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菊の香立ち昇り、深まりゆく秋に。〈九月 菊水かほる〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.9

菊の香立ち昇り、深まりゆく秋に。〈九月 菊水かほる〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.9

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日本画家・定家亜由子さんが扇のかたち(扇面)に描く自然の美について、移ろう季節を感じながら胸の内を綴る連載。9月は、ご縁の深い御靈神社への想いと共に、菊花に寄せる気持ちや500年以上愛され続ける銘菓「唐板」のお気に入りポイントをご紹介します。

2026.08.05

カルチャー

生活の風景に色を添える、野菜や果物たち。〈八月 四季 扇面はりまぜ屏風〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.8

インスピレーションを与った御奉納舞

九月九日は、重陽の節句。

「菊の節句」や「大人の雛祭り」ともいわれ、菊を浮かべたお酒を飲むなどして長寿を祈る行事です。

また、有名なのが、菊童子のお噺ですね。菊の露(薬の酒)を飲み、七百年の長寿を得たという中国の故事をもとにした能楽『菊慈童(枕慈童)』については、7月のエッセイでもご紹介しました。

2026.07.05

カルチャー

菊水鉾のゑびすさまへ、祈りを籠めて――。〈七月 菊水えびす扇〉「日本画家・定家亜由子 帯のたもとに隠す花」vol.7

五節句の中で最も大きな数が重なる※この日、菊の露に託された祈りは、古くから人々の暮らしに寄り添ってきました。

※古来、奇数は縁起の良い数字「陽数」といわれ、最大“陽”数である「九」が“重”なることから、「重陽」は最もおめでたい日として親しまれてきた。

御靈神社

2025年秋、御靈神社(上御霊神社)で、その『枕慈童』を眼前に拝見する機会に恵まれました。

境内には凛と立つ黄色と白の菊の鉢が並び、美しい雨の中、重要無形文化財各個認定(人間国宝)金剛永謹こんごうひさのり先生による御奉納の能が舞われたのです。それは御霊の森の風景ごと、木々も土も風も全てが一緒に踊っているかのようで、惹きつけられ目が離せませんでした。

能を舞っておられる間だけ降る雨。それはまるで舞を囲む結界の如く、祓い清めの透明な雨は濡れた緑を背景に朱色と金の衣装が神々しく輝いていて――、舞台が閉じると同時に雨もまた上がったのです。

『菊水かほる』原画

『菊水かほる』原画

奇しくも、今年の祇園祭・菊水鉾のために菊水の扇面画に取り組んでいたタイミングと重なっていたため、その出来事は私が描く菊の花に大きなインスピレーションを与えてくれました。

今回の表紙に選んだ菊の扇面画『菊水かほる』は、そのひとつです。

ご縁深き御靈神社の鎮守の森に託す想い

さて、この忘れ難き『枕慈童』のご奉納は、境内の井戸に水が復活したことを祝うご神事でもありました。

地下鉄が引かれて以来長く枯れてしまっていた井戸のお水が40年ぶりに、清らかに豊かに復活したのです。

境内風景

境内にある稲荷社の橋の下にも、枯れていた水が復活した

宮司さまが「地下の水とはこんなにも綺麗なものか」と感激され、輝いて見えたとおっしゃっていたお話が、いまも印象に残っています。以前は、境内にあった小川が京都御苑の中まで続いていたそうです。

お供え

この日、地下水が出た場所に捧げられていた山海の幸。神明社の鳥居と銀杏の幹を背景に

カラスも水遊び

カラスも水遊び

以前にも綴りましたが、お能の後の直会なおらいでいただいた、そのお水で炊かれたご飯、お出汁の卵とお味噌汁、わらびもちの美味しかったこと!

五臓六腑に染み渡り、全身がすっと清らかになるようでした。

わらび餅など

水と風を感じながら木々と語らい、お参りをしてぐるりと境内の森を歩くひとときは、心も身体も軽く透明になっていくような、心地よい時間です。

ひろこさんと

撮影/伊藤圭

ところで、「きものと」編集部のみなさんと出会うきっかけ、そのご縁を結んでくださった着物ひろこさんと初めてご一緒した場所も、ここ御靈神社でした。

2025.05.25

ライフスタイル

透明感あふれる白の世界。【日本画家 定家亜由子さん】(前編)「着物ひろこが会いに行く!憧れのキモノビト」vol.5

あと少し、さらに秋が深まる頃――。

井戸のそばのあの銀杏の木は黄金色に染まり、境内に光のカーペットを敷きつめます。季節ごとに表情を変える場所。

その頃にもまた、きっと……。

境内

秋深まる境内の風景

ここに人が集うこと。おまつりがあること。祈りの場であること。

これからも、御靈神社の鎮守の森が瑞々しく美しく潤い、いのち深く護られ、未来へとますます輝いていきますように。

穂張月の亜由子好み

水田玉雲堂みずたぎょくうんどうさんの「唐板からいた」。

唐板

平安時代の神饌菓子に由来するそうで、日本最古のクッキーとも評されるその銘菓は、小麦粉とお砂糖・塩・卵を混ぜて薄く伸ばしたものを銅板の上で焼き、短冊状に切り分けたお煎餅です。

同店の創業は室町時代、文明9(1477)年。御靈神社の境内で茶店を営んでいた頃、古書を頼りに味を再現されたといいます。

清和天皇の世であった貞観5(863)年、疫病が蔓延した際に行われた神泉苑での御霊会にて奉納するために作られたと伝わります。そのときに、疫病除けを願って「唐板煎餅」と名づけられました。

御霊会をルーツとする御霊祭は、1467年の応仁の乱により一時中断した時期があったといいます。その頃、水田玉雲堂創業者が応仁の乱からの復興を祈願して復興させたのだそう。

昔ながらの製法で作り続けられているそのお味はもちろん、潔くシンプルな素材と形状、そしてそれに相応しい飾りすぎないご進物用の黒い箱や包装紙のデザインもかっこよくて、お気に入りのポイントのひとつ。

唐板

袋入り(50g)730円(税込)。購入には事前予約が必須

現在の御靈神社門前に建つお店の佇まいも美しく、水田さんの心和む笑顔と温かな接客も大好きです。

2024.09.03

エッセイ

仲秋の候 ―白露から秋分 「感じたい、七十二候」vol.2

構成協力/椿屋

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