【仕入れ担当 田渕より】
大和の優彩が綾なす、能装束ゆかりの意匠美…
もちろんのこと、ご存命ではいらっしゃいませんから、
今後出てくることもない作品でございます。
「山口安次郎」謹織の唐織は、
安次郎の精神に基づく本物の技術を継承しています。
その技法は日本糸から生まれた生糸そのままの経糸と
複雑な織組織からできる世界一豪華な本当の唐織です。
さらに一つ一つの織文様を表す縫い取りを、
限界まで裏糸を渡さずに織る、非常に手間のかかる技術です。
これこそ安次郎が誓った自らの集中力を極限まで発揮した
山口織物を代表する手織、唐織の帯です。
京都・室町におりましても、
まずお見かけすることのない逸品でございます。
匠の魂が宿る逸品に、
感嘆の声を漏らさずにはいられない方も多いことと思います。
大変稀少な袋帯を、この機会にどうぞご堪能くださいませ!
【お色柄】
わずかにシャリ感ある唐絹地は、深みのある涅色。
本唐織の比類なきボリュームで厳島花鳥文と題された、
春秋の草花に蝶に鳥の意匠が織りなされました。
渡りが多いと、その分重くなり能を舞う人に負担をかけるからと、
本物にこだわり続け、草木染の研究、繭の研究にまで
心血を注ぎ完成させた技法で、この袋帯も織られております。
穏やかな色使いと確かな技による上品さ、格調高さを兼ね備えた、本物の唐織。
格調高き美意匠が、一切の無駄なくすっきりとまとめられて。
確かな唐織の技術をとくとご堪能いただける仕上がりです。
織りに励み…
織りを愛した方の魂を感じていただければと願い、お届けさせていただきます。
【商品の状態】
中古品として仕入れて参りましたが良好です。
うっすらと締め跡pがございますのでお届け前にプレス加工をサービスいたします。
【山口伊太郎・安次郎について】
織物の町、西陣。
この町が世界に誇るご兄弟…
山口伊太郎翁(1901-2007)、山口安次郎翁(1904-2010)。
昨年秋の相国寺承天閣美術館における「能装束展」の際には、
特別イベント「相賀の能」に翁自身お越しになられており、
御歳を感じさせないその矍鑠(かくしゃく)とした佇まいに
連綿と受け継がれる西陣匠の風格を感じたものです。
その翁も…
2010年2月7日、惜しまれつつも永眠されました。
伊太郎氏は「源氏物語錦織絵巻展」を織り上げ105歳にてご逝去、
安次郎氏も、12歳で家業に従事されて以来、生涯現役でいらっしゃいました。
27歳に独立、太平洋戦争にて一時中断をよぎなくされるも43歳で再開、
昭和25年(1950年)にはGHQ最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥に
能装束裂地を寄贈し、同時に金剛流能装束を復元。
55歳よりは事業を息子に譲り、江戸時代の能装束の復元に専念、
能楽宗家の依頼だけでも130領、総数では300領を超える能装束を手がけたという…
究極の表現技術を用い、織物による源氏物語の再現を目指した兄。
自ら製織し、能装束300領をも完成した弟。
それらはフランス・ギメ東洋美術館、英国・V&A美術館等をはじめ、 世界各地の美術館に収蔵されています。
一世紀の時を経て―
兄弟の偉業は、西陣の伝説になりつつあります。
本品は、その安次郎氏による特選品でございます。
次代に伝わる翁の織技や感性、美へのこだわりというものは、
安次郎氏創業による山口織物に、しっかりと伝えられております。
<経歴>
明治37年(1904年) - 京都・西陣で生まれる。
大正5年(1916年) - 12歳で家業に従事。
昭和6年(1931年) - 27歳で創業。その後、太平洋戦争開戦により一時中断。
昭和22年(1947年) - 43歳の時に再開。
昭和25年(1950年) - 連合国最高司令官マッカーサー元帥に能装束裂地を寄贈。
同時に、金剛流能装束を復元。
以来、能楽宗家の依頼により数々の能装束を手がける。
昭和59年(1984年) - スウェーデン国立民俗博物館で能装束展を開催。
イギリス・チャールズ皇太子夫妻の西陣見学の際に、
織の実演を行うと共に能装束を献上。
昭和60年(1985年) - デンマーク国立博物館で能装束展を開催。
平成11年(1999年) - フランス・リヨンで能装束展を開催。
平成12年(2000年) - 能装束「厚板立涌に牡丹文様」を
ヴィクトリア&アルバート博物館に寄贈。
平成14年(2002年) - 東京・大倉集古館にて
「山口伊太郎・山口安次郎兄弟二百歳記念 千年の織物 二百歳の夢」展を開催。
平成15年(2003年) - イギリス・ロンドンにて能装束展開催。
平成17年(2005年) - 静岡・佐野美術館にて「特別展
千年の伝統をつむぐ西陣の織物 山口伊太郎・山口安次郎の世界」展を開催。
平成21年(2009年) - 9月14日より京都 相国寺・承天閣美術館にて
「山口安次郎作 能装束展-心と技の饗宴-」を開催。
平成22年(2010年) - 老衰で死去。享年107(満105歳没)。
絹100%
長さ約4.4m
六通柄
耳の縫製:かがり縫い
◆最適な着用時期 10月~翌年5月の袷頃
◆店長おすすめ着用年齢 ご着用年齢は問いません
◆着用シーン 結婚式・披露宴、式典、パーティー、ご挨拶、ご入卒・七五三のお付き添い、音楽鑑賞、観劇など
◆あわせる着物 訪問着、付下げ、色無地など
※仕立て上がった状態で保管されておりましたので、折りたたみシワが付いております。この点をご了解くださいませ。