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着たいから、はじめます! 『梅が香』水野小巻先生に聞く 「きもの好きの茶道はじめ」vol.1

着たいから、はじめます! 『梅が香』水野小巻先生に聞く 「きもの好きの茶道はじめ」vol.1

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「きものを着たいから茶道を始めたい!でも……そんな気持ちで始めていいの?」という声にお応えした連載がスタート。『梅が香 裏千家お茶の教室』の水野小巻先生に、お茶のお稽古にまつわるあれこれをお聞きします!

2021.04.06

インタビュー

香りを”聞く”ー 御家流香道講師 堀井暁蓉さん

きものを着たいからお茶を習う。それってあり?なし?

炉の薄茶点前

着る機会を得るのが難しいというお声も耳にする、きもの。

「せっかく着付けを習ったのに、冠婚葬祭以外に着ていく場所がない」
「きものを普段着にするにはまだハードルが高くて……」

などなど。

なかには、きものを着る機会をつくるために和のお稽古を始める方も。特に人気なのが“茶道”。

たしかに普段のお稽古からお茶会まで、きものを着る機会はいっぱいありそうですが……ルールや決まりごとが多いと聞くお茶の世界に一歩踏み出すのは勇気がいるものです。

薄茶

そんな方々に贈るのが、新連載「きもの好きの茶道はじめ」です。

本連載では、実際のお稽古の様子を写真を中心にお伝えするとともに、

茶席では訪問着か色無地しか着ちゃいけないの?
ネイルやアクセサリーはやっぱり外さなきゃだめ?

などの素朴な疑問を解消していきたいと思います!

質問にお答えくださるのは、梅が香 裏千家お茶の教室』を主宰する水野小巻(宗巻)先生。

茶道裏千家准教授・水野小巻先生

茶道裏千家準教授・水野小巻先生

小巻先生は茶道裏千家準教授としての許状をお持ちで、神楽坂と四谷三丁目、そしてご自宅にて「ゆるりと愉しく」をモットーとしたお茶の教室を開催されています。

(向かって左から)小巻先生、生徒のSさんとNさん

(向かって左から)小巻先生、生徒のSさんとNさん

今回は、四谷三丁目のお稽古に密着。

きもの好きが高じて茶道を習い始めたというふたりの生徒さんにもご参加いただき、普段の様子を拝見させていただきました。

まずは、きもの愛好家でもいらっしゃる小巻先生の装いをご紹介。

小巻先生の装い

まだ4月にもかかわららず、気温が25度を超えた撮影日当日。小巻先生は例年よりも早めに単衣の小紋をお召しになっていました。

柔らかな淡黄色を基調にした地に唐花模様が織り出された上品な小紋は、京都きもの市場の銀座店でご購入いただいたもの。色無地感覚で着られる使い勝手の良さもありながら、ところどころに散りばめられた七宝柄のちょっとした水色がアクセントになっています。

パッと目を引く青楓の名古屋帯

染め疋田の青楓がが目を引く帯はお色を指定して誂えたもの。もともとは赤もみじだった柄部分を、色見本を見ながら理想的な色に変えて染めてもらったのだそう。

爽やかな若葉色の青楓は細く金彩で縁取られ、茶席のお道具組みに差し障りのない一歩控えた印象。とても透明感のある帯に仕上がっています。

紫と白のグラデーションが美しい帯締めは『有職組紐 道明』。全体的に初夏をイメージしたスタイリングですが、前柄は無地場の多い面を出して巻いてあります。

笑顔が素敵な小巻先生

笑顔が素敵な小巻先生

そんな細部にまで気を配られた着こなし上級者の小巻先生に早速、茶席での装いについて伺ってみましょう!

茶席の装いについて「教えて!小巻先生」【Q&A】

Q1 お茶のお稽古やお茶席での基本的な装いのマナーを教えてください!

