着物・和・京都に関する情報ならきものと

ピアノも着物も、骨盤が要。 タレント・清水ミチコさん(インタビュー前編)「きもの、着てみませんか?」 vol.9-2

ピアノも着物も、骨盤が要。 タレント・清水ミチコさん(インタビュー前編)「きもの、着てみませんか?」 vol.9-2

記事を共有する

タレント、ラジオパーソナリティ、エッセイストと、メディアによってさまざまな顔を見せながら、40年近く第一線で活躍し続ける清水ミチコさん。薬真寺 香さんによるスタイリング編では、東京友禅の最高峰と人間国宝による帯を華麗に着こなしてくださいました。「着物はお仕事で着させていただくことがほとんど」と語る清水さんに、お着物との関わりやネタ作り、着物が心にもたらす効用について伺いました。

2025.04.07

よみもの

ものまね女王と昭和にタイムスリップ! feat.清水ミチコ「きもの、着てみませんか?」 vol.9-1

子どもの頃に見た芸者さんの異世界感に見とれて

薬真寺香(以下、薬真寺):清水さんの着物の原体験というと、どのような情景が頭に浮かびますか?

清水ミチコさん(以下、清水さん):祖母が着物を着ていました。日常的に着物を着る世代だったので、着物を着てタバコを片手にパチンコを打つといった感じで。子ども心にちょっとおっかないイメージがありましたけどね。

薬真寺:お祖母さま、カッコいいですね。映画のワンシーンみたい。

清水さん:映画スターだと、黒澤映画での京マチ子さんの着物姿は素敵でしたね。モノクロの映画でも着物の色味やカッコよさが伝わるというか。あとは『細うで繁盛記』で、旅館の女将役で出ていた新珠三千代さん。彼女を観て、「働きやすい着物って、こうやって着るんだ……」と思っていましたね。

でも一番覚えているのは、芸者さん。実家が飛騨高山なので、観光地だけに芸者さんの数も多かったんです。

我が家はちょっとした洋菓子の販売をしていたので、若い芸者さんがかんざしをキラキラさせながら、2人組でいつも買いにくるんですよ。外国の人よりも、よっぽど異世界から来た人のような気がして。

もう見とれてしまって、「大きくなったら芸者さんになる」っていったら、親が困った顔をしていました(笑)。子どもは芸者さんの大変さがちっともわからないからね。

タレント・清水ミチコさんの和姿

清水さん:今日、着物を着て思ったんだけど、私って体型的に大きい方じゃないですか。以前、雑誌連載で”溶け込み”という一般人に溶け込むネタをやっていて、小柄な舞妓さんたちのなかに紛れていたら、私だけ悪目立ちしてしまって。着物は小柄な方が似合うということはありませんか?

薬真寺:「お着物は小柄な方が……」というお声を耳にすることもありますが、背が高い方が着たほうが良さが活きる着物もあると感じています。

清水さん:なるほど……

着物の帯を締めるとメンタルが安定する!?

薬真寺:お仕事で着物をお召しになって、印象的だった出来事はありますか?

清水さん:『夢で逢えたら』のコントですかね。

薬真寺:清水さんの他に、ダウンタウンとウッチャンナンチャンのお2人と、野沢直子さんが出られていたコント番組ですね。

自然体の清水ミチコさん

清水さん:さっきの新珠三千代さんじゃないですけど、私が仕事で着物を着ても、案外苦い思いをしないでいられたのは、「生活密着型」の役柄が多かったからじゃないかと思います。『夢で逢えたら』のコントは、下町の家族が舞台で。私が女将で、浜ちゃんが店の主人。野沢さんとナンチャンが子どもだったかな?

薬真寺:普段、なかなかお召しにならない着物を着ることで、気合いが入るとか、スイッチが切り替わる、みたいなことはあったりしますか?

清水ミチコさん・着物の思い出

清水さん:実は、弟が小唄を習っていて。彼は「着物を着て、丹田の位置で帯を締めると、肝が座って精神的に落ち着く」っていうんですね。「だから日常でも、緊張するときは、帯を締めるイメージをしてから人前に出る」といっていました。

でも、彼のいう通りかもしれないなと思って。昔の日本人は着物を着て、座って生活することが多かったわけだから。

薬真寺:柔道家の阿部詩さんも同じようなことをおっしゃっていました。着物の帯をギュッと締めると、シャキッとして気合いが入る。そこが柔道着と近い気がする、と。

清水さん:着物の帯締めは、メンタルに直結しているんでしょうね。あと着物を着ると、骨盤も自然と立ちますもんね。骨盤が立っていないと、そもそも着物を着て座れないというか。

薬真寺:骨盤が丸まった状態でも着て座れないことはないですが、着崩れやシワに繋がりやすく、疲れも出やすいと思います。そして丸まった姿勢で長時間着物を着ていると、みぞおちの辺りが圧迫され苦しくなってしまう。数年前から着物と姿勢の関係への興味が深まり、ピラティスやストレッチ、骨の調律など色々試しては研究しているんですが、やはり骨盤は着物・着姿にとっても重要なポイントだなと感じます。

