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現代のクリエイターに求められる”総合力” アーティスト SHOWKOさん(前編)「川原マリア×令和の若手職人」vol.7

現代のクリエイターに求められる”総合力” アーティスト SHOWKOさん(前編)「川原マリア×令和の若手職人」vol.7

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令和を力強く生きる若手職人に「自ら道を切り拓くこと」についてインタビュー。「デザイナー」「アーティスト」「職人」の使い分けとは?330年続く茶陶の窯元「真葛焼」に生まれ、現在はブランドデザイナー、陶板画作家として活躍されるアーティスト SHOWKOさんにお話を伺いました。

川原マリアが訪ねる令和の職人

©️Tomokazu Mukai
©️Tomokazu Mukai

令和を生きる職人とは。

着物の図案家として職人を経験し、「Forbes Japan セルフメイドウーマン100」に選出された川原マリアさんが訪ねる伝統工芸の「今」と「未来」とは。

“自力で道を切り拓くこと”について、活躍されている若い世代の職人とともに考えます。

今回は、330年続く茶陶の窯元「真葛焼」に生まれ、現在は『SIONE(シオネ)-読む器-』ブランドデザイナー、陶板画作家として活躍されるアーティスト、SHOWKOさんにお話を伺いました。

店頭にて

実は個人的に十数年来のお付き合いのある、SHOWKOさんとマリアさん。姉妹のような笑顔もほがらかに、リラックスしたムードにて進みます。

仲睦まじい笑顔の二人

名家に生まれ、自己表現を模索した10代

マリア
マリア

まずは、陶板画・陶器作家からアーティストに変化されてきた、SHOWKOさんのこれまでの軌跡をお聞かせいただけますか。

SHOWKOさん
SHOWKOさん

私はもともと、実家が330年続く茶道具を作る家に生まれて。兄がいて、代々男性が継いでいくと決まっていたので、10代は何をしようかと考えつつ、モヤモヤした想いを言葉にする作業を始めたんです。

談笑するSHOWKOさん
SHOWKOさん
SHOWKOさん

だから、思い返せば最初の表現は言葉だったかもしれない。大学では日本文学を学びました。その後、手に職をつけたいと思ったんですね。

たくさんの書籍
SHOWKOさん
SHOWKOさん

親戚からは「焼き物だけはやるな」と言われてきたんだけど、友人のお父さんから「代々受け継がれる家に生まれたのも何かの縁かもしれない」と言われ、そうかもなと思い父に相談して…というのが、陶芸や陶板の仕事をするスタートですね。

書籍と器が一緒に展示
書籍と器が一緒に展示されている

陶芸の道と有田での修行

談笑する二人
SHOWKOさん
SHOWKOさん

京都で焼き物の技術を学ぶ学校に入ったんだけど、家で絵付けをして、年頃になったらお見合いして結婚する、みたいなイメージは自分の中でしっくりこなくて。今まで京都で誰もやったことないようなところに行きたいと思って検索して、佐賀の有田の陶板画の先生のところに弟子入りさせてもらいました。

SHOWKOさん
SHOWKOさん

佐賀に行ってからは、滝行をしたり、恋人も作らずに『修行』をしていて、土日は山に籠ったり、岩山に茶道具だけ持ってお茶を立てたり。

SIONEの庭と器
SIONEの庭と器
マリア
マリア

すごく豊かな時間だったんですね。

SHOWKOさん
SHOWKOさん

そうですね、今思うと豊かな2年間だった。絵付けだけではなく、先生が仏画を描く方だったので、精神的な部分や信仰についてもたくさん学ばせてもらいました。

店先に咲く花

父からのアドバイスは「売れるものを作れ」

陶板画
SHOWKOさん
SHOWKOさん

2005年に京都に帰った時に、父から「学んできたのだから、それで生きていけばいい。やるなら売れるものを作れ」と言われました。修行中に節約して開業資金を貯めていたので、実家の一室を借りて陶板画の作家としてスタジオを始めたんです。

デザインを意識した製品
SHOWKOさん
SHOWKOさん

「売れるもの」は、自分が描きたいものじゃなくて人様の気持ちに寄り添うもの。そして欲しいと思うものであり、その心に触れるもの。それは「デザイン」なのではと思いました。

直営店の様子
SHOWKOさん
SHOWKOさん

芸大も出ていないし、クライアントワークなどもしたことがなかったので、作家活動と同時にデザイン事務所にも入り、グラフィックやWEBデザインを行う事務所に3年くらいお世話になりました。AdobeのソフトやEコマース、そして撮影の知識もつけさせていただいて2009年に独立。2016年に銀閣寺に直営店をOPENしたという経緯です。

マリア
マリア

ブランドの世界観を支えるのは、その多角的な知識と経験もあるのですね。

直営店の外観

『SIONE(シオネ)-読む器-』とは

談笑する二人
マリア
マリア

ご自身のブランド『SIONE(シオネ)-読む器-』の名前の由来はありますか?