「お茶会」と「お稽古」ではふさわしい装いが違ってきますが、その前にまず、共通して気をつけていただきたいことがあります。

・帯留めや髪飾りなどのアクセサリーは控える
・香水など、香りの強いものは控える

そこには理由があり、帯留めやアクセサリーなどはお道具を傷つける可能性があるから、また、香りの強いものは、お茶の香りや味わいの妨げになりやすいからです。

小巻先生のお点前

その上で「お茶会」では、趣旨にふさわしい装いを心がけるのがよろしいと思います。

「初釜(はつがま:1月)」や「炉開き(ろびらき:11月)」など、格が高くおめでたいお茶会の時には、付下げや訪問着など華やかな装いで。

「大寄せ(おおよせ:多くの客を招いて行う茶会)」や「野点(のだて:屋外でのお茶会)」などカジュアルなお茶会の時には、小紋や紬などでもよろしいと思います。

お茶席では招かれた側もその場に合った振る舞いが求められる

一方「お稽古」の場合は、お教室の先生のお考えによると思います。

『梅が香』の場合、お稽古での装いについて決まりは設けておりません。「みなさんのお好きな装いでどうぞ」と生徒さんにはお伝えしています。

手前の小さな囲炉裏が11月〜4月まで使われる炉

お洋服でもそうですが、TPOに合った装いをすることが大事だと思います。

2022.11.13

まなぶ

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Q2 なぜ「茶席では紬の着物はNG」とされているのでしょうか。

生徒さんに指導される小巻先生

わたしは必ずしもお茶席では紬がNGだとは思いません。先ほどお話ししましたように、お茶会の趣旨によってはお召しになってもよろしいと思います

ただ、紬や上布などいわゆる"かたもの"といわれるお着物は普段着というくくりですので、フォーマルの場としてのお茶会にはふさわしくないということ、また付下げや色無地などの"やわらかもの"に比べ、はだけやすかったり裾捌き(すそさばき)の音が気になりがちです。

大島が顕著な例ですが、少しの動きでもシャカシャカとした音がしますよね。

茶碗を畳に置く音も中の様子をうかがい知るヒントになる

少しの音も、水屋から茶席の様子をうかがい知るヒントになる

小気味よい音は大島の良さでもあるのですが、お茶会は襖を閉め切った状態で行うこともあり、水屋から席中の様子をどのように知るかというと……音なんですね

例えば、畳を歩く音や柄杓を置いた時の音、お釜のお湯の音など、そうした小さな音に耳をすませて席中の進行を感じとるのです。

ですので、静寂を好むお茶席では、”かたもの”の音は、気になる音にもなりやすいのだと思います。

『梅が香』ではお稽古の時には、紬でも全く問題ありませんが、このような意味があることを知っておくことは大事だと思います。

小巻先生の教室ではお稽古なら紬もOK

紬きもの(南風原花織)でお稽古にお越しだったNさん

Q3 ネイルを外したくないのですが……

最近はお茶の世界でもネイルをしている方が増えてきましたが、ネイルを禁止されているお教室はまだまだ多いと思います。

ただ茶道人口が減ってきている中で、この伝統文化を後世に残していくためにはある程度、時代に即したルールに変えていく必要もあるのではないでしょうか。

初夏にふさわしいレモンのネイルで

初夏にふさわしいレモンのネイルで

爪に色がついていることでお稽古に支障があるとは考えにくいので、私は、あまりにも華美なネイルでなければ、ネイルがダメだとは思いません。例えば、お稽古に参加してくださっているSさんは本日レモンのネイルをされていますが、そういう風に季節感も取り入れることもできますしね。

ただそれも先生のお考え次第なので、最初にきちんとお伺いなさるのがよろしいと思います。

Q4 先生ご自身が素敵だなと思われる”茶席の装い”について教えてください!

