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歴史ある京友禅とは?着物ファンが知っておきたい種類と制作工程

歴史ある京友禅とは?着物ファンが知っておきたい種類と制作工程

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京都で花開き発展した京友禅。日本三大友禅の中でも最も歴史が古く、豪華絢爛な染めの技法として世界に名を馳せています。まさに日本を代表する伝統工芸品の一つ。日本のみならず世界中の着物ファンを魅了してやまない京友禅。知っておきたいその歴史や特徴、京友禅ならではの技法や魅力も詳しく解説しています。

1.京友禅とは?

着物好きでなくとも、一度は耳にしたことがある「京友禅」。
京友禅とは友禅染という染色技法で作られた着物の中でも、京都で生まれたものを指します。
友禅とは染めの着物に模様をつけるための代表的な技法です。
1976年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されています。
日本三大友禅の一つ
「京友禅」、「加賀友禅」、「東京友禅」が日本の三大友禅として知られています。
加賀友禅は石川県金沢市で染められる友禅染めのことで、絵画的で写実的な「草花模様」中心に描かれているのが特徴。
また金銀箔などの装飾や刺繍はせず、染色以外の技法が使われていないのも特徴といえます。
東京友禅とは江戸友禅とも呼ばれ、江戸で生まれた友禅染めのことです。
当時の江戸の町人文化が色濃く反映されており、渋く落ちついた色合いが特徴と言えます。
落ち着いた雰囲気の中にお洒落で都会的センスが漂うのが、東京友禅ならでは。
分業の京友禅とは違い、一人の職人が構図から仕上げまで一貫して作業を行います。
そして、京友禅は元禄時代に京都で生まれました。
三大友禅の中では最も歴史が古いものです。
また積極的に刺繍や金銀箔が施されており、三大友禅の中で最も豪華絢爛で当時の公家や大名好みのデザインです。
今回はこの京友禅について詳しく解説していきます。

2.京友禅の歴史とは?

「友禅」とは模様染めのことです。
染色技法からいうと、友禅染が開発されるまで、布に色や模様をつけるには、刺繍する・箔を貼りつける・絞り染・板じめなどで染めると言う限られた方法しかありませんでした。
このような方法は、せっかくの絹地の風合いを「ごわごわに」してしまうようなものでした。
しかし京友禅の誕生で、染めの技術が大きく進化します。
ではいつ京友禅が誕生し、広がって行ったのか歴史について詳しく見ていきましょう。
京友禅の誕生
華やかな文様を手描きして染め表す京友禅が京都に広がったのは17世紀後半、江戸時代に入ってからです。
当時、扇絵師として京都で活躍していた宮崎友禅斎(承応3年=1654生)が描いた斬新な絵柄を着物に染めたことに始まると言われています。
時代的背景として幕府が贅沢を禁止する奢侈禁止令を発し、着物では総鹿の子絞りが取り締まりの対象とされました。
鹿の子絞りの生産が禁止され、仕事が無くなり困っていた染め職人や華やかな着物を着ることを楽しみの一つとしていた女性たちにとって、豪華でありながら奢侈禁止令の対象外の友禅染の発明は大変画期的なものとなったのです。
これが京友禅の始まりと言われています。
またこのような時代的背景の後押しと当時の町衆文化とのマッチングで、大いに流行するきっかけとなりました。
大量生産可能な「型友禅」の誕生
明治時代になりヨーロッパから化学染料が入ってきたことに伴い、新たに出現したのが「写し友禅」です。
あでやかで色数の多い化学染料が使用され、またそれまでの「手描友禅」に対して型紙を使って一度に大量に染めることの出来る技法として当時発明されました。
これが現在の「型友禅」と呼ばれるものです。
これによって沢山の制作が可能になり更に多くの人々に広がっていきました。

3.京友禅の種類は?

京友禅は大きく分けると「手描き友禅」と「型友禅」の2種類に分かれます。
手描き友禅とは?
先ほども触れたように、手描き友禅は模様の一つ一つに刷毛や筆で色を付けていくのが大きな特徴です。
そしてこれは全て手作業で行われていくのです。
詳しい工程については後ほど触れますが、手描友禅は伸子張りをした生地の上に下絵を描き、その下絵の上に糸目糊を使って模様の輪郭を書いていきます。
これが友禅染の一番の特徴で「糸目置」と呼ばれます。
この糸目置きをすることにより、何色もの鮮やかな色の使い分けが可能に。
色挿しに使用される染料の数は約20色あり、これらを調合することによって何十種類もの色を更に作り出して行くのです。
その染料を使い、最初は白、続いて淡い色からだんだんと濃い色へと色を挿していきます。
これが京友禅の美しさの一つでもあるきれいなグラデーションを作る作業です。
最終段階では不要な染料を落すため水洗いをします。
これが「友禅流し」と呼ばれている作業です。
かつては京都市内の川で行われていましたが、現在は工場内で行われる作業となりました。
型友禅とは?
一方、型友禅は手書き行う工程を型紙を使って行います。
手描き友禅が一点ものなのに対して、型染めは同じ模様の着物を何枚も染められるので大量生産が可能になりました。
だからいって簡単に出来るというものではありません。
刷毛に染料を付けて摺り込んで染めていく「摺り染」と、もち米糊に染料を混ぜた「色糊」をヘラでしごく「しごき染」があります。
この染め作業は共に高いレベルの経験と技術が必要とされます。
一色ずつ染めていくため色の数だけ型紙の枚数が必要になります。
そのため使用する色数が増えたり、模様が細かくなるに従い、型紙の枚数が多くなるわけです。
一つの柄で100枚もの型紙を使う場合もあるようです。

4.京友禅の技法とは?

