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踊りの稽古が自分の根底にある 歌舞伎俳優 澤村國矢さんの愛用品

踊りの稽古が自分の根底にある 歌舞伎俳優 澤村國矢さんの愛用品

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インタビュー前編では、歌舞伎俳優となったきっかけや、「超歌舞伎」のこと。後編では、歌舞伎俳優としての着物にまつわるエピソードをうかがいました。締めとなるこの回では、思い入れのある品々を紹介していただきます。

2022.08.17

インタビュー

チャレンジングな役柄も次々と― 歌舞伎俳優 澤村國矢さん(前編)

2022.08.20

インタビュー

着ることで俳優としてのスイッチが入る 歌舞伎俳優 澤村國矢さん(後編)

師匠・澤村藤十郎から譲り受けた黒紋付

「この黒紋付は、僕が名題(なだい)昇進するときに旦那、澤村藤十郎から譲り受けたものです。旦那のお父様である8世 澤村宗十郎からのものだそうです。大事なものですね」

”澤村國矢””超歌舞伎””羽織”

「昨年の京都きもの市場さんの銀座店リニューアルパーティーのときもこの黒紋付で『助六』を踊らせてもらいました。

羽裏にも模様が入っているんですよね。
羽織の裏側はあまりみえないので、いまは無地が多いですが、昔の方は、見えないところにもお洒落にこだわる方が多かったんだなぁと、この羽織を身に着けるたびに思います。

「笹竜胆」は澤村藤十郎の定紋になります」

”澤村國矢””超歌舞伎””羽織”

2022.02.15

イベント

京都きもの市場 銀座店リニューアル記念パーティ 拓く【hiraku】 〜その先へ〜 in 明治記念館

世家真流の緑の扇子

”澤村國矢””超歌舞伎””扇子”

「これは12、13歳のとき、世家真(せやま)流に入って最初に使った扇子ですね。まだ本名の『吉川文康』と書いてあります。

入門した平成3年6月9日は、僕の誕生日。本当にたまたま、偶然でした。
お稽古ごとは、6歳の6月からはじめると上達するといわれています。6歳ではなかったけれど、6月ではあった(笑)。

旦那の澤村藤十郎は、歌舞伎役者の基礎は日本舞踊だ、と口酸っぱくおっしゃっていました。その言葉が僕の根底にあるので、踊りのお稽古というものはなによりも僕のなかで大きく、いまの自分を作っている。
礎になっているといっても過言ではありません」

”澤村國矢””日本舞踊””扇子”

「お稽古場の先輩方も、お扇子を直しながら使っていると聞いていたので、僕も直し直し使っていました。すぐに破けてしまうんですよ。
お扇子は、骨の部分を持つだけでなく、紙の部分を持つことも多いので、そのあたりが弱くなってくる。弱くなっているところで、パッと開くと、紙の部分がバリッと破れてしまうことがあるんです。

紙の部分、厚みが倍になっているでしょ。補強しているのもあるけれど、汗を吸ってしまったんでしょうね」

”澤村國矢””日本舞踊””扇子”

世家真流の紫の扇子

ご愛用の扇子

「入門するとまず緑の扇子をいただくのでですが、今年の5月に名執(なとり)になり、やっといただいたのが、この紫の扇子です。

いま、お稽古で実際に使っているものですね。まだ数回しか使ってないから、きれいです(笑)。

世家真流も宗家藤間流も扇子は京扇堂さんのものですね。
下に敷いた手ぬぐいは世家真流の踊り手ぬぐいです」

”澤村國矢””踊り手ぬぐい””手ぬぐい”

師匠からいただいた博多献上の帯

”澤村國矢””日本舞踊””扇子”

「銀鼠の献上は、うちの旦那が使っていた帯です。帯源の献上の帯。

帯源さんの献上はすごく締めやすいです。
幅も狭く、粋に締められるので気持ちがよくて、パリッとしますね。
役者って献上が多いんですよ。僕もすぐに献上に手が伸びます」

