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大人可愛く、スレンダーに! 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」 vol.9

大人可愛く、スレンダーに! 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」 vol.9

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着物スタイリストのコバヤシクミさんが、きものと読者をパーソナルスタイリング!ピンクを使った「大人可愛い」コーデと、誰もが気になる「スレンダーにみせるコツ」をレクチャーします!

前回のスタイリングはこちら!

2023.01.13

まなぶ

濃地フォーマルを”私らしい”母コーデに 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」 vol.8

着物スタイリスト コバヤシクミさんがご提案!

着物スタイリスト・コバヤシクミさんが読者の着物姿を丸ごとプロデュースする企画「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」。

コバヤシさん

これまで手がけた個人スタイリングは5000人以上。

顔のパーツの直線・曲線の組み合わせ等を測定分析し得意なテイスト・柄・色合い・素材を診断する「顔タイプ着物診断」や、その方の内面性をふまえた論理的なアドバイス、さらには思わずハッと目をみはるような色使いや小物合わせといったコバヤシさんの天性のセンスが加わり、みたことのない新鮮なコーディネートが次々と繰り広げられます。

さて今回はどんなコーディネートを提案してくださるのでしょうか?

夏の爽やかコーデでコバヤシさんご登場

コバヤシさんの今回の着物は、夏らしい爽やかなブルーの小千谷縮。緯絣(よこがすり)で織りだされているのは、どこか洋風な雰囲気を感じさせるボタニカル柄です。

ブルーの襦袢

長襦袢にもこだわりのあるコバヤシさん。今日は着物と同じ、ブルーの麻の長襦袢だそう。

夏の着物は透けるので、あえて同じ色を重ねることで着物の色がさらに鮮やかに引き立つんです」

とにっこり。ちなみにこの着物を晩夏に着る際には、ワントーン落ち着いたグレーやベージュの長襦袢を合わせるのだそう。

「カラーの麻の長襦袢を楽しむ人が増えていて、最近は黒や茶も人気です」

タイシルクの半幅帯

帯はタイシルクのリバーシブルの半幅帯。表はオレンジ、裏は東南アジアらしいビビットなピンクです。

帯の長さが4m以上とたっぷりあるので、いろいろな帯結びのアレンジで……

今回は『割角出し』という結び方にしてみました。簡単なのに凝って見える、初心者の方にもおすすめな結び方です」

そして当日スタッフの間で話題になったのは、作家ものというレモンイエローの江戸切子の帯留め。

ガラスの帯留め

「全体からするとほんのちょっとの面積なのに、このレモンイエローが効いてる!」と、手で覆い隠してみたり、みんなで遠くから見てみたり。

「夏の着物は寒色系が多いですが、ほんのひとさじのイエローを投入すると、寒色系きものの爽やかさをアップする効果があります。サラダにレモンをきゅっと絞る、あの感覚です!

素材も、ガラスや水晶など、透明感のある素材は涼しげに見えますよね」

帯締めも、二分紐とちょっと細め。

「三分紐でももちろん良いのですが、二分紐は、よりスッキリと視覚的涼感を誘う気がします」

なるほど、コバヤシさんの装いからもすでに学びがいっぱいです!

大の音楽好き!Hさんをお迎え

今回お越しくださったのは、着物歴約半年というHさん。

クラシックのコンサートによく行ったり、ご自身でもエレクトーンを演奏されたりと、大の音楽好きだそう。

Hさんビフォー全身
Hさんビフォー後ろ姿

よく見ると、アラビア風の建造物の地紋がエキゾチックな透け感のある着物に、この日はじめて締めるという、音符柄が珍しい白の博多帯。

そこに、オレンジや黄色が組み上げられた夏用の帯締めを合わせました。

音符柄の根付け
Hさん足元

帯だけでなく、髪飾りや根付、草履の鼻緒までが音符モチーフ!

Hさんならではの、音楽愛あふれるコーディネートです。

「大人可愛い」3コーデをご提案!

そんなHさんのための今回のコーディネートのテーマは「大人可愛い」

さらにHさんからは「スレンダーに見えるコツも教えてほしい」というリクエストも。

これはきっと誰もが気になるテーマ……!コバヤシ先生、お願いします!

コーディネートを選ぶ

大人のピンク。着こなすコツは?

