【 仕入れ担当 田渕より 】
美術織物の祖、龍村平蔵。
古代織物の研究、及びそれを基盤とする織物美術創作の伝統を受け継ぎ、
世界的に認められる作品を世に送り出した氏の作品の中から、
大変希少な掛額を見つけて参りました…
初代・龍村平蔵氏の六男である三代・龍村平蔵(元)氏による
十二支を織り描いた連作、『干支の錦』シリーズをご紹介致します。
初代より連綿と受け継がれてきた技を美術品としてお届けさせていただきます。
ご贈答用として、またご自身のコレクションの一つとして…
真の平蔵ファンの方は是非ともお見逃しなきようにお願いいたします。
【 お色柄 】
微かに煌めく白茶色の錦地。
その上に織り込まれていますのは、「エジプト壁画文錦」と題されたお柄。
人が農耕の為に大地に鍬を入れた時に、最初に遭遇するのは冬眠中の両棲類の蛙や爬虫類の蛇たちでした。
穀物が実る、果実がなるといった生命力の不思議さをこれらの生物のもつ力と考えて、彼らの姿に神秘的な豊饒力があると思いついたのです。
神聖視されて王権や神権を象徴するのに宝冠の前立ち装飾にも用いられました。
蛇が黄金や財宝を守る力があるとする考えは、世界の各地で古くから信じられてきましたが、
エジプトでも人々の生命、財産、家系を守護し幸福を招くと考えられてきました。
本品も繁栄と吉祥幸福の招来を願って表現しております。
エジプト、ナイル河流域、テーベ王妃の谷の遺跡にある壁画から取材したもので、
聖蛇の王冠をつけたラムセス三世がイシス神に抱かれている微笑ましい情景であります。
その図柄に彩りと織技をもって趣向をこらし、華麗な錦に織りなしました。
美しいコントラストを見せる彩りが、
独特の世界観を表現し、さりげなく龍村らしさを伝えてくれます。
一色一色、微妙なお色の変化までもを、織のみであらわす美。
歴史に根付いた美的感性を文様として構成し、
そこに高い織りの技術が加わり、初代から脈々と受け継がれた美術織物へのこだわりが、
その意匠の中にはございます。
【 商品の状態 】
掛額として仕入れましたが、額に破損があり額無しの状態となります。
ご了承下さいませ。
錦地:絹100%(金属糸風繊維除く)
縦57cm 横52cm 奥行き約2.5cm