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天才写真家が愛したミューズの装い『レイブンズ』 「きもの de シネマ」vol.62

天才写真家が愛したミューズの装い『レイブンズ』 「きもの de シネマ」vol.62

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。春休み映画からピックアップするのは、ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞した浅野忠信さん主演最新作『レイブンズ』です。

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実在の天才写真家として体現する光と闇

先月上映された照屋年之てるやとしゆき(ガレッジセール・ゴリ)監督の『かなさんどー』に続き、主演作品が公開となる浅野忠信さん。

© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films

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エミー賞で14冠に輝いた『SHOGUN 将軍』に出演し、第82回ゴールデングローブ賞において助演男優賞を受賞したことで世界が注目する国際派俳優へと上り詰めました。

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浅野さんが演じるのは、伝説の写真家・深瀬昌久ふかせ まさひさ

名声を得てもなお酒に溺れ、1992年転落事故で脳障害を負い、20年もの闘病の末に2012年に亡くなった伝説の鬼才です。映画のタイトルにもなった、執拗にカラスを撮り続けた代表作《鴉》は、世界の写真史にその名を刻み高い評価を受け続けています。

1974年に開催されたニューヨークMoMA「New Japanese Photography」展で絶賛された彼の78年にわたる波瀾万丈な人生を、本作では実話とフィクションを織り交ぜながら大胆かつ繊細に描き出しました。

© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films

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浅野さんの出演作品はほぼ網羅しているわたくし。作中、カメラを構えるシーンで、ふと五十嵐匠監督『地雷を踏んだらサヨウナラ』(1999年/シネカノン)を思い出しました。実在した日本人フォト・ジャーナリスト、一ノ瀬泰造氏役で主役を務めた作品です。ご興味あれば、こちらも。

闇に翻弄され追い求めた芸術家への道

深瀬が抱える闇を異形の“鴉の化身”として描き、シュールでダークなラブストーリーに仕上げたられた本作で、圧倒的存在感を放つのは、闇堕ちから彼を守ろうとする妻であり最強の被写体だった洋子です。扮するのは、瀧内たきうち公美くみさん

絶賛上映中の『敵』(2025年/ハピネットファントム・スタジオ、ギークピクチュアズ)では主人公(長塚京三)を惑わす妖艶な元教え子を演じ、先月公開された『奇麗な、悪』(2025年/ナカチカピクチャーズ)で一人芝居に挑んだ彼女の更なる凄みが、本作の見どころのひとつと言えます。

© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films

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写真に憑りつかれた天才の狂気。
撮ることでしか愛を表せなかった純粋さ。
そのアンバランスに呑み込まれまいとするミューズの美しさ。
父親(古舘寛治ふるたちかんじ)との確執。

映し出される生々しい感情の数々は常に、「芸術家とは?」と問うてきます。目を逸らすことのできないその力強い問いの答えやいかに。

© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films

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加えて、作中数多く登場する深瀬氏の3.5㎜フィルム作品も、きっと観る者の心を揺さぶることでしょう。60~70年代昭和レトロな選曲も、物語に見事にシンクロしています。楽曲の力と映像美の共鳴は、ぜひ劇場で。

最強ミューズならではの着姿の数々

本作の監督・脚本は、英国マンチェスター出身の元ミュージシャンであるマーク・ギル氏。

だからこその劇伴のセンスが魅力のひとつですが、何よりも、深瀬昌久という孤独な写真家の死生観をクールな目で見据えた演出が独特で、根底には日本への愛も感じられ、ファンタジックな美がそこかしこに溢れています。

© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films

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中でも「きものと」読者にぜひご覧いただきたいのは、瀧本さんの着物姿。

深瀬が撮影した玄関のポートレート、お能の稽古着、夫と並んで撮った写真で魅せる夫妻揃いの半衿でのシンプルな着こなし、半巾帯を合わせた不断着……そして、何よりもMoMAでのお披露目パーティの場で着用しているモダンな装い!

© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films

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幾何学柄のモノトーンの着物に黒の帯を合わせ、赤の帯締めで印象的にまとめた最先端のアートの場に相応しいコーディネートは必見です。

© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films

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作中囁かれる、「名声は悪趣味な着物と同じ 芸術家を腐らせる」というセリフもとても印象的でした。

海外の監督が描く昭和から平成の日本には、日本人も気づいていない美しさが秘められているのかもしれません。

© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films

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