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美と粋を知り尽くした大人たちが集う、京都『A LITTLE PLACE』 千家十職 袋師・土田友湖家の軒下から

美と粋を知り尽くした大人たちが集う、京都『A LITTLE PLACE』 千家十職 袋師・土田友湖家の軒下から

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京都のまちの一角。コロナ禍のなか趣ある一軒の京町家に、いつしか気になるのれんがかかるようになりました。開いているのかいないのか、お店なのかお店じゃないのかー 美と粋を知り尽くした大人たちが集う、京都『A LITTLE PLACE』にお邪魔しました。

2021.09.30

インタビュー

着物の知恵を、持続可能なファッションへ 『ラ リーニュ ロペ』コミュニケーションディレクター 久保まゆみさん 「今、きもので輝くひと」vol.3

『A LITTLE PLACE』 とは

A LITTLE PLACE

赤い文字で小さく『A LITTLE PLACE』の文字が入る、パリッとした白いのれんが看板がわり。

基本的に週末、不定期にこの場を開くのは……

庭師、アンティークと石造美術品コレクターとして、京都を拠点に東京や海外でも活動する成井大甫(なるいだいすけ)さんと、30年に渡り、パリを拠点とし、世界各国の衣食住全般の買い付けに携わってきた宇佐見紀子(うさみのりこ)さんです。

成井大甫さんと宇佐見紀子さん。のれんがかかれば、『A LITTLE PLACE』オープンの合図

成井大甫さんと宇佐見紀子さん。のれんがかかれば、『A LITTLE PLACE』オープンの合図

のれんをくぐってすぐの土間には、宇佐見さんの手がけるブランド『紀[KI]- SIÈCLE』のコレクション、左手には京都の建築らしい小間、そして坪庭

三和土には、宇佐見さんの手がけるブランド『紀[KI]- SIÈCLE』のコレクション。

土間には、宇佐見さんの手がけるブランド『紀[KI]- SIÈCLE』のコレクション

小間には、宇佐見さんのパートナーがデザインし、革を選び、裁断、縫製、磨きまで、すべてを自身の手作業で行う革製品のブランド『ACCALMIE by Laurent STEPHAN』 のバッグやブレスレットも。

デザインだけでなく、革を選び、裁断、縫製、磨きまで、すべてを自身の手作業で行う革製品のブランド『ACCALMIE by Laurent STEPHAN』 のバッグ

デザインだけでなく、革を選び、裁断、縫製、磨きまで、すべてを自身の手作業で行う革製品のブランド『ACCALMIE by Laurent STEPHAN』 のバッグ

宇佐見さんのパートナーが手がける革製品のブランド『ACCALMIE by Laurent STEPHAN』 のブレスレットも。

宇佐見さんのパートナーが手がける革製品のブランド『ACCALMIE by Laurent STEPHAN』 のブレスレットも

そして、その小粋な空間のところどころに、成井さんの見立てた骨董の花器が配され、そっと静かに匂いを添えています。

成井大甫さんと宇佐見紀子さん。バックグラウンドもフィールドも異なる2人が出会ったのは6年ほど前のこと。

成井さん:趣味や目標が合致して、近い将来、何か一緒にやりたいね、と話をしていました。縁あってこのステキな物件と出会って、「こんな話があるねん」と宇佐見に声をかけたら、すぐに夫婦で京都に引っ越してきてくれたんですよ。

――実に軽やかに、ヒラリと移住を決めた宇佐見さん。

宇佐見さん:6年前にパリから帰国して東京に住んでいたんですが、コロナ禍のなか、リモートワークが増えたので、東京から離れてもいいのではと思うようになりました。

――それが2022年4月のこと。新型コロナウイルス蔓延に翻弄されたこの3年、誰もがはたらき方や暮らし方を見直すきっかけにもなりました。ちょうどいいタイミングだったのかもしれません。

成井さん:じゃあ、やるかって。5月には身近な方々だけお呼びしてプレオープン、8月2日にグランドオープンしました。やると決めてからは、ほんとうに目まぐるしい毎日でしたね。

