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人生の節目は、家族で着物姿に 「親子できもの日和」vol.2

人生の節目は、家族で着物姿に 「親子できもの日和」vol.2

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親子できものを着てお出かけする特別なひとときに密着する、連載第2弾。今回は、着物好きのお母さまとお嬢さまご姉妹が、日比谷に集います。着物とともに刻まれてきた家族の歴史を紐解いてまいりましょう。

2022.09.08

よみもの

はじめての誂え着物で銀座ランチ 「親子できもの日和」vol.1

母と姉妹が着物で歩く日比谷

お宮参りから始まり、七五三、卒業式、成人式、結婚式など、それぞれのご家庭にとって大切な“ハレ”の日を彩ってきた着物。親子で着物をまとい、ここまできた道のりを思う。それは何にも代えがたい瞬間です。

一方で、日常着としての着物を親子で楽しまれている方も。

「親子できもの日和」は、着物で一緒にお出かけをする親子の何気ない“ケ”の日、されど特別なひとときも大切にしたいという思いからスタートした企画です。

第2弾となる今回ご登場いただきますのは、着物姿でよく日比谷エリアでの休日を過ごされるというご家族さま。

(左)次女Yさん (中)長女Sさん(右)お母さまNさん

次女Yさん(左)とお母さまのNさん(右)が、臨月間近の長女Sさん(中)に寄り添って

お母さまのNさんと長女のSさんは、昨年春に行いました「きものと」主催の「アフタヌーンティーの会」にも揃ってご参加くださいました!

4月のアフタヌーンティの際の着姿

2022年4月 鳩山会館 撮影:TADEAI

今回はSさんがご出産間近とのことで、次女のYさんが着物姿でお越しくださいました。

(左)次女のYさん (右)お母さまのNさん

(左)次女Yさん (右)お母さまNさん

まるでご友人同士のように仲睦まじいお三方。

モダンとクラシックが融合する街で、その微笑ましい光景を映しながら、母から子へと受け継がれてきた着物スピリットに迫っていきます。

ハレの日もケの日も、着物とともに

明治時代に政府や貴族の社交場として『鹿鳴館』が建てられたことから、外交の拠点として発展を遂げてきた東京・日比谷。

木々の葉が色づく日比谷の街並み

木々の葉が色づく日比谷の街並み

ビジネス街でありながら、日比谷公園を中心に緑が多く、また帝国劇場やシアタークリエなどの劇場や映画館、音楽施設も多数立ち並ぶことから休日にはたくさんの人がこの街に集います。

そんな日比谷の顔として、国内外からの来客を招いてきたのが『帝国ホテル 東京』です。

毎年11月中旬頃からメインロビーはクリスマスツリーと華やかな装飾で彩られ、宿泊者以外の方も多く訪れます。

『帝国ホテル 東京』の冬の風物詩となっているロビー装花

2020年に130周年を迎えた『帝国ホテル 東京』

特に、赤い薔薇のプリザーブドフラワーを約1000輪使用したドーム型ロビー装花は毎冬大好評! この日も、たくさんの方々がこの装花の前で思い思いに撮影されていました。

ロビー装花の前で記念撮影

まずはこちらで撮影に臨まれるおふたり。シック&ゴージャスな空間に、上品にドレスアップされた着物姿がよく映えます。

こうしておしゃれをして帝国ホテルに来ると、思い出すのは“あの日”のこと。

ここは、ご家族が新たな人生の一歩を踏み出した大切な場所… 長女Sさんが結婚式を挙げられたホテルなのです。

来年誕生する新たな家族

来年誕生する新たな家族

Sさんは現在、第一子となる男の子をご妊娠中。そのため今回はお洋服でのお出かけですが、 Sさんもかなりの着物愛好家で結婚式当日は洋装と和装の両方にお着替えされたそう。

「友人を招待するときに“良かったら着物でお越しください”と声をかけたら、みんな着物できてくれて。しかも、打ち合わせをしたわけじゃないのに、見事に着物の色がバラバラだったんです!色とりどりで会場の雰囲気も華やかになり、とってもうれしかったですね」

(左)次女のYさん (中)長女のSさん(右)お母さまのNさん

(左)次女Yさん (中)長女Sさん(右)お母さまNさん

姉妹揃って着物好きになったのは、やはりお母さまの影響。

特別なイベントから休日のお出かけまで、多くの時間を着物とともに家族で過ごされるようになったのはなぜなのでしょう。

早速、その理由を伺ってまいります。

「好きなものが、自分に似合うもの」

「家族写真を毎年撮影しているのですが、なるべくみんなで着物を着るようにしています。秋くらいに撮影して、出来上がった写真を年賀状にするのが、この子たちが小さい頃からの恒例行事なんです。すっかり撮影慣れして写真館の方からは“すぐに撮り終わっちゃうね”なんて言われるんですよ(笑)」

と、お母さまのNさん。

日比谷公園前の横断歩道にて

日比谷公園前の横断歩道にて

着物とともに積み重ねてきた家族の歴史、その始まりはNさんのお母さま、つまりはご姉妹のお祖母さまの代へと遡ります。

着物が大好きで、Nさんがお嫁に行くときには桐箪笥いっぱいに着物を詰めて送り出してくれたのだそうです。

家族写真はいつも銀座の『東條會館』で撮影

家族写真はいつも銀座の『東條會館』で撮影

とはいえ、なかなか着物を着る機会がなくて、そのまま箪笥の肥やしにしてしまった……という方が多いなか、Nさんがそうならなかったのには訳があります。

ご結婚されたご主人もまた、日本舞踊の講師であられるお母さまの元で育ち、幼い頃から着物に慣れ親しんでいたからです。

「主人も私もよく着物を着ていましたし、娘たちが大きくなってからは私が若い時の着物をそのまま着せてみんなで写真を撮るようになったんです。今年は主人が絽の着物を新調したので、せっかくならと全員夏物で揃えました」

