昔の浮世絵などには、美しい女性が髷（まげ）に簪（かんざし）や櫛（くし）、笄（こうがい）といったたくさんの髪飾りをしているのが見て取れます。

櫛は本来は髪を梳くものですし、笄は刀装具だったものが、いつのまにか女性の髷を美しく飾るヘアアクセサリーになりました。

鼈甲（べっこう）や象牙、漆塗りや金工など希少な素材を用いて、細工などに工夫を凝らした髪飾りは、いまも昔もおしゃれな女性の憧れです。

パーティやカジュアルなおでかけはともかく、式典や弔事などの改まった場で髪飾りを着けてよいのかどうかは迷うところ。

黒留袖や色留袖、重厚な訪問着などをまとうシーンでは、華やかな場にふさわしくヘアスタイルもボリュームのある場合が多いもの。髪飾りもクラシカルで、大ぶりの扇形の簪などが代表的です。

素材は蒔絵や螺鈿、パールなどがあしらわれたものがよいでしょう。

柄も宝尽くしや松竹梅などおめでたいものがおすすめ。着物の模様やテイストとリンクさせたものを選ぶのも◎。価格の目安として鼈甲は10万円〜、漆芸のものは3、4万円〜。樹脂製なら1万円以下で買えるものもあります。

盛装としての訪問着や付け下げを着るパーティシーンでは、華やぎがありながら洗練された趣があるものを選ぶとよいでしょう。

おめでたい、改まった式典などへは、江戸小紋、上品な訪問着や付け下げを着用することが多いでしょう。

髪飾りも鼈甲や漆などが重厚さが感じられておすすめですが、どちらかといえば豪華なものというより、上品さを重視して選ぶのがベター。あくまでも子どもが主役ということを意識しましょう。

ひと言で食事会や観劇といっても、レストランや劇場などによって付け下げ、小紋、織物などさまざま。概ねさりげなく小ぶりなものを選ぶと間違いありません。

最近はモード感覚で個性的な振袖や髪形を成人式に選ぶ人も多いので、ブルーやシックな色めもトレンド入りしています。

Uピン系の小さな髪飾りを散りばめるように配するのも最近の流行だとか。

あまりフォーマル感が漂うものはふさわしくありませんので、玉簪やUピンなど、概ね小ぶりのものを髪に添える感覚で。

文章／田中晃