やはり季節感だったり、お茶会の場合は毎回テーマが設けられているので、少しでもそれになぞらえたものをお召しになっている方は素敵だなと思います。

取材当日のお道具組は「端午の節句」がテーマ

ただお茶会のテーマは、行ってみないとわからないということが多いです。

お軸やお棗など、どんなお道具組になさるのかはお客様へのサプライズの意味も込められているので、行ってみたらバッチリ趣向が被ってしまったということもなくはありません。

お茶の世界では”お道具が主役”とも言われているので、お道具の邪魔をしない、色無地や江戸小紋などのお着物を着られる方が多いのでしょうね。

この日の茶花は白山吹、丁子草、立浪、花筏、都忘れ

そうするとまるで制服のようにみんなが同じ装いになってしまって、それはそれで趣がないように私は思えてしまいます。

趣向が被った時にそれを失礼だなと思う方もいらっしゃれば、むしろ喜んでくださる方もいる。本当に人の考えはそれぞれなので……そこは難しいところですね。

Q5 きものを着たいから。そんな理由でお茶を始めてもいいのでしょうか?

もちろん!きっかけに関しては本当に何でもいいと思っています。

今日の装いについて語る先生と生徒さん方

今回参加してくださった生徒さんおふたりもそうですが、「お茶を習いたい」というよりも「きものを着たい」という気持ちで始められる方がたくさんいらっしゃいます。

みなさんがきもの姿できてくださることで教室も華やかになりますし、「それどこで買ったの?」「素敵ね」とお互いの装いについて語り合うのも、私にとってはひとつの大きな楽しみです。

本日のお稽古

最後に、本日のお稽古のようすをご紹介いたします。

『穏の座』のお座敷

茶室に足を踏み入れると、そこは外とは全く別の世界。静寂が広がり、自然と背中がピシッとなるような気がします。

この日の趣向は、毎年5月5日に訪れる「端午の節句」(子どもの日)。

現代では男女関係なく、子どもの健やかな成長や健康を祝う日なので、「無事」というふた文字が書かれた掛軸が飾られています。

子どもの健やかな成長を願う「無事」の掛軸

「無事にお子様方が成長していただけるように。また、今回の取材が無事に終わりますように。無事という言葉はどんな場合にも使えますし、今、自分たちが無事でいるということにも感謝ですね」

小巻先生から、素敵な言葉をいただきました。

横貝の香合

床の間には、お香を入れる器「香合(こうごう)」が。

通常お茶を点てる前には炉や風炉に炭をつぐ「炭手前(すみでまえ)」が行われ、その際に亭主が炭とともに香をつぐのですが、このように香合が置かれている場合は「炭手前を省略します」という意味が込められているのです。

炉の季節は陶磁器や焼物の香合が、風炉の季節には漆器や木地の香合が使われます。

この日は横貝の形に成型された陶磁器の香合が使われていました。

稽古の様子

今回は、炉の更好棚にて濃茶と薄茶点前のお稽古。亭主がお茶を点てる間、客は先に主菓子をいただきます。

今回の主菓子は、京都の西陣に本店を構える老舗和菓子屋『鶴屋吉信』の「みぎわ姫」。

季節に合わせた主菓子

やわらかい外郎(ういろう)生地で白あんをくるんだ、とても上品な甘さの主菓子です。

表面には、子どもの日(端午の節句/菖蒲の節句)を象徴する菖蒲の花が。紫と黄色の花びらが可憐で、見ているだけでも心が癒されます。

濃茶更好棚点前を披露してくださるのは、4年前からこの教室に通っているSさん。

きもの歴は5年で、娘さんの成人式の振袖選びの際に「お母さまもいかがですか」と声をかけられ、ご自身もきものを誂えたのがきっかけでした。

着物歴5年、茶道歴3年のSさん
帯には紫とオレンジで菊いちご模様が織り出されている

この日は小巻先生やNさんがお召しになっている淡いきものとお色が被らないようにとご配慮いただき、濃い紫色の飛び柄の小紋で。

そこに、京都きもの市場のネットショップで求められた、人間国宝・喜多川俵二氏が手がける紹巴織(しょうはおり)の名古屋帯を合わせていらっしゃいます。

紹巴織は千利休の弟子である、茶人の里村紹巴が好んだことからその名前がつけられました。これぞ茶席適品!ともいうべきお手本のような帯セレクトです。

ヘアスタイルもご自身でアレンジされているSさん。京都きもの市場の銀座店で行われた今井茜先生のヘアレクチャーを受けてくださったそうです。

茶碗は黒楽茶碗

よみもの

今井茜さんのコラム一覧

教室に通われるようになったきっかけは、SNS。

きものを着る機会を作るためにお茶を始めたいと思い、教室を探していたところ『梅が香』のインスタグラムにたどり着き、「ネイルOK」という文言に惹かれて試しに体験教室に足を運ばれたそう。

