「2年ほど前にV&Aのキュレーターから、着物を普段から着ている人にインタビューしたいとお願いされたのがきっかけです。それからしばらく経ってV&Aの方からスタイリングを頼みたいと連絡をいただきました。カメラマンはロンドン在住の日本人の友達だということも知り、なんだか安心して、是非やってみたいとお返事しました。
メインビジュアルでブーツを履いているものがあるのですが、アートディレクターからの要望でした。私は普段自分のスタイリングで袴だったり、明治―大正時代の設定とかでは無い限り靴は合わせないのですが。矢絣の着物に足袋ブーツを合わせてみたら、なんだかアリだなと。矢絣ってやっぱり『はいからさんが通る』じゃ無いけど、大正っぽいイメージがあるし、ブーツも足袋の形でしかも蛇柄なので全体的に良い意味で時代を歪めることが出来たのかなと思います。モデルの方に着てもらうと、うまくはまってよかったです。
西洋と日本のファッションのミックスを、現代において目に見てぱっとわかる形でやってしまうことにはちょっと抵抗があったのですが、ポージングやモデルさんの出で立ちがとても現代的だったので着物のシルエットも洋服っぽくこの写真では見えるし、逆にブーツが足袋の形で着物に寄ってきているのでバランスが取れたかなと思っています。
私自身は洋のアイテムを意識的に着物に合わせる、ということはあまりしません。バッグや帯留め髪飾りといった小物くらいですね。バッグは自分の好きなブランドのものを合わせるので洋のものが必然的に多くなっています。
和洋のミックスですが、明治―大正時代は時代の変わり目なので面白いミックス感がありますよね。アイテムに頼りすぎず、アールヌーヴォーやアールデコ、幾何学模様とか、そういうものをモチーフや柄として取り入れてミックスしていたし。アイテムでいえば、帯留めだって、もともと日本にはなかった西洋の宝石や、ブローチを使ったりしていましたよね。あと、色の合わせ方でも斬新さをだしたり。
日本の文化自体がいろんな文化を取り入れて昇華してきたものなので、現代において和と洋の文化を単純に切り分けることが難しいと思っています。洋の文化は、すでに私たちの文化の一部になっていると思うので。和洋の幅広い選択肢の中からそのアイテムがもっとも輝くコーディネートをしようとすると自然と、この着物にはこの草履、このワンピースにはこのヒールという風な考えに至るのかもしれません」