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”清水の舞台から飛び降りた”着物とは?【”きものと”お金の座談会@ザ・リッツ・カールトン東京】「きものでスイート」vol.2

”清水の舞台から飛び降りた”着物とは?【”きものと”お金の座談会@ザ・リッツ・カールトン東京】「きものでスイート」vol.2

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お待たせしました!4名の着物ラバーのみなさまにお集まりいただいての座談会、vol.2のテーマは…「今まで購入したなかで一番高額だった着物」とは? さぁ、伺ってまいりましょう!

人気企画の続編、お待たせしました!

4名のエレガントな着物ラバーのみなさま。vol.1では、自己紹介を兼ねて、それぞれのお召しものをご披露いただきました。

2022.09.15

よみもの

お召し物のお値段うかがいました! 「”きものと”お金の座談会」vol.1

今回は、今まで購入した、もしくは購入してもらったなかで”一番高額だった着物”、また”購入時の予算”、そして”着物の資産価値”についてなど、ざっくばらんにお話しいただきます。

Cさん
Cさん
Cさん

●Cさん 
公務員、51歳。買って着ないはあり得ない。どれくらい着られるか、お得か否か、コスパを見極め着物ワードローブの充実を図る堅実派。

Nさん
Nさん
Nさん

●Nさん 
通訳者兼翻訳家、ピアニスト、48歳。アンティークやリサイクルを普段使いしつつ唯一無二の作家ものに敬意と対価を払う文化貢献派。

Iさん
Iさん
Iさん

●Iさん 
主婦、55歳。東京都神田出身。母の影響で着物と日本舞踊を好きに。可憐なやわらかものに目がないが衝動買いはしない熟考派。

Hさん
Hさん
Hさん

●Hさん 
主婦、43歳。北京出身。着付師免許取得のため数を揃えたくネットで掘り出し物を探し出す。汚れやすいシーンには洗える化繊一択の実用派。

※ご年齢は撮影時のもの

とっておきの「出雲織」に出会い、2度目の“飛び降り”

Nさん

●Nさん(中央) 通訳者兼翻訳家、ピアニスト、48歳(撮影時)
アンティークやリサイクルを普段使いしつつ唯一無二の作家ものに敬意と対価を払う文化貢献派。

きものと編集部(以下、編集)―――
vol.1でNさんは、「南風原花織の着物と、本日の御召・帯のセットで”清水の舞台から飛び降りた”」とおっしゃっていましたが、やはりそれが一番高額な買い物でしょうかい。

Nさん―――
実は一番高いのはそのときではなくて、最終的なお値段は言えないのですが、出雲織(いずもおり)のすごい方、青戸柚美江(あおとゆみえ)さんの着物ですね。

京都きもの市場の銀座店に遊びに行ったときに見せてもらったもので、反物で298万円って出されたものなんです。

京都きもの市場のバイヤーの野瀬さんに紬のことを教えてもらっていて、いろいろ見せてくださったなかでも絣の技術が抜きんでていたのがそれだったんです。

パッと見は、民芸品みたいな感じで合う合わない人を選ぶ生地らしいのですが、私が合わせたらお世辞でしょうけど「ぴったりですね!」って。でも、そう言われても、お値段的に「無理です!」と。

それで終わりになるはずだったんですけど、野瀬さんが銀座店の店長さんに「あの着物はNさんの元へ行くべきもののように思うから(値引き)がんばって」と伝えてくれたみたいで…店長さんがすごい値段にしてくれたんです。…それでも高いんですけど。

まなぶ

バイヤー野瀬の、きもの産地巡り

Nさん―――
でも、ご縁があったんだな、とも思って。

島根県の美しい景色のなかで、96歳の青戸さんがデザインから、糸を染めるのから、織るのから、全部の行程をご自分でされているというストーリーもすてきですし、それゆえ一年に何反も作れず、ご高齢だから来年はもうないかもって言われてしまうと…

野瀬さんには、「これは購入します。その代わりにこれを着た状態で青戸さんにお会いしたいから連れて行ってください」とお願いしました。

着物とのご縁

編集―――
それは喜ばれますね!