清水さん:骨盤を立てる、で思い出したんだけど、私、自宅のピアノの前に、「骨盤を立てろ」って書いた紙を置いているの。骨盤が立っていると、ピアノが楽に弾けるらしくて。

矢野顕子さんのような達人の方は、ピアノを弾きながらいつでも力が抜ける。骨盤を立てることと余計な力を抜くことは、実は関係しているんじゃないかと思うんですよ。ほら、ピアノを弾いていると、ついついがむしゃらになっちゃうからね(笑)。

インタビュー

柔道金メダリスト 阿部詩さん インタビュー

女性は老化を恐れない。健康な内面を持ち続けたい

薬真寺:ご自宅のピアノの話が出ましたので、弾き語りのネタの話を伺いたいのですが。ピアノのネタは何気なく弾いたり、歌ったりしているうちに、形になっていくものなのでしょうか?

清水さん:ピアノネタは、自分がまず弾けるかどうかから考えますね。弾けそうな曲を見繕って、後からネタとなる言葉を作っていきます。

結城紬を纏って。タレント・清水ミチコさん

薬真寺:ピアノを使わないネタは、ネタ帳のようなところに書くこともありますか?

清水さん:「ネタ書き」の時間をちゃんと作って、机の上で手帳みたいなところに書いていますね。最近はスマホにメモすることも多いんですが。あとはテレビに出ている方を観て、ものまねのヒントにすることもあります。「この人になりたい!」って思って(笑)。やっぱり政治家とか聖職者とか、権力がある方のものまねはオイシイと思います。

薬真寺:「権力がある方はオイシイ」という言葉が印象的です。

清水さん:パワーのある方だと、ものまねをしても誰も怒らないですもんね。いじめみたいな構図にもならないし。だから、小池百合子さんのような強い人がどんどん出てこないかなと思っているんですよ。もちろん、マネージャーや周りのスタッフにネタを見てもらって、「これくらいの毒気なら人前で披露しても大丈夫」と、チェックしてもらって。ギリギリOKな毒気を攻めているんです(笑)。

薬真寺:言われてみれば清水さんのレパートリーには、桃井かおりさん、瀬戸内寂聴さん、小池百合子さん、室井佑月さんと、パワフルな印象の女性が多いですね。

清水さん:たしかにそうなのかも。ものまねをさせていただく方もパワフルなんですが、私の周りにいる女性も、歳を重ねてもどんどん元気になっていくんですよ。やっぱり男性よりも女性の方が、老化を恐れていないっていうのかな?

先日も森山良子さんとお会いしたら、若作りとかそういうことではなくて、元気で健康的な内面がものすごく伝わってきて。女の人の持ち前の明るさって、努力して得たものじゃないんですよね。もともと個性として持ち合わせている。だから私も、そういう健康な心を大切にしていきたいなと思いました。

ライブは楽しい。お金を払ってでも出続けたい

薬真寺:清水さんはライブでAdoさん、Official髭男dismさんなど、最近のアーティストのものまねもされていましたよね。私は、あのちゃんのものまねが大好きでした。いつもどんな気持ちでネタを作ってらっしゃるのか、気になります。

清水さん:以前、養老孟司先生と古武術研究家の甲野善紀さんと鼎談させていただいたことがあって、そのときに養老先生が「自分にとって幸せな瞬間を考えたら、無心になって大好きな虫を探しているときだ」とおっしゃっていて。それを聞いたときに、「ああ、私がネタを作っているときと同じだ」と思ったんですよね。

ものまねを考えているときは、お客さんが笑っている姿が見えるというか。夢中になっているし、「ここまで詰めたから、何とか仕上げたい」という欲も出てくるんですよ。

清水ミチコさん

薬真寺:ネタ作りの最中にお客さまの笑っている姿が浮かぶって、素敵ですね。

清水さん:でもお客さんって、すごく貪欲なんですよ。「ちょっと風邪気味で……」みたいな、私の勝手な都合は許されないというか。いつも「ベストを見せろ!」という思いを感じます。

だからいつも張り切って、1つひとつのネタを「今日初めて舞台で披露するんだ」という気持ちでやっています。新しいネタと古いネタを入れ替えたりして構成を変えて、毎回気持ちを入れ替えて。

やっぱりライブは楽しいから! もう、「お金を払ってでも出たい!」って、いつも思っているんですよ。

インタビュー後編もお楽しみに

次回は、インタビュー後編を4月中旬に公開予定。

ハマると怖い“着物沼”や、清水さんのデビュー当時の振り返り、第一線で活躍し続ける秘訣について伺います。

構成・文/横山由希路 yukijinsky
撮影/坂本陽 minami.camera
ディレクション・スタイリング・着付け・ヘアメイク/薬真寺 香 ___mameka_

※半衿、帯揚げ、帯締めはスタイリスト私物

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

  • デイリー
  • ウィークリー
  • マンスリー

HOT KEYWORDS急上昇キーワード

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する