お嬢さま方は、お父さまの着物姿をどう見ていらっしゃるのでしょうか。

「やっぱり着物を着ていると、普段よりもキリッとして見えるのでかっこいいなって思いますね」と次女のYさん。

次女Yさんの着物姿

そんな風に素直に褒められるのはご家族の仲が良い証拠。

それもこれも、Nさんが着物を媒介にしてお嬢さま方としっかりコミュニケーションを取られてきたからなのでしょう。

それでは、お嬢さま方も憧れるNさんの装いをご紹介します。

お母様Nさんの帯姿

ふんわりと淡いお色の無地紬は10年前に気に入って求められたもの。紅花を染料としたナチュラルムードあふれる薄桜色に一目惚れされたのだそう。

色艶のあるNさんのお肌にすっとなじみ、よりいっそう柔らかな印象を与えてくれます。

リバーシブルの帯締めは今日はシックに紫色。華やかにしたい時は裏の朱色で

リバーシブルの帯締めは、今日は少し抑えた紫色×朱。華やかにしたい時は裏の朱一色で

こちらの染めの名古屋帯は、江戸友禅の重鎮・熊谷好博子氏の愛弟子である木下冬彦さんの作品。現代感覚のあるライトグリーンの地色に、師が得意とした糸目の作風で精緻な古典柄を染め入れた小粋な帯合わせには、Nさんのファッションセンスが光ります。

「とにかくシンプルな着物に柄物の帯を合わせるのが好き。この無地紬は出番が多く、色々な柄の帯を締めてきました。今日のようにお柄が素敵なものをつけると、それだけで一日心がゆったりします」

親子をどこまでも連れて行ってくれる草履

そもそもNさんの生活に着物が切っても切り離せないものとなったのは、外反母趾でヒールが履けなくなったのがきっかけでした。どれだけ歩いても足が痛くならない草履は、外出の楽しみを思い出させてくれたのです。

それからはどこに行くのも着物で。

だけど、「一人だと寂しいから」とお嬢さま方と一緒に着物で出かける機会が増えたのだとか。

コーディネートで気をつけているポイントは特になく、大事にしていることは一つだけ。

「好きなものが、自分に似合うもの」

好きなものをより楽しむための学び

Yさんがお召しの着物は、お母さまの色無地を深みのある紺色に染め直したもの。

スーツ感覚でありながら、唐花文様を織り上げた華やかで汎用性の高い一着に生まれ変わりました。

濃紺がYさんの透明感を際立てる

濃紺がYさんの透明感を際立てる

ピンクの長襦袢がちらり。ピンク×ネイビーは相性の良い配色

ピンクの長襦袢がちらり。ピンク×ネイビーは相性の良い配色

Yさんはもともと洋服も濃い色がお好みで、成人式にも人気のあるピンクや赤ではなく、黒の振袖一択!

自分の“好き”を大切にする―

そんなNさんの着物に対する精神は、しっかりとお嬢さま方たちにも受け継がれています。

宝尽くしの塩瀬帯もまた、ご自身の好みと使い勝手の良さを両方考慮してYさんご自身で求められたお気に入りの作品。シーンを選ばないもの選び出す、その目利きの鋭さはやはりお母さま譲りです。

撮影中もおしゃべりが止まらない仲の良さ

そんなYさんは自分で着物を着られるように、現在は着付け教室に通われています。まだ通い始めてわずかですが、大まかな手順は一通り覚えたのだそう。

「着付け教室に通っているのは、自分のだけじゃなくて人の着付けもしてあげられたらなと思ったから。いつか母の分も着付けてあげたいです」

お母さま想いのあたたかな言葉に「なんていい子なんでしょう(笑)」とNさん。

これまでお二人とも反抗期という反抗期がなかったというのだから驚きです。

クラシカルな洋装もとてもお似合いのSさん

クラシカルな洋装もとてもお似合いのSさん

長女のSさんも、着物を着ることに対して反発を覚えることは一度もなかったといいます。大学時代には、国際コミュニケーション学部に所属。十二単を着る体験もあり、留学生とともに日本の文化や、和装への理解をさらに深めました。

「十二単って基本的に紐一本で着付けるんです。その紐が何枚も重ねた衣の重みを受け止めてくれるから、着てみたら意外と肩は楽で昔の人の知恵はすごいなと思いました。そんな風に実際に体験してみて学べることがたくさんある。

着物に関しても今は一人で着ることはできないんですが、少しずつ勉強して好きなものをより上手に着て楽しめるようなれたらいいなと思っています」

甥っ子とお孫さんの誕生を待ちわびて

新たな家族の誕生を待ちわびて

そんなSさんは淡い色の着物がお好み。黄色で可愛らしいお柄の訪問着をお持ちのようで、これからお子さんが生まれ、お宮参りや七五三などで着られる日を今からとても楽しみにしていらっしゃいます。

親から子へ、子から子へ。

愛情と一緒に着物の文化が繋がれていくさまを見せてくださったお三方。その幸せに満ち足りた光景は改めて着物の素晴らしさを実感させてくれました。

終始和やかなムードで撮影は終了

お母さまのNさん、そしてSさん・Yさんご姉妹ありがとうございました!これからもみなさまの豊かな着物ライフが続いていきますように。

撮影/水曜寫眞館

2022.02.28

まなぶ

お宮参りの着物の選び方とは? 赤ちゃんと、ご両親それぞれの装いも紹介!

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