Nさん―――
織り元の方は着た状態をあまり見たことがないと伺ったので、せっかくだから。でも、実際に叶ったら緊張しそう。

というわけで、私は催事のときとあわせて清水の舞台から2回飛び降りてます(笑)。

作家ものの江戸小紋にひと目惚れし…

Cさん

●Cさん 公務員、51歳(撮影時)。
買って着ないはあり得ない。どれくらい着られるか、お得か否か、コスパを見極め着物ワードローブの充実を図る堅実派。

Cさん―――
私も2年前くらいでしょうか、同じく京都きもの市場の催事で清水の舞台から飛び降りました(笑)。

ひと目惚れした、岩下江美佳さんという作家の江戸小紋の着物と羽織です。

白生地からして触るとすごくいいんですね。で、そのとき岩下さんご本人がいらしていて、直接お話しもさせていただいて「これは絶対欲しい!」と。

2020.09.10

イベント

「東京染色の秘密」岩下江美佳『粋凛香』 東京KITTE展示会2020イベントレポート vol.4

いつもの私だったら、どんな場所で着るんだろうとか、この先の人生であとどれくらい着るだろうか、小紋だからどこまでお金かけるかなぁとか考えるんですけど…思い切りました。

金額は50万円弱ですね。自分的には小紋によくこれだけ出したな、と。もっと交渉の余地あったかもしれない、と反省もしました。

ですが、この着物に貴久樹の白い帯を合わせて鎌倉に行ったときの写真をInstagramにアップすると、いいね!の数がすごくて。やっぱり岩下江美佳さんの力はすごい!貴久樹さんの力もすごい!と、いまは満足しています。

イベント

「貴久樹」にまつわる記事一覧

Nさん―――
ご本人がいらっしゃると気持ちがあがっちゃいますよね。目の前で合わせてくださったりして。

素晴らしい小紋との出会い

Cさん―――
そうなんです、実際におつくりになられている岩下さんが目の前にいらっしゃって、「どれになさいますか?Cさんにはこれがいいですよ」って言われたら…それが決め手になりましたね。

それぞれの、着物購入時の予算とは?

予算はいくら?

●Hさん(左) 主婦、43歳(撮影時)。
北京出身。着付師免許取得のため数を揃えたくネットで掘り出し物を探し出す。汚れやすいシーンには洗える化繊一択の実用派。
●Iさん(右) 主婦、55歳(撮影時)。
東京都神田出身。母の影響で着物と日本舞踊を好きに。可憐なやわらかものに目がないが衝動買いはしない熟考派。

Hさん―――
みなさん、催事や展示会などに行くときの予算はどれくらいですか?

Cさん―――
今日は買わないぞ!って誓って毎回行くんですけど(笑)。

Iさん―――
わかります(笑)!お友達について行くだけ、のはずがね。

Nさん―――
ただの目の保養、目のお勉強です、買いませんよって…

Cさん―――
そう、その手には乗りません、って思って行くんですけど、いろいろな作家さんがいらっしゃっていてすばらしいものに出会えるし、「これもいい、あれもいい」って思いながら最終的に買うか否かを決めてますね。で、担当さんに予算内に収まるように交渉します(笑)。

私の予算は、小紋なら15万円、訪問着20万円、ともに仕立て代込みってところですね。

Iさん―――
最近だと、50万円以上は考えてしまいますね。訪問着や付下げが好きで買いますが、20〜30万円ならと思いますね。

私は着物好きの母の影響で着物が好きになったので、母から受け継いだものがたくさんあるんです。容姿が似ているから譲り受けたところもあるんですけれども、だからといって自分に似合っているものを持っているわけではないんですよね。

まだ袖を通していないものもありますし、自分がいざ買うとなると、どうしても着たいというものでないとそこまで出せない。そこは自分の気持ち次第ですが。

試着はすごくしますね、見ただけで買うことは絶対にないです。

予算について語る

左から、Hさん、Iさん、Nさん、Cさん

Hさん―――
私は小紋で10万円以下というところですね、もちろん仕立て代込みで。

展示会マジックってありますよね。何百万円するものを見たあとに数十万円だと「あ、これだったら手が出る」って(笑)。今日の着物と帯(詳細はvol.1)が今まで購入したなかで一番高額で、まさにそれでした。

でも行くと、本当に楽しくて。なくなった工房の商品とか、もう見られないものもありますし、私も目の保養だと思って行ってます。ただ、「着てみますか?」って言われるままに着せ替え人形になっていると、買わないぞって思ってても…思わず「これいいですね」なんて自分から言っちゃったりして(笑)。

Nさん―――
着せられていっちゃうとね(笑)。私は予算的なものは決めていないのですが、極端にふれちゃいますね。

日々使うものに関してはこだわりがないので、安く、いいものが手に入れば満足ってタイプなんです。なので、お金を出すとしたら人を見ます。作ってらっしゃる方、販売してくれる方を。

作品の持つエネルギーを大事にしたいと思っているのと、ストーリーがあると弱いです。ちょっと頑張っちゃおうかな、と思います。

ネットで掘り出し物をみつける楽しみも

メルカリを利用

展示会もフリマサイトも活用するNさん(中央)とIさん(左)、Cさん(右)

Nさん―――
私はフリマサイトも活用していて、毎日着るような小紋とか、汚しても惜しくないものでしたらメルカリで買いますね。

Cさん―――
買って届いたら「思っていたのと違った」ってことはないですか?

