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扇子のマニアックなお話し 【扇子のギモンを解決! vol.4】「きくちいまがプロに聞くシリーズ」

扇子のマニアックなお話し 【扇子のギモンを解決! vol.4】「きくちいまがプロに聞くシリーズ」

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きくちいまさんが「プロに聞く」シリーズ、扇子編。vol.1~3で基本をおさえたところで、いよいよ応用編へとまいります!扇子はもともとメモ?動きで思いを伝える?お宮参り用の扇子の正しい作法、そして江戸時代のアイドル”地紙売り”とは!?元気いっぱい大西常商店の四代若女将・大西里枝さんが、今回も楽しくお話しくださいます!

きくちいまさんが「プロに聞く」シリーズ、扇子編。今回は、知ってうれしい”扇子のちょい技”について。大西常商店の四代若女将・大西里枝さんが、ちょっと差のつく扇子まわりのいろいろを教えてくださいます!

プロに聞くシリーズ、扇子編vol.4!

きくちいまがプロに聞くシリーズ・扇子の疑問を解決!

vol.1(扇子の種類)vol.2(扇子のルール)vol.3(扇子の”ちょい技”)と、あらためて扇子の基本をおさらいしてきた「きくちいまがプロに聞くシリーズ」扇子編。

今回からはいよいよ、基本からさらにその奥へ!

着物にまつわる書籍を多数出されている大人気のエッセイスト・イラストレーター きくちいまさんが、さらに扇子のあれこれを深掘りしてくださいます!

1200年前から続く歴史

扇子についてお話するお二人

  きくちいま―――
  扇子に恋文を書いて渡す、みたいな場面が古典の世界でありますよね。
扇子というと、中にきれいな絵や書が入っているイメージで、作品として完成している扇子なのに、上から文字を書いちゃうんだ!と驚いたんですよ。なんてことするの、って。

大西常商店:大西里枝―――
いまさんは絵も描かはりますもんね。作者の気持ちになってしまわはるんやろなぁ。
でも、扇子って元々はノートの代わりというか、木簡(もっかん)といってメモを取ったものが始まりなので、それはそれでアリなんですよ。

いまさんのメモ

  きものと編集部―――
  ささっと墨と筆でメモですか……

  いま―――
  扇子の歴史、古そうですね。

大西―――
古いですよ〜。今からおよそ1200年前の奈良時代後期に生まれたと言われています。もとは木簡を重ね合わせて下部を閉じたものが、だんだん扇子になっていったんですね。日本は折りたたむ文化というか、そういうのを作るのが得意なんやと思います。

  編集―――
  ちゃぶ台でもそうですが、なんでも畳もうとしますもんね。

大西―――
狭い土地で暮らす知恵なんでしょうね。

様々な扇子

  いま―――
  扇子を開こうとして壊す子どもや外国人が後を絶ちません。なんで子どもは無理やり扇子をこじ開けてしまうのか。

大西―――
そういう生き物なんですよね(笑)教えてもいないのにスマホの操作も覚えてしまうのですから、古い扇子でスライドの練習をさせれば、すぐに体得できるのかもしれません。

  いま―――
  ポイントはオープンではなくて、スライド、ですね。

大西―――
英語の説明書にもスライドと書いてあります。これで海外の人たちも上手に開けられるはず。

扇子の動きで思いを伝える!?

  編集―――
  海外でも扇子の文化ってありますよね。

大西―――
生まれは日本ですが、シルクロードを渡ってヨーロッパへ行ったんですね。

  いま―――
  フランスの貴族が羽飾りのついた扇を持っている油絵、見たことがあります。

大西―――
彼らには扇言葉、というのがあるんですよ。例えば、女性が扇を開いて口元を隠したらあなたはタイプじゃないとか、左手で顔の前に持つとお近づきになりたい、扇子を落とすとお友達でいましょうねなんていうのも。扇子の動きが物事を表情豊かに伝えるんですね。

扇子の動きが物事を表情豊かに伝える

  編集―――
  いろんな扇子の動かし方の決まりを覚えないと社交界では生きていけないということですね。全部覚えるのは大変そうです……

  いま―――
  どうやらわたしたちの前世がヨーロッパの貴婦人だったってことはなさそうですね(笑)

大きな扇子といまさん
大きな扇子といまさん2
お雛様の扇子は大きいなぁと思ったら、なるほど!いつも使っているサイズの扇子とは全然違うんですね!よかった。わたしの顔が大きい可能性もあるかと密かに心配してました(笑)

手元に残らないお祝いの扇子

大西―――
決まりといえば、お宮参り用の扇子、お見せしましたよね(vol.1『そもそも扇子の種類とは?』参照)。あの扇子は、自分では買ってはいけないものなんです。あれは親戚や知り合いから買ってもらって与えられるもので、この熨斗紙の中に扇子と一緒に千円程度入れられたものをいただきます。

女性の一生を彩る扇子の数々

  編集―――
  知らずに渡して恥をかくところでした。お金は千円でいいんですね。

大西―――
はい。しかも扇子と外袋は産土神のいらっしゃる神社にお納めするんですよ。より多くの人にこのお金をいただくと、お子さんは将来お金に困らないと言われています!

  いま―――
  ええっ、あんなにかわいい扇子なのに持ち帰れないんですか!?

大西―――
そうなんですよ。それが決まりです。

  編集―――
  この子をよろしくお願いします、っていう神仏とのやりとりなんですね。

  いま―――
  なるほど。手元に残らないお祝いの扇子、勉強になりました。

江戸時代のアイドル!?

大西―――
江戸時代は地紙の部分だけを売り歩く地紙売りという商売がありました。イケメンの青少年が扱うのが定番で、地紙売りと言えば目の保養になるような若くていい男!というのが決まりだったようです。

  いま―――
  今でいうアイドルみたいな感じですかね。自称イケメンじゃ商売にならないってことでしょうか。

  編集―――
  何歳までできる仕事なんだろう……そのあとは転職するのかな。

  いま―――
  食べていけるのか心配になってしまう……どうしてもわたしたち、母親目線で見ちゃいますね(笑)

談笑するお二人

大西―――
ほんまや。わたしら三人の共通点、男の子のおかんや(笑)

次回予告
扇子と伝統芸能、投扇興!

……次回は最終回、扇子で遊ぶお話をお届けします。どうぞお楽しみに!

※2022年3月上旬公開予定(リリース情報は各種SNSよりどうぞ。)

撮影/スタジオヒサフジ

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