SHOWKOさん
SHOWKOさん

詩(し)と音(ね)で『SIONE』。フレーズや音楽そしてメロディ、心の中の「音」を奏でられるように。

マリア
マリア

美しいですね。「読む器」というコンセプトの構想はどのあたりから考えておられたのですか?

SIONEのロゴ
SHOWKOさん
SHOWKOさん

ずっと構想はあったんですが、昔から文章を書くことも好きだったし、未来創世記の物語と一緒に器を展開していけたら面白いなと思って。

マリア
マリア

10代の頃の表現と、ここで融合したのですね。

製品について見学する二人
SHOWKOさん
SHOWKOさん

茶道の世界では、基本的には物に「銘」がついてるんですね。「銘」は今の私たちからするとお堅く感じられるような呼び名が多くて、例えば伊勢物語の一節からつけられていて「分かる人には分かる」みたいな奥深い世界だったりする。その流れを汲みとりつつ、自由な創作を加えたいと思っています。

Piettery Booシリーズ
Piettery Booシリーズ
SHOWKOさん
SHOWKOさん

例えばこのPottery Bookシリーズは、扉を開くと詩が書いてあります。そして音楽も一緒に楽しめるように、QRコードも一緒に記載しているんです。

Piettery Booシリーズ 器の柄
SHOWKOさん
SHOWKOさん

日本って、風の名前だけでも、こんなにもたくさんあるんです。先人達の豊かな感性には、本当に驚かされますよね。

マリア
マリア

ステキです。オーダーメイドもできるということですから、プレゼントや引出物としても喜ばれそうですね!

デザイナー?アーティスト?職人?

マリア
マリア

今、SHOWKOさんは「アーティスト」と名乗っておられますが、「デザイン」と「アート」「職人」の違いをどう捉えていらっしゃるか、また、活動をされるなかでの割合や役割というものはありますか?

談笑する二人
SHOWKOさん
SHOWKOさん

私の解釈では、「職人」は自分の技術を高めていける人。自分の手や五感を使って、それを高められる人のこと。

SIONE製品
SHOWKOさん
SHOWKOさん

「アーティスト」は、社会や人に問題提起する人。一石を投じたり、誰かの心に触れたり、その人の「普通」を揺り動かす人だと思っています。

SIONE製品
SHOWKOさん
SHOWKOさん

そして「デザイン」は、広義になるけど仕組みを作る人。流通とか、誰が使うかみたいなものを定義する人。そう考えると、会社や仕組みを作る時が「デザイナー」だし、「アーティスト」は自分が作ったもので一石を投じられるかだし、その日々の鍛錬が「職人」なんだよね。

マリア
マリア

なるほど。非常に総合的で進化的な方だな、と思っていましたが、言語化していただいたお陰で、よく理解できました。令和の時代にあって、クリエイターも総合力って本当に大切ですね。

SIONE製品

人間の良さは「バグ」にある

マリア
マリア

日々技術革新していくなかで、淘汰されていく物や職人さんも多くなってきました。機械化や、時代の変化についてはどう思われますか?

製品を見る二人
SHOWKOさん
SHOWKOさん

技術がなくなることのさみしさは理解できるし、切なくなることもありますね。でも技術革新自体も価値があるし、私自身は「もうこの技術はなくなってしまうんです!」というのを売りにしたくはなくて。単純にかわいい!とか、欲しい!と思ってもらえるものが好きです。

可愛いSIONE作品
SHOWKOさん
SHOWKOさん

「手仕事」って言葉は、ここ20〜30年で使い古されてきた感じがしています。コンビニの手巻き寿司だって、本当は機械の部分が割合的にはほとんどだと思うけど、手巻きって言ったほうがおいしそうだったり。

可愛いSIONE作品
SHOWKOさん
SHOWKOさん

本当だったら、3Dプリンタや機械がやった方が正確になることもたくさんあるし、私はSFが好きでそういう世界にも惹かれるんです。じゃあ人間の良さって何か?というと「バグ」かなと。

マリア
マリア

「バグ」ですか。

SIONE作品
SHOWKOさん
SHOWKOさん

手描きは、ある意味その人間の内面を通って炙り出したようなものが線になっています。正確さや緻密さはないけれど、そのバグのようなものが愛おしいと思うし、それを日々鍛錬しようとするところに崇高さがあると思うんです。

マリア
マリア

金継ぎの作品にもそういったところへのリスペクトが感じられます。こちらも壊れてはじめて出会う美しさですものね…

金継ぎの作品
著書

2022年1月に『感性のある人が習慣にしていること』を出版したSHOWKOさん。

総合的に自身とブランドを客観視しつつ、「感性」を大切に『SIONE』を成長させて軌跡の一端に触れることができました。

後編は、そんなSHOWKOさんの今後の展望やご著書について、また、時間軸や空間を超えた「VRと器の表現」などのお話をお届けいたします。どうぞお楽しみに。

店内で

撮影/弥武江利子

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