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着物の衿(襟)合わせノウハウ その① シーン・年代・イメージ別の楽しみ方

衿から作るきれいな着姿 その① 着用シーン・年代・イメージから導き出す、衿合わせの楽しみ方

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着物は衿合わせによって印象が大きく変わります。着物の柄や帯合わせ、小物合わせはもちろんですが、衿合わせにも注目してみると自分のなりたい着物姿に近づくことができますよ。今回は年代やイメージ別、カジュアル・フォーマル別の衿の見せ方、出し方をご紹介します。

着物姿のイメージをかたちづくるのは、帯合わせや小物合わせだけではなく、長襦袢の衿合わせも一役買っています。
年代やイメージ、カジュアル・フォーマル別の、衿の見せ方・出し方をご紹介いたします。

着物姿を美しくみせる。衿合わせの基本

着物姿は、着物それ自体の色柄や帯合わせなどだけでなく「衿元の美しさ」も重要なファクターとなります。
着物の下に着ている長襦袢の衿を見せる形で着付けを行うため、「衿合わせ」も着物の楽しみ方のひとつと言えるでしょう。
衿合わせの方法によって、着物姿の印象は大きく変わります。
まずは「衿合わせの基本」についてご紹介いたします。

衿合わせのイメージ

着物の衿合わせを考えるときに、普段身に付けているワイシャツやブラウスを思い浮かべるとイメージがしやすいですよ。
まずは、着物の衿の出方をジャケットと下に着る白いシャツに例えてみましょう。

衿合わせを洋服でたとえて

左)白いシャツ・ジャケットともにすべてのボタンを留めた状態。
中)衿のボタンは外さずに、ジャケットのボタンを外した状態。
右)衿のボタンを3つほど外した状態。

同じ白いシャツ・ジャケットでも、首が詰まっていればいるほどきちんと感が出ますし、より首元をあけるほどゆったり・色っぽい印象が強まります。

これを着物の衿合わせに置きかえて、3つの例を見てみましょう。
「白いシャツ=長襦袢につけられた衿」「ジャケット=着物」のはたらきをします。

1. のどのくぼみが見えない深い衿合わせ

深い衿合わせ

10代~20代、若い方向きの衿合わせです。
また年代を問わず、肩が張っている方やバストにボリュームのある方には、衿から胸元にかけて比較的きれいに着物を着ることができます。

2. のどのくぼみが見えるかどうかの浅めの衿合わせ

普段向きの衿合わせ

50代~70代くらいの方や、30代~50代の普段着向きの衿合わせです。
若い世代で、大人っぽく着物を着こなしたい方にも。

3. のどのくぼみが見えて、首から離した衿合わせ

色っぽい衿合わせ

色っぽく着物をお召しになりたい方向きの衿合わせです。
芸妓さんや玄人さんの衿のイメージです。

いかがでしょうか。

着物の色柄を問わず「首周りの肌がどのくらい見えるか」によって、きっちり感が出たり、ゆったりした印象になったり、色っぽくなったりと印象が変わります。
角度の違いで初々しいイメージにもなりますし、粋な印象や、若い方向き、ご年配向きとイメージを変えることができますね。

衿合わせは、世代やステイタスによってある程度「向き」があります。
式典や公の場では慣例に沿った衿合わせや着物の着方が望ましいとされている一方、お遊びで着物を着る場合は、おでかけ先の雰囲気やドレスコードに反しなければ自由に楽しむのもよいものです。

【シーン別】着物の衿合わせの方法・作り方

同じ着物コーディネートでも、衿の出方によって印象が変わります。
衿合わせは、普段着として着る着物、おでかけ着として着る着物、カジュアル着物、礼装着物など…シーンによってふさわしいものがあります。
また、年代によっても似合う衿合わせは異なってきます。
まずは「シーン別の衿合わせの方法」と「衿合わせによる印象の違いを比較してみましょう。

普段着の衿合わせの方法

普段着として着る着物は、洋服でいうおでかけ着や外出着。
小紋や紬・縞のお召しなどがこれにあたり、洋服でいうとワンピースやカジュアルスーツなどにあたります。普段着ですので、衿の角度はある程度気分で決めても大丈夫です。

衿合わせの違いによる印象の比較(1)

こちらは、普段着として着ることができる縞の塩沢お召しと、西陣のおしゃれ袋帯です。
衿合わせによって異なる印象を実際に見てみましょう。

浅めでゆったりした衿合わせ

のどのくぼみが見えるくらいの、浅めでゆったりした衿合わせです。
落ち着きある印象に見えるため、40代から50代、また60代以降向きとなります。

きっちりとした深い衿合わせ

角度が90度に近いような、きっちりとした深い衿合わせです。
清楚で上品な印象に見えるため、20代から30代向きです。

礼装の衿合わせの方法とは?

