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生活の風景に色を添える、野菜や果物たち。〈八月 四季 扇面はりまぜ屏風〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.8

生活の風景に色を添える、野菜や果物たち。〈八月 四季 扇面はりまぜ屏風〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.8

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日本画家・定家亜由子さんが扇のかたち(扇面)に描く自然の美をお届けする連載8回目は、賀茂茄子をはじめとする“絵になる野菜”について。毎年10月1~5日に開催される北野天満宮の秋祭り「瑞饋ずいき祭」の魅力も併せてご紹介します。

2026.07.05

カルチャー

菊水鉾のゑびすさまへ、祈りを籠めて――。〈七月 菊水えびす扇〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.7

“絵になる野菜”の代表格・賀茂茄子

八月の扇面画は、賀茂茄子。

豊作を祈願し、七月に七夕の装飾に使われた茄子は、八月にはお盆のお供えとなり、更には、牛に見立てたお精霊さんの乗り物にもなって夏に大活躍します。

賀茂茄子写生

賀茂茄子は、数ある京野菜※の中でも有名なもののひとつ。

皮はやわらかく、実がびっしりときめ細かい賀茂茄子は、夏の大好物のひとつで、甘く煮た白味噌の田楽でいただくのが、とびきりのごちそうです。美しい紫と、何よりまあるい見た目もたまらなくかわいらしい、“絵になる野菜”です。

※京野菜……京の伝統野菜および京のブランド産品。明治以前の導入栽培の歴史を有する、京都特産の野菜のこと。現在、現存野菜36種、絶滅野菜2種、準ずる野菜3種の合計41種類が認定されている。

夏の風景

『四季 扇面はりまぜ屏風』より、賀茂茄子など夏の風景部分

野菜や食材の絵を描く、飾るというのは珍しいと思われるかもしれません。

けれど、京都の骨董屋さんなどで近代から古い絵画を紐解いていくと、食材にもなる身近なお野菜や果物、お魚などを描いた作品が意外と多いことに気づきます。統計をとったわけではありませんが、私の印象では、お野菜や野の花など日常の何気ない生活の風景を切り取った作品は、東京画壇よりも京都の日本画家の仕事に多いように感じています。

京都を代表する絵師のひとり、伊藤若冲(1716〜1800)も、野菜の絵を生き生きと描きました。

若冲の出自は、錦市場の青物問屋の主人。釈迦の入滅を描く涅槃図を、若冲はすべて野菜と果物で擬人化した作品として遺しています。中央のお釈迦さまはなんと、大根。死を悼む諸菩薩や羅漢などを、様々な果物や野菜で描いているのです。

若冲の絵

伊藤若冲生家「桝屋」跡がある京都錦市場の高倉通側入口には「伊藤若冲生家跡」のモニュメントがある

美しいと思う気持ちと描きたい衝動

私も、野菜の絵を描くことが大好き。花を描くのと全く同じように、美しい造形のものとして捉えています。どうして野菜を?と訊かれることもありますが、私の答えはシンプルです。

きれいだから、美しいから。愛おしいから。そのことで、心を動かされたからです。心底美しいと思うことと、描きたいということは、私の中では同じ場所にスイッチがあるように感じています。

イチジク

子どもの頃、お台所で母が夕飯の支度をするのを眺めるのが大好きでした。特に、野菜を洗って、とんとんと包丁で切っていくところ。

土をまとった野菜の造形にも見惚れますが、まな板の上で星形のオクラやライオンのたてがみのように見えるゴーヤの断面、表からは想像もできないような断面が現れて、料理に合わせて新たなかたちになっていく——その変容が、たまらなく好きでした。

湯がかれた野菜の緑や赤がさらにつややかに、鮮やかな色になる。それを氷水に上げて、色を閉じ込める……。魔法のようで、いつも釘付けになっていました。

四季折々の風景は、生活の中にもあります。身近なものに美しさを見出して描くこと——そこに、極上の幸せを感じます。

写生

小学2~3年生の頃に描いた茄子などの野菜や身近なものの写生など

2022.07.21

着物の基本

夏の装いの醍醐味を感じる葉月 「月々の文様ばなし」vol.5

穂張月の亜由子好み

八月のお精霊さんの乗り物も、なすびときゅうり。その豪華バージョンとして見える野菜のお御輿。

北野天満宮の「瑞饋ずいき祭」(正式には、「北野祭 神幸祭・還幸祭」)にて出会うことができる「ずいき御輿」です。

御輿

「瑞饋祭」は、室町時代から続く北野天満宮の秋祭り。稚児や雅楽演奏を伴う華やかな巡行も見どころ

「ずいき」とは、里芋の茎で、京都ではスーパーや八百屋さんにも並ぶメジャーなお野菜。

瑞々しく艶やかな赤ずいきと白ずいきの屋根、獅子頭は唐の芋の頭芋、赤茄子・五色唐辛子・茗荷など本物のお野菜を使った装飾品――中でも、ひときわ鮮やかな紫の柱は千日紅です。

このお祭りは、平安時代に西ノ京の人々が五穀豊穣を感謝し、新穀や野菜、乾物を飾りつけ、菅原道真公の神前にお供えしたことが始まりで、北野天満宮の社殿が再建された1607年にお御輿の形となったのだそうです。

個性的なお御輿に実際に出会えるのは、八月も終わってから、10月1~5日に行われる「瑞饋祭」にて。4日の「還幸祭」まで、お御輿は西ノ京の御旅所に展覧され、間近に見ることができます。お御輿が御霊をのせて北野天満宮に戻った後、装飾は土に還るのです。

2024.08.03

エッセイ

初秋の候 ―立秋から処暑 「感じたい、七十二候」vol.1

構成協力/椿屋

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