1つ目のコーディネートは、やわらかなピンクに秋草が描かれた生紬の付下げに、横段のぼかしに源氏車が織りだされた絽の袋帯。

「付下げなのでセミフォーマルではありますが、かしこまりすぎずさりげない素材なので、ワンランク上のレストランやおすましして街に出かける時におすすめのコーディネート。

帯に描かれているのは源氏車、現代のタイヤですね。乾燥してヒビが入らないよう、水につける様子が描かれているんです」

とコバヤシさん。

「今回は『大人可愛い』がテーマなので、ピンクを取り入れたコーディネートを組んでみました。

可愛い色であるピンクを大人が着こなすコツは、例えば着物がピンクなら、帯は一段落着いたトーンのものを選ぶこと

そしてスレンダーに見せるポイントとしては、柄がたくさん描かれているものを選ぶこと。というのは、体の線より柄に視線を分散させることができるからです」

と教えて下さいました。

1つ目のコーディネートを試す

1つ目のコーディネートを仮着装

実際に体に当ててみたHさん。

「なるほど、着物と帯は一見バラバラの色味に見えますが、『アンバランスの中の美』とでも言いますか、組み合わせてみると調和してびっくりです。上級者の組み合わせですね」

と感心したご様子。

1つ目のコーデ

色の魔法で引き締め効果も

2つ目のコーディネートは、青みよりのピンクに友禅で茶屋辻が描かれた絽の訪問着に、よろけ織りの大倉織物の博多織の帯。淡いブルーや白のぼかしのなかに、箔糸で模様が織りだされています。

1つ目のコーディネートの着物
1つ目のコーディネートの帯

「日常の少しきちんとみせたいシーンで楽しむのにぴったりな、とても涼し気な色合わせのコーディネートです。絽の着物は、気温の高いエリアで6月中旬~後半から出番があります」

2つ目のコーディネートを試す

2つ目のコーディネートを仮着装

「この着物はピンクですが、青みより。寒色は引き締まって見える効果があります。

それから、帯締めも大切です。

夏の着物は全体に淡い色のコーディネートになりがちですが、帯締めに濃い色を持ってくるとコーディネート全体をキュッと引き締めてくれますよ

コバヤシさんが濃い色の帯締めを当てると、Hさんはびっくりしたご様子。

「コバヤシさんのおっしゃるとおり、存在感のある帯締めを当てると全体に淡いコーディネートが引き締まりますね」

濃い色の帯締めでコーデ

3つ目のコーディネートは、たっぷり刺繍が施された黒地の付下げに、立涌に重ねた格子と花の模様の淡ピンクの袋帯です。

3つ目のコーディネートの着物

「立涌とは水蒸気が立ちのぼっていく様子を意匠化した模様。見えるか見えないかほどのゆらめきまでモチーフにしてしまうなんて、日本人の感性って素敵ですよね。

この着物はドレッシーなので、およばれのパーティなど、少しあらたまった場所へ行く時にもいいですね。Hさんのお好きなコンサートにもいいと思います。

温暖化の進む現代で、単衣は4月、5月、6月、9月、10月と長く楽しめます。淡い藤色やブルー、ピンクなどのカラー襦袢を合わせてもおしゃれですよ」

3つ目のコーディネートを試す

3つ目のコーディネートを仮着装

Hさんは、

「1つ目、2つ目のコーディネートとはまた全然違った印象ですが、同じく『大人可愛い』コーディネートですね。刺繍は人の想いが入っているようで大好きなんです。この着物はたっぷりの刺繍がとても贅沢」

と鏡を覗き込みます。

「黒はやはり引き締め効果抜群!そこに『大人可愛らしさ』をプラスするためにピンクの帯を合わせました。

ここに白い帯締めもいいんですが、この藤色の帯締めのように青みのある色を持ってくると、華やかさもありつつさらに引き締め効果が狙えますよ」

紫の帯締め

「メリハリをつけたければ、もう一段濃い紫でも。紫の帯締めに、緑の帯揚げ。この2色は、私の鉄板の組み合わせなんです」とコバヤシさんのお見立て。

Hさんも、「紫と緑!意外に思えますが、合わせてみるととてもおしゃれ!びっくりです」とうれしそう。

紫の帯締め
緑の帯揚げ

Hさんが選んだのは…?

さて、3つのコーデを比較し終えたHさん。

「どれを選びますか?」というコバヤシさんの問いかけに、「変身するならこれ!」そう言って指さしたのは……

2つ目のコーディネート。迷いのない決断です!