礼装の際の衿合わせは、どの年代も、半衿を多めに見せます。

礼装着物とは、振袖・留袖・訪問着・付け下げなど。
加えて、紋の入った色無地や江戸小紋なども礼装着物にあたります。
洋服でいうところのフォーマルドレスやフォーマルスーツとなるため、基本的には白半衿をあわせ、半衿を多めに出します。

半衿を多く見せるのは、着物が日常着だった時代、「高価な晴れ着の衿元を汚さないようにする」ための知恵でもありました。

衿合わせの違いによる印象の比較(2)

普段着物同様に礼装着物でも、衿合わせによって異なる印象を実際に見てみましょう。
こちらは、京友禅の訪問着に西陣の礼装用袋帯です。

浅くきっちりとした衿合わせ

50代~60代以降向きの、浅くきっちりとした衿合わせです。
すっきりとシャープに落ち着きのある印象です。

深くきっちりとした衿合わせ

こちらは、20代~40代向きの深くきっちりした衿合わせです。
(逆に若い世代の方も、上のように衿合わせを近づけると落ち着いた印象に見えます。)

衿合わせで着物をもっと楽しむ〜白半衿と刺繍半衿の見せ方〜

ここまでは「白半衿」のパターンのみを見てまいりましたが、「刺繍半衿」ももちろん、見せ方によって印象が変わってきます。
衿元から見える刺繍半衿は、着物姿をよりおしゃれに仕上げてくれますよ。

刺繍半衿にも礼装用とカジュアル用があります。
振袖用をのぞき、おおむね「白地のものは礼装用」「色地のものはカジュアル用」です。
普段着着物は礼装に比べて半衿の出し方を控えめにするのが一般的ですが、刺繍半衿をポイントにしたコーディネートの際には、半衿をたっぷり見せた着物スタイルを楽しみましょう。

白半衿の見せ方

白半衿の見せ方

まず、白半衿の見せ方から見ていきましょう。
こちらは普段着として着る着物なので、半衿の分量は少なく、浅めにゆったりとした衿合わせをしています。
割烹着を着てお料理しているお母さんやおばあちゃまをイメージしたくなりますね。

ラフな衿合わせ

こちらは、若い方向きの深めでラフな衿合わせです。
きちんと左右対称になっていないので、くつろぎ感とラフさがあります。
着物を日常着としていると、家事や運転などの腕の動きに合わせて、衿元はこのような感じになっていきますね。

カジュアル向けの刺繍半衿の見せ方

刺繍半衿の使い方

同じ着物でも、刺繍半衿(こちらはカジュアル向け)を合わせると印象がガラリと変わります。

こちらは、幅広い年代の方にお楽しみいただける衿合わせです。
普段着として着る着物ですが、半衿をたっぷり見せておしゃれに。
浅めの合わせですので「すっきりとした大人カワイイ」でしょうか。

衿合わせを変えると印象が変わる

同じ刺繍半衿でも、衿合わせを変えると印象が変わります。
深めの衿合わせで、少し首元をゆったり目にあけて。
「ふんわりかわいい」印象の合わせ方です。

小さい子供向きの衿合わせ

こちらは、のどがほとんど見えないくらい詰めての深い衿合わせ。小さい子供向きです。

自分のなりたいイメージに合わせて白半衿か刺繍半衿かを選んでみるのも楽しいですよ。
そして、シーンや年代に合わせた衿合わせをしてみましょう。

衿合わせは着物姿の要

衿合わせによる印象の違い、お分かりいただけましたでしょうか。

「衿合わせの角度が鋭角」で「半衿の見える分量が少ない」ほどシャープな印象に。
反対に「角度が90度に近く」、「半衿をたっぷり見せる」ほどやさしく初々しい印象になります。
また「きっちり合わせる」とフォーマル感が、「ゆったり合わせる」とカジュアル感が出ます。

着物姿全体のうちでほんの少し見えるだけの衿合わせですが、全体の印象を左右する着姿の要でもあります。
着用シーンやご自身の着姿をどう見せたいかによって、衿の合わせ方の調整をしてみてくださいね。

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