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職人という職業について「ひとつひとつの色をつくる 、京友禅染匠がみる景色」 vol.3

「藤井寛のきもの」でも広く知られる京友禅染匠・富宏染工。その工房を今月社長として継がれる藤井友子さんは、伝統を受け継ぎ守りながらも、京友禅の可能性を広げる新しい取り組みを積極的に行っておられます。今回は、美しい京友禅を生み出す職人について、「現代を職人として生きること」についてお話いただきました。

以前にも記した通り、私は「染匠」と呼ばれる「京友禅の着物製作」の仕事を営んでいます。
着物が仕上がるまでには、下絵・糊置き・引染・挿友禅・仕上げまで、15ほどの工程が必要になります。各工程の仕事に専門の職方がいて、多くが代々その家業を引き継いでいます。

15ある工程の一つ「挿友禅」

2016年に参加した「G7女性職人シンポジウム」は、工芸の世界の女性職人の交流を通して女性の社会進出を支援するという取り組みでした。ものづくりの業界は、今でも世界的に男性優位となっているようです。

幸いなことに、弊社の友禅の職方はほとんどが女性で30代、40代です。

富宏染工の女性職方
女性目線で作られた訪問着

着物は女性が着るものですので、どのようなものが美しく映え、どのようなものが着まわしやすいかなど…「自分ごと」として考えられる女性の職方には、お客様と同じ目線になることができるという利点があると思います。

女性が仕事をしていると、結婚や転居・出産などの転機が訪れます。
その時その時によって職方と時間や仕事量を相談し、それぞれの環境に応じた方法で仕事を出す方針を続けてきました。他県で仕事をしている人や、3人の子育てをしながら仕事を続けている人も複数います。

そういう面でこの時代にあった仕事と言えるかもしれません。子育ての時期は当然仕事量が減りますが、スペースが確保できれば自宅で仕事をすることができますし、子供の送り迎えなど状況に応じて時間をコントロールすることが可能です。
また、ご両親の介護や、自分自身の病気など一旦仕事ができなくなることもありますが、仕事を辞めずに復帰できるよう話し合いをして調整したりもします。

ただ、職方は私のような「染匠」の意向に沿った仕事を求められますし、様々な工程が重なりますので、ほかの技術との調和も求められます。「自分の表現を作品にしたい」「作家になりたい」という人には向いていないと言えます。

挿友禅の職方
熟練の職方の刺繍

そうは言っても、職方はみな同じような仕事なのかと言えばそうではなく、同じ色や柄であってもそれぞれ違う仕上がりになります。なかなかうまく説明できませんが、それぞれの仕事に個性もありますし、力量が発揮できる作品も違います。平均値がない、とても不思議な仕事です。

現在、日本伝統工芸の職人の平均年齢は70代後半。高齢化が進んでおり大変深刻な状況です。
職人になりたい人がいないのではありません。雇う余裕がある事業所が少ないことが問題なのです。実際うちにも、毎年何人も、働きたいという人が訪ねてこられます。

15ある工程の一つ「下絵」
若い職人の育成を目指す藤井友子さん

作っている現場の環境が改善すれば、職人になりたい人の受け皿も増え、後継者問題も解決できるようになると思います。
うちのように若い職人を養成し、専属の仕事をする職人として仕事を続けてもらうことは、今の時代においてはコストもリスクも抱えることになります。しかしそういう形を継承していくことも、ものづくりを繋いでいくことのひとつだと考えています。

◆ 社長就任にあたり藤井友子さんからのメッセージ ◆

2020年8月25日に、藤井寛の後任として代表取締役社長に就任しました。
長い歳月の中で、文化や伝統を大切に伝えてきた京都。
そこで生まれた友禅の着物は、日本の美意識を具現化したものであり、日本女性の佇まいや美しさが一番映えるものだと思っています。
これからも藤井寛ブランドのDNAを守りながらも、手仕事で生み出される美しさを追求し、常に新しいものづくりに挑戦していきたいと思います。
今後とも、何卒よろしくお願いい申し上げます。

彩琳株式会社 / 富宏染工株式会社 代表取締役 藤井友子

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