決定したコーディネート

このコーディネートを選んだ理由を尋ねると、

「涼しげで今の季節にピッタリ。初めての絽の着物にチャレンジしてみたいと思いました」

と微笑むHさん。さて、どんなふうに変身されるのでしょうか?

ヘアメイクでも小顔効果を

今回も着付けとヘアメイクを担当するのはおなじみ、薬真寺香さん。きものとのコラム「きもの、着てみませんか?」を連載中です。

メイクをする薬真寺さん

「今回のコーディネートに合うよう、フェミニンなヘアメイクを施していきます」と薬真寺さん。

「着物にもよりますが、ピッチリしすぎないヘアが可愛らしい雰囲気を作ります

Hさんはチークがお似合いになるので、忘れずに。眉はトレンドのピンクのアイブロウで描きました。前髪の隙間から眉が少し見えた時に、明るい印象になるんです。リップは赤みのあるブラウン。1mm上にオーバーめにぼかすことで頬の面積を少なく見せ、小顔効果を狙います」

また、「前髪のサイドを少し伸ばし、サイドの髪とつなぐようにカットしてもらうと小顔効果が狙えますよ」と、ためになるアドバイスも!

Hさんは「ヘアもメイクも”ひと手間”を惜しまないことが大切なんですね。プロから色々なアドバイスを聞けて、とてもありがたいです」と楽しげです。

着付けをする薬真寺さん

続いて着付けです。

薬真寺さんにスレンダーに見える着付けのコツを尋ねてみると……?

ひとつひとつの工程を丁寧に、キュッと締めていくこと。これに限ります。そうすればスレンダーに見える上に、一日中着崩れません」

とのこと。なるほど!確かに、一手一手にしっかりとテンションがかけられているのが分かります!

Hさんの「大人可愛い」が完成!

さて、メイクと着付けを終えたHさんがこちら!

Hさまアフター

見ているこちらまで涼しくなるような、清涼感漂う着姿が完成しました。

透け感のあるピンクの着物と爽やかなブルーの帯。そこにすっと入る帯締めの紫のラインと、帯揚げの明るい緑の組み合わせがおしゃれでこなれた印象です。

着物の柄と帯締めの引き締め効果に加え、裾すぼまりの美しい着付けによりすっと背筋が伸び、立ち姿がすっきりした印象に。

ピンクの着物も決して無理がなく自然で、とてもお似合い。

Hさんの内面の可愛らしさがあらわれた、まさに「大人可愛い」コーディネートです。

ヘアスタイルもステキ

軽く巻いてふんわりとまとめた髪がフェミニンな印象で、着物ともよくマッチ。

耳を隠し下の方でまとめることで、自然な大人の色香が漂います。

ビフォーアフター拝見

あらためて、今回のビフォーアフターを拝見してみましょう。

ビフォー

Hさんビフォー全身

アフター

アフター

どちらもHさんの内面がよく映し出されたコーディネートですが、アフターではHさんの持つ可愛らしさや上品さ、フェミニンさといった一面が引き出され、新たなご自身に出会えるコーディネートになったのではないでしょうか。

「今日はとても学びが多かったです。自分に似合う色を知ることができましたし、想像もしなかったような色の調和に出会ったり、色の濃淡でコーディネートの雰囲気ががらりと変わることも知りました。これからもコンサートやお食事にも着物を着て出かけ、もっともっと親しんでいきたいです」

微笑むお二人

最後は、「将来は着物を着た可愛らしいおばあちゃんになるのが目標です」と語ってくださった、笑顔の素敵なHさんでした!

撮影/TADEAI 久野藍
文章/都留詩織

ITEM

記事に登場するアイテム

着物:友禅生紬地訪問着 「光琳垣に秋草」

帯:【姫野織物】 西陣織絽袋帯「段暈し地源氏車紋」

着物:絽訪問着「風趣花鳥茶屋辻紋」

帯:【大倉織物】 博多織袋帯 「光風」

着物:総刺繍付下げ・単衣

帯:【織善】絽袋帯 「立涌斜め格子花文」

薬真寺 香さん(本記事 着付け・ヘアメイク)のコラムもどうぞ!

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「きもの、着てみませんか?」

都留詩織さん(本記事 ライティング)のコラムもどうぞ!

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「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」

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