――宇佐見さんの軽やかなアクションに背中を押され、成井さんの心も決まります。

成井さん

庭師、アンティークと石造美術品コレクターとして、京都を拠点に東京や海外でも活動する成井大甫さん

折しも、新型コロナウイルス感染症が第7波ピークを迎えようとする暑い夏……

祇園祭で湧き立つ京都のまちから、日本中の美と粋を知り尽くした大人たちに届けられたお手紙の一文がこちら。

ここは、千家十職の職家、袋師・土田友湖家の仕事場の軒下。此処は、花道 去風流 七世西川一草亭、その弟である画家 津田青楓の生家でもありました。 成井大甫が庭師として、憧憬する土田家の庭、古書を捜し求めて学んだ去風流。 その縁に感謝しながら、託された建物に新たな暖簾をかけさせていただきます。

京都『A LITTLE PLACE』のはじまりです。

継承する知と美のナラティブ

『A LITTLE PLACE』ののれんがかかるのは、千家十職の職家、袋師・土田友湖(つちだゆうこ)家のしごと場の軒下

この場所との出会いを、成井さんが聞かせてくださいました。

成井さん:庭師として修業の身だったころ、毎朝、親方の家に挨拶をしてから南禅寺近くの現場に通っていたんです。その時に、自転車でこの通りを走るのが好きで。というのも、このお家の格子越しに見える、なんとも京都らしい茶庭の景色が楽しみだったんです。

空間のところどころに、成井さんの見立てた骨董の花器が配され、そっと静かに匂いを添えています。

空間のところどころに成井さんの見立てた骨董の花器が配され、静かに匂やかさを添える

――庭師の丁稚として、お茶やお華の勉強もするうち、千家十職、土田友湖についても学ぶように。

成井さん:おいそれと、ちょっと見せておくれやす、とは言えない場所であると言うことがわかりました(笑)。

――それから数十年が経ち、知人から「ちょっと見てくれへんか」と仕事の相談が舞い込んだのが、この町家でした。

成井さん:最初にお声がかかったときは、飲食店施工の相談だったんです。でも、コロナ禍の影響もあってか、飲食店の話が立ち消えてしまって。

――改装の話は白紙に戻り、代わりにいい使い手がいないかな、というタイミングで、成井さんから宇佐見さんに声がかかります。

宇佐見さん

宇佐見さん:素人の私には、この空間に秘められたポテンシャルが見えなかった。けれど、成井にはちゃんと見えていたんですね。

――そのうちに知らされたこの家の来歴にも、ふたりの心はグッと動かされました。

実はここは、西川一草亭(にしかわいっそうてい)の生家でもあるということ。

西川一草亭は、明治生まれの華道 去風流(きょふうりゅう)七代目家元。美術、伝統芸能に造詣が深く、夏目漱石や富岡鉄斎と親交した人物で、実弟は画家の津田青楓(つだせいふう)

成井さん:西川一草亭は、風流人であり、文化人であり、文人であり、建築家、造園家でもある。彼の芸術は、僕にとって憧れの存在。ずっと追いかけてきたといっても過言ではありません。だから、この建物を僕が使わせてもらわない理由がない、と心を決めたんです。

成井さん縦

そんな、京都らしい美の継承のストーリーを聞いていると、明治のころ、西川一草亭を慕い、夏目漱石や富岡鉄斎が集ったであろう文化サロンの風景が、幻想のように目の前に立ちのぼってきます

空間のところどころに、成井さんの見立てた骨董の花器が

白いのれんがオープンのサイン

『A LITTLE PLACE』の町家に、看板らしきものは何もありません。

軒先に白いのれんがかかっていれば、オープンの印。インスタグラムには、1ヶ月分の営業日がお知らせされています。

『A LITTLE PLACE』外観

日本の伝統文化を誠実に学んできた成井さんの知性と、パリの気配をはらんだ宇佐見さんの遊び心。

ふたりの経験値と美のセンスが同世代のクリエイターや職人さんたちと呼応しあって、京都に新しいシーンを生み出す予感。

ギャラリーショップ『A LITTLE PLACE』がこれからどんな景色を見せてくれるのか……

次に白いのれんがかかる日が、待ち遠しくて仕方ありません。

撮影/スタジオヒサフジ

しをりの会

提供:a little place

しをりの会

しをりとは
山野辺で人々が道に迷わぬよう、
手折った枝を道しるべの代わりにするのが始まりだそうです。

しをりの会は
花人 平間磨理夫氏とALITTLE PLACEが
植物を通じて
改めて自然との向き合い方を考え、
伝える現代のサロンです。

開催月は2日間、
朝に山からいただいてきた植物と骨董の花入れを合わせる自由なスタイルが人気で日本各地から参加いただいております。

次回は
4月26日(水)-27(木)となります。

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