の工房)《キリストの捕縛》 1515年頃 サンディエゴ美術館

バロック絵画の魅力も充実

スペインの静物画《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》(フアン・サンチェス・コターン作)は、本展の見どころのひとつです。

食材が題材でありながら、神秘的で荘厳な雰囲気を醸し出し、観る者を引き込みます。緻密な表現にもご注目を。

展示風景

フアン・サンチェス・コターン 《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》1602年頃 サンディエゴ美術館

コターンはスペイン独自の静物画のジャンル「ボデゴン」の始祖とされますが、僧籍に入ったため、静物画は6点しか現存せず、本作は中でも最高傑作とされています。

スルバランの《神の仔羊》は、神に捧げられる仔羊の姿を通じて、キリストの犠牲と愛、そして贖いを象徴的に表現しています。羊の頭に描かれた光輪が印象的で、深い信仰と瞑想を誘う作品です。

展示風景

左:フランシスコ・デ・スルバラン 《神の仔羊》1635–40年頃 サンディエゴ美術館、右:フアン・サンチェス・コターン 《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》1602年頃 サンディエゴ美術館

エル・グレコは、特徴的な色彩、細長い人物表現など独特なスタイルで人気があります。《悔悛する聖ペテロ》と《十字架のキリスト》は、彼特有の幻想的な色彩や、感情を強く引き出す描写が楽しめます。

展示風景

左:エル・グレコ(ドメニコス・テオトコプロス)《悔悛する聖ペテロ》 1590–95年頃 サンディエゴ美術館、中央:エル・グレコ(ドメニコス・テオトコプロス)《十字架のキリスト》1610–14年頃 国立西洋美術館

とりわけ印象深かったのは、スルバランの作品4点が並ぶ展示エリア。写実的でありながら神秘性を備えた彼の作品の世界観が一堂に味わえ、圧倒されます。

展示風景

左から フランシスコ・デ・スルバラン 《洞窟で祈る聖フランチェスコ》 1658年頃 サンディエゴ美術館、フランシスコ・デ・スルバラン《聖ドミニクス》 1626–27年 国立西洋美術館、フランシスコ・デ・スルバラン 《聖ヒエロニムス》 1640–45年頃 サンディエゴ美術館、フランシスコ・デ・スルバラン《聖母子と聖ヨハネ》1658年 サンディエゴ美術館

《聖ドミニクス》と《聖母子と聖ヨハネ》は、制作年に30年ほどの違いがあります。年代の差による画風の変化も興味深く、厳粛な初期の表現から感情豊かな後期の描写への変遷が見て取れます。

このほかにも、ルーベンスやダニエル・セーヘルスなど、見応えのある作品が続々と登場します。

展示風景

左から:ヤーコプ・ヨルダーンス(に帰属)《ソドムを去るロトとその家族(ルーベンスの構図に基づく)》1618–20年頃 国立西洋美術館、 ペーテル・パウル・ルーベンスと工房 《聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、 幼い洗礼者ヨハネ》 1625年頃 サンディエゴ美術館

ペーテル・パウル・ルーベンスの作品

左から:ペーテル・パウル・ルーベンス《眠る二人の子ども》 1612–13年頃 国立西洋美術館、ペーテル・パウル・ルーベンス 《永遠(教皇権の継承)の寓意》1622–25年サンディエゴ美術館、ペーテル・パウル・ルーベンス 《豊穣》 1630年頃 国立西洋美術館 文化庁より管理換

展示風景

左:ダニエル・セーヘルス、エラスムス・クエリヌス《花環の中の聖家族》 1625–27年 サンディエゴ美術館 、右:ダニエル・セーヘルス、コルネリス・スフ―ト《花環の中の聖母子》 1620–25年頃 国立西洋美術館

18世紀から19世紀の絵画も見逃せない

こちらには、18世紀の女性肖像画が3点展示されています。

展示風景

左から:マリー=ガブリエル・カペ《自画像》1783年頃 国立西洋美術館、マリー=ギユミーヌ・ブノワ 《婦人の肖像》 1799年頃 サンディエゴ美術館、ジャン=マルク・ナティエ《マリー=アンリエット・ベルトロ・ド・プレヌフ夫人の肖像》1739年 国立西洋美術館