Nさん―――
ちゃんと見ていると案外大丈夫なんですよ。まずはサイズで、身丈と裄が合うか。それでだいぶ絞れますね。あとは出品している方が書いている文章を見れば、誠実な方かどうかも伝わってくるので。

小紋でしたら5,000円くらい。毎日締められるようなカジュアルな帯も3,000〜4,000円くらいで買いました。

失敗したことは?

着付けの大会にも出場されているHさん(中央)

Hさん―――
私もネットで買うことが多いんですが、メルカリは使ってなかったです。

私の場合、友人をモデルにして「着付けの大会」に出場したりするため、練習用や舞台上で着るものなど、とにかく数が必要になってしまったんですね。それで常にネットで安いものを検索しています。

地方の呉服屋さんのホームページからオンラインショップに飛ぶと、未着用の新品がリーズナブルな価格で出ていたりします。このあいだも、新品の袋帯を1万円で購入しました。

Cさん―――
それはすごい!

Hさん―――
小物もけっこう出ていて、帯締めが5本で5,000円だったときなんかも、すぐに買いました。1回も使用されていないきれいな感じで、新古品なんですよね。

編集―――
失敗したこともありますか? 

Hさん―――
購入後の失敗はないんですが、中古なので裄の合うものがなかなかないことでしょうか。私、裄が72cmなんですけど、基本的に裄72㎝のものってほとんどないんですよ。あっても68cm。それだとやっぱりつんつるてんな感じなんですよね。

仕立て上がりのものならサイズを見て事前に判断できるのですが、ネットで反物からのお仕立てをオーダーした時など、購入後に電話がかかってきて「裄が出せないのでキャンセルにさせて下さい」って言われることもあります(笑)。残念で仕方がないです。

母から譲られた一級品と、着物の資産価値

Iさんのいままで一番高額だった着物

Iさんの一番高額な着物とは?

編集―――
Iさんの今までで一番高額だった着物というのは?

Iさん―――
母に作ってもらったものと、母から譲り受けたものとがありますね。

着物のほうが作ってもらったもので、白とグレーの左右非対称の波文様の柄に、ところどころ螺鈿の入った訪問着です。作家名も書いてあって、はっきりとは聞いていないのですが相当お値段もしたと思います。

譲り受けたものは帯で、もともと父が母にプレゼントしたものなんですね。

木箱に入った長嶋成織物の、松竹梅柄の金箔袋帯。『瀞金錦(とろきんにしき)』と言うのでしょうか。新潟へ行ったときに購入して「500万円ぐらいした」って言うんですね、でも絶対うろ覚えでしょうって(笑)。

それこそ50年も前ですけど、それくらい昔だったらあり得るお値段なのかな…とも思って。まだ締めたことはないですね。

Cさん―――
まさに一級の工芸品ですね。

購入後の資産価値について

購入後の資産価値について、みなさまと

編集―――
みなさますばらしいものをお持ちですが、”購入後の資産価値”はどうお考えですか

Iさん―――
私は、あまり考えていないです。

Nさん―――
私も、「価値が上がる」とかは考えたことがないですね。日本文化の継承に一役かっている、という誇りはあります。

Cさん―――
私も、作家ものなど希少性のあるものは別として、着物を含む衣類は袖を通した時点で中古になってしまうので、価値は半減すると思っています。自分が楽しむことだけ念頭においています。

娘さんが大きくなられたら着て欲しい

お嬢さんがいらっしゃるHさん

Hさん―――
仕立ててしまうと資産価値はないと認識しています。娘が大きくなって着てくれたらいいな、と思うくらいですね。

自分の成人式のときに30万円くらいの振袖を衝動買いしたまま、1回だけ着てそのままとってあって。留袖に作り直そうにもデザイン的に難しいものなので、将来、娘に着て欲しいと思うんですが、本人は「これじゃないのがいい」って言うかもしれませんよね(笑)。

次回予告:着物まわりのお金について

次回は最終回!

陽も落ちてきたリッツ・カールトン東京のスイートルームにて

今回の着物ラバーのみなさまとは、次回がいよいよ最終話!

着物を着てどこへ出掛けるのか、ヘアセットにかかるお金、そして保管方法やメンテナンス代についてなど、着物まわりのお金についてお話しいただきます。

構成・文/渋谷チカ
撮影/五十川満

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