着物・和・京都に関する情報ならきものと

イチゴイニシアチブの七五三

イチゴイニシアチブの七五三

記事を共有する

東京を中心に児童養護施設や乳児院の子どもの七五三や成人式を着物でお祝いするボランティアチーム「イチゴイニシアチブ」。関西チームでの初めてのお祝いは大阪市鶴見区の「くるみ乳児院」の4人の子どもたち。晴れ着で迎える1日を素敵な写真とともに振り返ります。

イチゴイニシアチブ主宰・市ヶ坪さゆりさん

東京を中心に、児童養護施設や乳児院の子どもの七五三や成人式を着物でお祝いするボランティアチーム「イチゴイニシアチブ」を主宰する市ケ坪さゆりさん。活動を通して気づいた着物の良さと、子どもたちとの触れ合いの中で伝えたい想いについて伺いました。

2021年11月某日。
コロナ禍の谷間を縫うようにして訪れた先は、大阪市鶴見区の「くるみ乳児院」。

以前、「きものと」でもインタビューをさせていただいた「イチゴイニシアチブ」の活動の柱である七五三のお祝いに参加するために、着付け師・ヘアメイクスタイリスト・カメラマンが集まりました。

イチゴイニシアチブは東京を中心に児童養護施設や乳児院の子どもの七五三や成人式を着物でお祝いするボランティアチーム。関西チームでのお祝いは初めてです。
東京からはイチゴイニシアチブの活動を応援しているアパレルブランド『ラ リーニュ ロペ』のクリエイティブ・ディレクター 久保まゆみさんが駆けつけてくれました。

着物の知恵が持続可能な未来に 『ラ リーニュ ロペ』コミュニケーションデザイナー 久保まゆみさん 「今、きもので輝くひと」vol.3

「ラ リーニュ ロペ」は、生地を無駄にしない直線裁ちの手法を使い、着物の美的感覚を随所に取り入れたファッションブランド。コミュニケーションディレクターを務める久保まゆみさんに、サステナブルで世代を超えて愛される着物の魅力を伺いました。

抗原検査をして全員の陰性を確認してから準備に取り掛かります。

今回お祝いするのは、2歳から3歳の子どもたち4人。
晴れ着は全国からイチゴイニシアチブに寄贈されたものや今回参加したメンバーの私物など。

祝意のバトンをつないでやってきた、この晴れ着に袖を通すのはどんな子どもたちでしょう。

晴れ着の準備

さまざまな状況の子どもたちが暮らす乳児院という場所。
「くるみ乳児院」では主に病気、母子家庭・父子家庭、経済的な理由での就労、その他の緊急な理由によって家庭で子どもを育てるのが困難な場合などに預かりをしているとのこと。

ペアの担当職員さんに手を引かれて、慣れない足袋を履いた子どもたちがやってきました。

足袋を履いている様子

見慣れないイチゴのお祝いチームの面々を遠巻きにして様子を窺う子どもたち。
とはいえ神社のご祈祷に間に合うよう、チームとしてはここからが時間との勝負です。

着付けの様子

比較的すんなりと寄って来てくれた男児から着付けをスタート。
背中の兜が勇ましい黒地の晴れ着を着こなしてくれたのは、小さなイケメンくんです。
お名前は出せないので、「カブトくん」と呼ぶことにします。

お次は袖に雪輪取りの花模様が入った着物を選んだ「雪輪ちゃん」。

女児の着付け

3人目はウサギのついた髪飾りに魅かれ、晴れ着よりまずはヘアメイクに興味をもった「ウサギちゃん」。
ヘアアイロンでゆるく髪を巻いてもらったあと、編み込みをしてお気に入りの髪飾りをつけてもらいます。

ヘアメイクの様子
着付けの様子
着付け・ヘアメイクを担う田中愛さん(株式会社O)