左から2点の画家、カペとブノワは18世紀後半から19世紀初頭の女性が活動しにくかった時代にあっても、才能を発揮していたことが伺えます。

なかでも、マリー=ガブリエル・カペによる《自画像》は、本展のメインビジュアルにも使われており、自己への自信と個性が表現されています。ブノワは内面性を重視した肖像を、ナティエは神話的な理想美を描き分けています。

スペインの日常を鮮烈に描く画家で、「光と色彩の魔術師」とも称されるホアキン・ソローリャの《水飲み壺》は、常設展でも人気の高い作品。

今回は、サンディエゴ美術館から新たに2点が来日し、3点並んで展示されているのが見どころです。

展示風景

左から:ホアキン・ソローリャ 《ラ・グランハのマリア》1907年 サンディエゴ美術館、ホアキン・ソローリャ《バレンシアの海辺》 1908年 サンディエゴ美術館、ホアキン・ソローリャ 《水飲み壺》1904年 国立西洋美術館

また、サンディエゴ美術館所蔵の5点は常設展示室でも公開されており、ぜひ併せてご覧いただき、ほかの常設展の作品も一緒にお楽しみください。

ソフォニスバ・アングィッソーラ 《スペイン王子の肖像》

ソフォニスバ・アングィッソーラ 《スペイン王子の肖像》 1573年頃 サンディエゴ美術館

自分なりの絵画を見る楽しみを

展示風景

展示風景

日本では、オールド・マスター(主にヨーロッパで15世紀から18世紀の間に活躍した画家たち)や印象派以前の作品をまとめて鑑賞する機会は意外に少なく、本展はその貴重なチャンスです。絵画の技法や表現の進化がよくわかり、時代の流れを体感できます。

展示風景

左から:ウィリアム=アドルフ・ブーグロー 《羊飼いの少女》1885年 サンディエゴ美術館、ウィリアム=アドルフ・ブーグロー 《小川のほとり》1875年 井内コレクション(国立西洋美術館に寄託)

展示室には「どこみるポイント」や作品解説、グループ解説など鑑賞のヒントが豊富に用意されています。

気になるところだけを読むのもよし、じっくり読み込むのもよし。

初心者から美術愛好家まで、自分らしい鑑賞方法で楽しむことができる展覧会です。ぜひ時間に余裕を持って、じっくりと訪れてみてください。

展示風景

展示風景

この日の装い

この日の装い1
この日の装い2

「どこみる展」のメインビジュアル、マリー=ガブリエル・カペの《自画像》のブルーのドレスから着想を得て、ドレス風着物コーディネートにしました。

この日の装い 帯回り

洋風地紋の小紋にブルーの工芸染匠 成謙の染め帯、帯留と簪はパール調のものを選びました。

この日の装い お太鼓

2024.08.26

まなぶ

正派西川流・西川喜優先生 お稽古場での装い 春から夏の染め×染めコーデ「日本舞踊の愉しみ」vol.3

2023.05.08

まなぶ

のびやかな染め帯を主役に 「今井茜、季節の着物コーディネート」vol.2

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

ポスター画像

西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館

国立西洋美術館
https://art.nikkei.com/dokomiru/

日時:2025年3月11日(火)~6月8日(日)9:30~17:30(金・土曜日は~20:00)※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日、5月7日(水)
※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

■巡回
『どこ見る?どう見る?西洋絵画!』
京都市京セラ美術館
2025年6月25日(水)~2025年10月13日(月・祝)

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

ポスター画像

ヒルマ・アフ・クリント展

東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
https://art.nikkei.com/hilmaafklint/

日時:2025年3月4日(火)~6月15日(日)
10:00~17:00(金曜・土曜は10:00~20:00)※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日(5月5日は開館)、5月7日

ポスター画像

相国寺展―金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史

東京藝術大学大学美術館
https://shokokuji.exhn.jp/

日時:2025年3月29日(土)~2025年5月25日(日)
   10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
   
休館日:月曜日、5月7日(水)

ポスター画像

タピオ・ヴィルカラ 世界の果て

東京ステーションギャラリー(JR東京駅 丸の内北口 改札前)
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/

日時:2025年4月5日(土)〜2025年6月15日(日)
   10:00~18:00(金曜は~20:00)※入館は閉館30分前まで

休館日:月曜日(ただし6/9は開館)

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

◆ 読者プレゼント ◆

さて、恒例の招待券プレゼント!
今回は『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで』国立西洋美術館の招待券を5組10名の方にプレゼント!ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoto__

◆X
https://x.com/kimonoto___

※応募期間:2025年5月6日(月祝)まで

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