【国画会会員　山口小枝】 特選紬地浮織九寸名古屋帯 手織・手括経絣 「雲海（うんかい）」 創作の自由…新進気鋭の作家！

どういうものを創作したいか
では、どのような素材が必要か…

帯であれば締める際の使い勝手、質感を考え糸を。
お太鼓にあたる箇所のお柄、長さ、適正な織り。

作品にこめられた思い。

京都きもの市場でもご紹介は初となります。
国画会工芸部会員【　山口小枝（やまぐちさえ）　】氏による、
手括りの絣と浮織を併用した、表情豊かな名古屋帯。

どうぞこの織の奥行き、じっくりとご覧くださいませ。

■山口小枝―
女子美術大学在籍の3年の折、織を専攻。
工芸科卒業後、かの柳悦孝工房にて悦孝氏に師事。
創作活動を続ける中で1985年国展の新人賞を受賞。
2007年には国画会の会員となりました。

ご存知やもしれませんが、【　国画会　】は、
京都在住の日本画家、入江波光、小野竹喬、榊原紫峰、
土田麦僊、野長瀬晩花、村上華岳によって、
『西洋美術と東洋美術の融合と、新しい日本画の創造』を目指し、
大正7年(1918年)に「国画創作協会」として結成された美術家の団体。

戦後、絵画・版画・彫刻・工芸・写真の5部それぞれに
日本を代表する作家を多数輩出し続けております。

特に工芸部は後世に名を残す、柳宗悦（やなぎ むねよし）、
芹澤ケイ介、柳悦孝（やなぎ よしたか）、柳悦愽（よしひろ）
などの染織作家が所属しておりました。

現在の国画会の工芸部は生活の中で使用するものを
主に創作する作家が所属しており、基本一人の作家が
デザインから素材、染、織と一貫して行います。

今回ご紹介の本品はその国画会所属の山口小枝氏の名古屋帯。

さらり…
やわらか、かつ独特の…
生絹に近いほのかなシャリ感。

帯を構成する経糸は約960本。
細く、繊細な糸に手括りによる絣の技術で
複数の色をのせ、太子間道のような独特の文様を織りだして…

雪崩釉のごとき、藍、縹、藍鼠、グレーのかさなり。
淡い色から濃い色へ、何度も何度も染め付けられた絣糸が
単色では表現できない、ふくよかな色合いをみせております。

その経絣を背景にほのかな凹凸…
浮織による、まるまなこを思わせる、
刺し子調子の装飾的な横のラインがアクセントをそえ。

雲抱く険しき山嶺をはるかに。
けぶる空にジグザクと頂きが顔をのぞかせる。

フラットな布という媒体の中に、
織り描く風景、情景、インスピレーション。

物語をつづるように。
そして、『衣（ころも）』という人の生活に根ざし。

こういったお品はまさにこの世に一つのもの。
希少性はさることながら、ものを創るという事を愛してやまない、
そんな染織作家たちのこころをそえて。

お手元で末永く、ご愛用いただけるお品となりましたら幸いでございます。


【山口小枝（やまぐちさえ）　略歴】
1977年　女子美術大学工芸科卒業
　　　　柳悦孝工房にて三年間師事を受け助手活動
1985年　国展新人賞
2007年　国画会会員