澤村國矢の手ぬぐい

”澤村國矢””歌舞伎””手ぬぐい”

「自分であつらえた手ぬぐいになります。2種類あって、左の波に千鳥が、名題披露したときにみなさんにお配りしたもの。

もうひとつが、2019年、南座での「超歌舞伎」に出演が決まり、新調したものになります。
「超歌舞伎」始まって以来の劇場でのひと月上演。しかも南座で、リミテッド公演まであるなんて…と心新たに、気合も込めて(笑)。

師匠である澤村藤十郎の定紋は「笹竜胆」ですが、替紋が「波に千鳥」なんです。なので、自分の手ぬぐいもそれに倣ったデザインにしました」

”澤村國矢””歌舞伎””小千谷縮”

「じつは、芝居のなかの持ち手ぬぐいっていうのは、自前なんですよ。衣裳さんではなくて、役者が用意するんです。

自分でみつけてくることもありますし、いただいた手ぬぐいのなかから、いい柄ゆきのものを選ぶこともあります。

そうそう、例えば、昨年の「超歌舞伎」では『都染戯場彩(みやこぞめかぶきのいろどり)』という踊りで鳶頭をつとめましたが、相手の芸者役の方は僕の手ぬぐいを持ってくれていました。

相手役の手ぬぐいを持つ、つまり好いた相手のものを身につける、ということですね。胸元に少しだ手ぬぐいの柄がみえることがあります。
そういったところも歌舞伎をご観劇の際に注目していただければ、面白いかもしれません」

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歌舞伎俳優ならでの必需品

「インタビュー後編でもお話しした「肉」と同じくらい、着物を着る男性にとって欠かせないと思うのはステテコですね」

”澤村國矢””歌舞伎””小千谷縮”

「最近は、汗をかいてもさらっとしているエアリズムのステテコを重宝しています。これが画期的なんですよ。

それまでは、テロッとしたポリエステルかレーヨンみたいなものが主流だったんですが、汗をかくと膝を曲げたときに、よくやぶけてしまっていたんです。どうしても肌に引っ付いてしまうのでね。

そうなると、みんなやぶけた部分に合わせて下のほうを切って、丈を詰めていくんです。やぶけるたびに切っていくものだから、だんだん短くなっていって、もうそれステテコの意味ないでしょ、というところまでいくわけ(笑)。

なんとかならないかな、と思っていたら、某カジュアル衣料品ブランドからエアリズムのものが発売された。
サラサラしているし、触れても引っかからないし、延びるし、最高だと」

”澤村國矢””超歌舞伎””新橋演舞場”

「けれども、もう白のカラーが売ってないんです。黒とかネイビーしかないんですよ。
僕たち、白じゃないと具合が悪いんで、なんとか白を再販していただけないかな、と思っています(笑)。

汗がまとわりつかないだけで、こんなに下半身が過ごしやすく、動きやすいとは、と感動したマストアイテムですので」

”澤村國矢””超歌舞伎””新橋演舞場”

聞き手/九龍ジョー
構成/渋谷チカ
撮影/グレート・ザ・歌舞伎町
撮影協力/新橋演舞場

公演情報

”超歌舞伎2022””中村獅童””初音ミク”

博多座、御園座、新橋演舞場と続き、9月8日からは京都・南座にて、澤村國矢さんが出演される「超歌舞伎2022 Powered by NTT」が上演されます。

今回上演される演目『永遠花誉功(とわのはなほまれのいさおし)』は、古代王朝を題材にした歌舞伎の名作『妹尾山婦女庭訓』の世界をもとにした作品。リミテッドバージョンでは、國矢さんが主役の金輪五郎今国を演じます。伝統芸能の歌舞伎とNTTの研究所が開発した最新テクノロジーとの融合、舞台と客席が一体化する「超歌舞伎」ならではの劇場体験、この機会にぜひお楽しみを。

チケット・公演詳細

南座 ●9月8日(木)〜9月25日(日)
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kyoto/play/753

2021.01.05

インタビュー

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