京友禅の技法や工程は先ほど紹介した、「手描き友禅」、「型友禅」かで工程は少々異なります。
今回はそれぞれについて工程と技法をご紹介します。
手描き友禅の技法・工程
手描き友禅は仕上がりまで以下の工程を経ています。
(地染めしないものは1回目の蒸しの工程を経た後、水元の工程に移ります)
● 図案作成
デザイン画を描きます

● 下絵描き
生地を出来上がりの形に仮縫いし、下絵を描きます

● 糸目糊置
一旦仮縫いをほどきます。
下書きに沿って糊を置いていく作業。
この糊が防波堤の役割となり、隣り合う色と混ざらないのです。
これが京友禅特有の日本画の様な染めを実現するカギになります。

● 地入れ
滲みを防ぐ、染料の定着のため、生地に豆汁を塗っていきます。

● 挿し友禅
筆で染料を着物に挿していきます。
全て手作業で行われます。

● 蒸し
染料を生地に定着させるため、高温の蒸し箱で約1時間弱蒸らします

● 伏せ糊
前工程で色挿しした部分が染まらないよう、柄の上に糊を塗ります

● 地染め
大きな刷毛を使い、地色を染めて行きます。
むらなく染めるにはかなりの経験と技術が要される作業です。

● 蒸らし
再度蒸し箱で蒸します

● 水元
防染の役割の糊と不要な染料を水で洗い落とします

● 湯のし 
生地幅を整え、小じわを取っていきます

● 装飾を加える
生地の表面に金箔や銀箔を使って装飾をします。
友禅染の模様を引き立てる工程。
また刺繍を施し、金糸や銀糸をはじめ絹の色糸で、流れるよう美しい模様を完成させていきます。
仕上げまで約15~20程度の工程があり、京都ではこれを専業分業化しています。
型友禅の技法・工程
● 図案・型の作成
図案を描き、型を彫ります。
1色に1枚の型が必要になります。
そのため使用する色の数だけ型を作る必要があります。

● 地張り 
作業台となる木の一枚板に、白生地を糊で貼り付けます。
柄を合わせる際にずれが生じないように、真っ直ぐに貼る技術が大切になります。

● 型置き 
型を生地の上に置き、色糊を乗せ染色していきます。
色や柄が多い場合は、型置きの作業を数百回繰り返します。

● 糊伏せ 
型で染色を施した箇所へ糊をのせます。
この糊は防染の役割のためです。

● 引き染め 
糊伏せされていない部分に刷毛で地色を染めていきます。
何色ものぼかしを入れる場合も。

● 蒸し 
高温の蒸気を当て、染められた色を生地へ定着させる作業。
色をしっかり定着させるためには、その日の気温や湿度に合わせ、蒸気を当てる時間や温度などの調節が必要で、職人の経験が試される作業の一つ。

● 水元 
落とされた染料などが生地へ再度付着しないよう、多量の水を使用します。

● 仕上げ加工 
柄に合わせた金加工や刺繍を施します。
染めムラなども補正し全体を整えていきます。
大量生産が可能と言われる型友禅でも、地張り~完成まで数か月の時間がかかる場合もあります。
図案を考えるところから含めると、さらに長い時間がかかることが分かります。

5.京友禅の特徴とその魅力とは?

世界中で愛される京友禅。
その魅力はどこにあるのでしょうか。
詳しく解説していきます。
世界に誇る豪華絢爛さ
まず京友禅の特徴は、その豪華絢爛さです。
多色使いで非常に色鮮やか。
隣り合う色が混ざらないよう、糸目糊で防染して模様を描き染めていく技法があるからこその鮮やかさと美しさです。
絵柄も写実的な加賀友禅と異なり、花鳥風月をより優美にデザインし、絵画的な美しさが特徴です。
色とりどりの染めに更に金糸で刺繍を加えるので、主に振袖や留袖、訪問着などハレの礼装に仕立てられます。
グラデーションの美しさ
京友禅は、模様の中心が濃く、外に向かって淡くぼかしていくという技法が特徴的。
そのグラデーションにより、より優美で華やかな印象になるのです。
一方同じ宮崎友禅斎が確立したとされる加賀友禅は、外側を濃く、内側に向かうにつれて淡くなる技法。
同じ「友禅」というくくりですが、グラデーションの濃淡の向きが正反対であるのが面白いところです。

伝統を受け継ぐ・守るということ 「ひとつひとつの色をつくる 、京友禅染匠がみる景色」 vol.1

「藤井寛のきもの」でも広く知られる京友禅染匠・富宏染工。その工房を今年社長として継がれる予定の藤井友子さんは、伝統を受け継ぎ守りながらも、京友禅の可能性を広げる新しい取り組みを積極的に行っておられます。今回より全5回、呉服の本場・京都室町より見える景色と未来への想いをお聞かせいただきます。

まとめ

京都の伝統工芸品の一つで、かっては鴨川の流れにさらして着物を仕上げる「友禅流し」が京都の風景として親しまれていました。
京友禅の特徴として、豪華な図案柄や模様柄が多く、かって貴族や公家が住んでいた京都らしい優雅な着物ともいえます。
その豪華さの裏には数多くの職人の受け継がれてきた繊細で高度な技があるからこそ。
高価ではありますが、1点ものである手描き友禅の魅力は何物にも代えがたく日本が誇る職人技の結晶です。
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