初めてのヘアスプレーのシュッという噴射音と風圧が気に入ったらしく、シュッとスプレーを使うたび、キャッキャッと笑顔を見せてくれました。

自主性や自発性を重んじる子育て方針を大切にする「くるみ乳児院」の子どもたち。
最初こそ担当職員さんの後ろから様子を窺っていましたが、次第に自分の興味のあるものに触れるようになってきました。

雪輪ちゃんが選んだのは金のビラビラが揺れるつまみ細工の髪飾り。

髪飾りを選ぶ女児
髪飾りを持つ男児

一番乗りで着替えを終えたカブトくんは、女の子たちが髪の毛のおめかしをしてもらっているのが気になる様子。

せっかくなので、カブトくんもヘアアイロンでヘアセット。
キュッと丸まったつま先から緊張と期待のドキドキが伝わってきます。

椅子に座った男児の足元
飾りをつけた人形

プロのスタイリストさんによるヘアセットでみんな大変身。
よほど嬉しかったのでしょうか。
乳児院の人形にもヘアアクセサリーをつけてあげた子がいたようです。

最後まで泣いてお着替えを渋っていた女の子は、百花のくす玉が描かれた晴れ着を見事に着こなしてくれました。
ちょっと個性的な色味なのですが「百花ちゃん」を待っていたかのような似合いっぷり。
彼女がお気に入りのカスタネットの色とおんなじという偶然に、これまたびっくりです。

ミントブルーのカスタネットと晴れ着

最後の仕上げは色付きリップをチークがわりにトントンと。

色付きリップクリームに触る女児
職員さんに囲まれる女児たち

施設中の職員さんが、みんなの晴れ姿をひと目見ようと集まってきました。

可愛いね、かっこいいよ、おめでとうの嵐に、どうやら今日はとても特別な日なのだと4人も気づいた様子。

神社の境内を歩く晴れ着姿の子どもたち

車で近くの神社に到着。
最後まで泣いていたのが嘘のように、百花ちゃんが堂々と先頭をきって歩いています。

祝詞奏上の風景

祝詞が読み上げられる間、みんなも担当職員さんの膝の上で神妙な面持ち。
祝う者と祝われる者しかいない、純粋な儀式の空間。
その多幸感に触れ、今日会ったばかりだというのに目頭が熱くなりました。

職員の膝の上に座る女児

一人ずつ名前を呼ばれて、神主さんから千歳飴をいただきます。
晴れ着もすごく似合ってるねと褒めてもらいました。

神主さんに頭を撫でられる男児

神社に向かうときは履き慣れたスニーカーだった子どもたち。
神主さんの草履を見たからでしょうか、儀式のあとは草履を履くんだと目を輝かせてせがみます。

草履を履く

慣れない草履で、いざ外へ。記念撮影が待っています。

草履を履いて歩く様子

雪輪ちゃんは、ポーズもばっちり。

女児の記念撮影

カブトくんはおやつの中身が気になるようです。

男児の記念撮影

ウサギちゃんは和傘をさして、鷺娘かはたまた助六か。

女児の記念撮影

百花ちゃんもすっかり晴れ着姿が板についています。

女児の記念撮影

撮影中「今日はみんなでケーキを食べるんだよ」と教えてくれた雪輪ちゃん。

イチゴイニシアチブからのお祝いのお菓子として用意したお饅頭もよかったら食べてね、とスマホの写真を見せるとパッと笑顔になり
「これ、イチゴね?わたし、イチゴだぁいすき!」と一言。

イチゴの薯蕷饅頭
「きものと」インタビューにも登場した甘春堂の若き当主・木ノ下さんが、今回のためにオリジナルで作ってくださった特別なお菓子
この春正式に商品化決定、とのうれしい続報も先日到着しました

食べる方のイチゴのことだとはわかりつつも、てんてこまいの一日の疲れが吹き飛ぶご褒美をもらった気分になったイチゴイニシアチブ関西チームなのでした。

撮影/弥武江利子

老松の上生菓子『此の花』

「和菓子のデザインから」「京都・和の菓子めぐり」「京のつくり手語り」
かがたにのりこさんのコラムはこちらから!

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する