「こんな不純な動機では続かないかな」という不安もありつつ飛び込んだ世界でしたが、今の今まで楽しく続けられているとか。

Sさんは手先が器用で、小巻先生から「最初からお点前がお上手だった」とお墨付きを受けるほど。

Sさんが刺繍した小物入れ

こちらの数寄屋袋の刺繍は、なんとSさんが施されたもの。茶道具の素朴な表情がぐっとくる仕上がりで、売り物といわれても気づかないほどの完成度です。

抹茶がまったりとするまで練っていく

お点前もさらさらとすすめていかれるSさん。濃茶の場合はお茶を「練る(ねる)」といわれ、薄茶の3倍ほどの量のお抹茶を少ないお湯で、照りが出るまでよく練っていきます。

使用されているお抹茶は、『shuhari_kyoto』の「さみどり」。京都和束町産100%のシングルオリジンで、こくがあり、甘味と苦味のバランスがすばらしい高級抹茶です。なんとこの4月より『shuhari_kyoto』は『梅が香』のスポンサーとなり、小巻先生がそのアンバサダーをつとめていらっしゃるそうですよ。

この日のお茶入れは肩衝、仕覆の荒磯緞子

この日のお茶入れは肩衝(かたつき)、お仕覆(しふく)には趣向にも沿った荒磯緞子が

このお抹茶、主菓子の銘柄を含め、ご準備くださったお道具についてお客さまから問いかけるのが決まり。

招いた方へのおもてなしの心を伝える茶杓の銘も、ここで明かされます。

この日は初夏の爽やかな風が吹く季節にふさわしい『薫風』というご銘を、Sさんが付けられました。

稽古終わりは「ありがとうございました」とお互い挨拶

最後にお互い礼をしたら、稽古は終了。

茶道の稽古は厳しいイメージがありますが、ここには、最初から最後まで終始穏やかな時間が流れていました。

いつも安心感のある笑顔で生徒さんと接せられている小巻先生

稽古が終わった後も、Sさんに「よくおできになりましたね」と笑顔で声をかけていた小巻先生。

Sさんをはじめ、生徒さんのほとんどが長く通われている理由は……小巻先生が醸し出すこんな優しい空気感にもあるのかもしれませんね。

最後にSさんに、お茶を習って良かったことを伺いました。

「私は月2で教室に通っていますが、お稽古前日のきものの準備から前回の復習を含め、良い緊張感を味わわせていただいています。

また『梅が香』は変なしがらみのようなものが一切なく、本当に良い仲間に恵まれました。お若い方も多く、日々刺激を受けています」

先生が撮影中のSさん

先生がSさんを撮影中

実は次回は……

まさにSさんがおっしゃったような教室での人間関係やお稽古代のことなど、実はなかなか聞けない質問を小巻先生に投げかけます。お茶を習いたいと思われている方は必見です!

恒例!”お太鼓コレクション”撮影風景

稽古が始まる前の写真撮影タイム

こちらは、お稽古の際にいつも行われているという”お太鼓コレクション”の撮影風景。

きもの談義に花を咲かせながら、小巻先生が生徒さんの、生徒さんが小巻先生のきもの姿をスマートフォンで撮影していきます。

ちなみに撮影したものは毎回、小巻先生が更新している『梅が香』のインスタグラムに投稿されていますよ!

先生自ら生徒さんの装いをスマホで撮影されています

先生がおっしゃるように、みなさんの装いにはそれぞれ個性があって、とっても華やか。

写真を見るだけでも普段の様子が伝わってくるので、ぜひのぞいてみてください!

撮影/TADEAI 久野藍

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